時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
まだ何も終わっちゃいない
既にニュースで伝えられたように、経産省前の脱原発テントが強制執行により撤去された。国家権力によるテロリズムの嵐は、いやましに強まっている。為政者にとっては、抗議がなければ原発問題は存在しない。昔、いじめを受けていたときに悲鳴を上げたら、教師から頭ごなしに怒られたことがある。つまり、被害者さえ黙っていれば、事件は存在しないとするのが、この国の一貫したならわしなのだ。
高江ではまた高齢者が警察に危害を加えられ、ジャーナリストが逮捕された。文句を言うな、黙っていろ。お前が騒ぐからみんなが迷惑する。お前さえ黙っていれば、何の問題も存在しない。社会の平穏は保たれる・・・・・・
くたばれ、そんな社会。

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仕事帰りにテント跡を視察にいったが、テントのあったスペースをまるごと覆うように、フェンスが建てられていた。悪意に満ちた挑発である。年配の人がフェンスに「1808日」の札を引っ掛け、撮影を行っていた。何も終わってなどいない。

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「六号室」と現代
アントン・チェーホフに「六号病室」という作品がある。舞台は精神病院で、主人公はその医師。あるとき彼は、ユニークな開明的主張を披瀝する青年患者に出会い、彼と対話を重ねていく。だが、そうするうちにやがて彼は周囲から奇妙な目で見られるようになり、最終的に「狂人」と看做され、自ら病棟に叩き込まれてしまう。この短編はかなり寓意的な作品であり、19世紀ロシア社会の状況を描いたものとして、古典的な名作となっている。
ところで、この主人公の置かれた状況に覚えは無いだろうか。精神病棟云々ということは抜きにしても、当たり前の事を話している筈が、いつの間にか異常者扱いされてしまっているということは珍しくない。具体的に言おう。「戦争反対」「憲法を守れ」という主張は普遍的に当然のものと、戦後長らく考えられてきた。だが、いまやこれらの主張は「偏向的」であり、犯罪に準ずるものとして扱われつつある。改憲に反対すれば連行され、平和を守ろうとすれば、職務質問を受ける。
ことは公権力との関係に限らない。政権に批判的な言動が奇矯とされ、周囲から気味悪がられることは珍しくはない。信頼していた人が、手のひらを返すようになる。運動を続けていく中で友人を失った人も多いと思う。
そうした中で、自分がどんなに正当な主張をし、輝いているつもりでも、社会の相当数からはまともな人間として見られてはいないんだぜ、という自覚も持ったほうがいい。その困難を自覚しなければ、「我々は伸びている、多くの人々が我々を支持している」と勘違いを続け、手痛いしっぺ返しを食らうだろう。
3・11以降、至る所でメッキが剥がれている。この社会はわたし達の知る日本社会では、既にない。

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所謂、「平成玉音放送」なるものについて
天皇明仁の「お言葉」とやらには何の感慨も無い。ただ、退位自体は良いことだと思うし、自然人である明仁の、素朴な人権・労働問題としてみても、その希望そのものは正当であると考える。
KKK(サンケイ)新聞などの右派メディアでは、「陛下のご退位のためには憲法改正が必要だ」というキャンペーンを張っている。いうまでもなく、日本国憲法には退位に関する規定は無い。それは皇室典範などの個別法に委ねられている。よってこれは、どさくさに紛れた悪質な便乗であるというしかない。そのうち「熱中症対策には憲法改正が必要だ」とか言い出しかねない。

運動圏の一部には、この「お言葉」を「陛下が改憲を狙う安倍政権の暴走に釘を刺した」ものとして歓迎する向きもある。だが、憲法を守るために「陛下の御威光」とやらに縋ろうとすることは、極めて危うい。これはだいぶ以前に山本太郎がやらかした「直訴事件」と何ら変わりないからである。あの一件に対する批判は過去に述べたし、山本をこれ以上叩くつもりは無い。わたしが言いたいのは、民主主義の埒外にある超権力の存在を、政治的主張の根拠にするのは危険である、ということである。仮に天皇(明仁とは限らない)が「改憲して元首になりたい」と望んだとしたらどうなるか。「陛下のご意思」とやらを尊重したいとするのであれば、これに抗する根拠がなくなってしまう。
明仁がリベラルであるかどうかなど、実際は誰にもわかりはしない。無論、先のKKK新聞の例を根拠に、「退位騒動は改憲のための陰謀だ」などとするのは妄想の域を出ない。だが、これを自らの有利な方向に利用しようとする右派勢力もまた、事実として存在するのである。
運動が天皇の言動に振り回されるようでは、あまりにも脆弱である。天皇の意思が何処にあろうと、わたしたちがやることには何の変わりもない筈である。

