時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
「黒い雨」騒動のこと
だいぶ以前、P.K.ディックのSF小説「ブラッドマネー博士」を読んだとき、原爆や核兵器の扱いのあまりの安易さに唖然とした事がある。爆心地にいて平気で生き延びているのは幾らなんでも変だろう。このあたり、日本とアメリカでは認識に大きな隔たりがあるようだ(ちなみにこの作品は嫌いではない)。
わが国で原爆を扱った小説作品としては、原民喜「夏の花」や井伏鱒二「黒い雨」、井上光晴「明日」「地の群れ」が筆頭に挙げられる。「黒い雨」は今村昌平が、「明日」は黒木和雄が映画化しているので、御覧になった方も多いだろう。おっと、熊井啓の「地の群れ」もあった。
これらの作品群の中でも「黒い雨」の知名度は一段と高い。だが、この作品には盗作説が持ち上がっていたのをご記憶の方も多いだろう。猪瀬直樹などもこの説を採用していた。
さらに「週刊金曜日」においては、死人に口なしと言わんばかりに、井伏に対するありったけの憎悪を込めた人格攻撃が盛んに行われていた。あたかも、著名人を叩く事によって自らを権威付けようとしているかのように思え、私などは嫌悪感を禁じえなかった。だが、その後、この雑誌は「黒い雨」問題については(私の知る限り)ぴたりと口を閉ざしてしまう。これだけ重要な問題が、納得のいく結論を見ずに有耶無耶に収束してしまう事には違和感が残った。
その後伝え聞くところによると、やはりこの記事には問題があったようだ。どうも、盗作説を唱えた歌人・豊田清史の主張のみを無批判に掲載したということらしい。「黒い雨」に下敷きがあるのは事実だが、それ以上の事柄については多くの疑義が提示されている。一体、これだけの糾弾キャンペーンを張る必要があったのだろうか。
そうなると、私がこの雑誌に対し、漠然と感じた印象が真実味を帯びてくる。「コイツハ馬鹿ナノダ、俺ハ偉イノダ」式の思考パターンに嵌まっていたということだろうか。実に情けない思いがした。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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