時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
カメラの向こうに映し出された「権力」の姿
「ビルマVJ 消された革命」(監督:アンダース・オステルガルド)を観る。民主化運動を世界に配信し続ける、ビルマのビデオジャーナリスト達の活動を描いたドキュメンタリーである。
作品の舞台となっているのは、2007年の大規模な民主化運動。ご記憶の方も多いだろう。長年の軍政にうんざりしたビルマの人々は、僧侶達を筆頭に、対話と協調を求める平和的なデモ行進を行っていく。そして遂には僅かな時間ながら軟禁中のアウン・サン・スー・チーとの面会も果たすのだが、軍はこれを徹底的に弾圧。逮捕、拷問、虐殺(或いは「失踪」)が相次ぎ、民主化運動は壊滅的な打撃をこうむる。ジャーナリストの長井健司氏が殺されたのもこの際であり、本編でも衝撃をもって受け止められている。
現在、ビルマは民主化に向かって徐々に移行しつつあると言われる。この動きがどうなっていくかは予断を許さないが、仮に民主化が完全に達成された後でも、この作品の価値はいささかも減じない。
さしあたり、「ビルマ」という固有名詞を外して考えてみよう。すると、政治権力とはどういうものであるか、そのむき出しの姿が見えてくる。肥大した権力は、無茶であろうと、狂気じみていようと、自らの利益のためには何でもゴリ押しするのである。そして、反対派に対しては圧倒的な軍事力でもってこれを押さえつけていく。ここでは力こそが正義であり、勝った者が正しい、のである。
昨今、強権的な独裁者タイプの政治家に対し、根拠不明な期待感が高まっているらしい。だが、政治権力に対する警戒感を失うべきではない。既に、どう考えても理不尽な条例が各地で制定されていることを想起してほしい。ひとつの元が狂えばこうなるのである。
ところで映画の序盤において、デモ隊に笑顔で参加し、拍手を送る人々の姿には親しみを感じた。勿論、かの国とわが国との政治状況はまるで異なるものであり、単純に比較することは意味をなさない。だが、よりよい社会を求める人々の切実な願いは、どの国でも共通のものと思えた。

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この記事に対するコメント
サンディニスタ
民衆隆起がなければ、民主化なんて無理と考えます。韓国の光州事件を再考してみようと思う次第です。  
あの国には「国家保安法」がまだ存在しておりますが、民主主義に対する理解度はもしかして、日本より上なのでは?  


戦後、特高警察が名称こそ変わっても、事実上、存置され今度は「戦犯狩り」として機能した事実に戦慄が……。  

クレヨンハウス・ブックレット007、購入、著者は東京新聞、こちら特報部、デスク、田原牧。思った以上の内容でした。あと数冊購入して、近所のお年寄りの方々に配る予定です。
【2012/05/26 02:59】 URL | ダムド #- [ 編集]


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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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