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投票の意味について
めまぐるしく動く事態に頭がついていけない。フランス、ドイツでは立て続けにテロリスムの嵐が荒れ狂い、アフガニスタンでは80人近くが死亡した。高江では機動隊がテロ活動に狂奔し、都知事選では日本会議のレイシストが優勢と伝えられる中、相模原でヘイトクライムと思しき虐殺事件が勃発した。
どこから手をつけていいかわからないが、差し当たりずっと引っ掛かっていた事を述べておく。
映画監督の森達也が「若者は棄権していい。へたに投票しないで」というインタビューを公表した。
これに対し、「棄権は抗議にならない」という、常套句がネットを飛び交ったのは周知のとおりだろう。実際それは正論であり、わたしも棄権には反対である。だが、森のインタビューをよくよく見ると、これは「棄権のすすめ」ではない。軽率な投票行動を戒めているのである。
「憲法を守りたいから自民党に投票する」、「戦争は嫌だから自民党に投票する」、「格差社会に反対だから自民党に投票する」等々、こんなスットンチンカンな意識で選挙に臨まれたら堪らない。冗談みたいな話だが、こうした立場を取る人は少なくないのである。
選挙の齎す結果は、決して軽いものではない。「お試しの選挙」と言いながら、取り返しのつかない結果を齎すことにも繋がりかねない。「そんな事を言ったらますます投票率が下がってしまう」という向きもあるだろう。だが、本当に数字を上げさえすればいいのか?本末転倒になっていないか?
そもそも、これは難しいことを要求しているのではない。「主権者としての自覚を持って投票してくれ」という当たり前のことを言っているのである。それさえ出来ないようなら、幾ら投票率を上げても碌な結果には繋がらない。「今回は勉強、次はちゃんと考えて投票しよう」と言っても、「次の機会」は来ないかも知れない。昨今の情勢を見ると、杞憂とばかりはいえないのである。

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拒絶する意思
フランスではトラックが80人以上を虐殺し、トルコではクーデタ事件が勃発し、この国では近代国家の諸原理の抹殺を謀る政党が大勝利した。
「改憲なんて知らなかった」などという言い訳は聞くつもりは無い。この政権が何を目論んでいるかは、調べようと思ったら幾らでも調べられた。よって、そんな弁明が通用すると思ったら大間違いである。人々は戦争を望んだ。人権放棄を望んだ。主権の放棄を望んだ。それがこの国の有権者の選択として示されたのである。
ではわたし達はそれに従うのか?答えは否である。問われているのは、わたし達がどうありたいのか、何を望むのか、である。「民意は自民党を選んだ?これに従え?知るかボケ!」と叩き返してやればよい。わたし達は、戦争を支持しろと言われたら拒絶するし、原発を受け入れろと言われたら拒絶するし、人権を捨てろと言われたら拒絶する。
体制側の三百代言に耳を貸す必要はない。彼等は公正の仮面を被って自分たちの正当性を喧伝するだろう。しかし、相手の土俵に乗る必要はない。権力のおためごかしにどこまで拒絶する意思を貫けるか、わたし達の力量が問われている。

ところで、安倍晋三は、フランスと「基本的価値観を共有」し、「強い連帯を表明」するのだそうだ。近代社会の価値観を蛇蝎のごとく忌み嫌ってきた男がこのようにのたまうこと自体笑止だろう。また、この男の言う「フランス」には、例えばバンリューに住む移民の人々は一切含まれていない筈である。都合のいい部分を切り取り、自らの好戦的な野心の実現に利用しようとする、浅ましい根性ばかりがそこに見て取れる。
事件を政治利用するな。犠牲者はお前に利用されることなど望んでいない。人間を舐めるな。


マリーヌ・ルペン率いるフロン・ナシォナル(国民戦線)への怒りを表明した一曲。

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プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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