時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
人身の自由について(3)
続き。憲法記念日特集というコンセプトで再掲しているのだが、思った以上に長いな。


 (承前)
 第39条は2つの規定です。遡及処罰の禁止、「何人も、実行のときに適法であつた行為、または既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない」。そして、一事不再理、「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任は問はれない」。
「遡及処罰の禁止」というのは、事件が起こった後にできた法律(事後法)では裁かれないということです。違法でなかった行為に、あとから法を作って処罰することはできないという主旨です。しかし、これは被告人の権利をうたったものなので、被告人に有利な事後法を適用することはできます。実際にそういった例があります。
「一事不再理」の原則ですが、戦前、「治安維持法」という有名な悪法がありまして、予防拘禁という制度が定められていました。刑の執行を終えた人、さらに釈放された人にも、予防的措置として、もう一度、身体の拘束を可能にする制度です。現憲法は、こういうことは認めていません。しかし、被告人の権利として、もしも判決に重大な瑕疵があった場合には再審が認められています。
先日の奈良県の児童殺害事件に関連して、性犯罪者に対し、アメリカの「メーガン法」に類似した法律が検討されています。「メーガン法」とは、性犯罪の前科がある者は、社会に出てからも警察が監視していく制度で、思想犯保護観察法や、治安維持法の予防拘禁にロジックが似ていることに注意しなくてはなりません。メーガン法の趣旨は再犯の防止ですから、性犯罪者だけに適用されるとは限りません。実際、性犯罪者以外にも適用しようではないかという話も出ています。

 先ほど飛ばしましたが、第36条「公務員による拷問および残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」に触れます。
まず拷問ですが、これは明治憲法が制定される以前に廃止されていました。フランスのボアソナードという法学者が、日本に招かれて教鞭をとっていたときに、算盤責めという拷問の現場を目撃して仰天しました。そこで、「野蛮過ぎるからやめてくれ」と、明治政府に強く働きかけたのです。それで、1879年に拷問は廃止されました。しかし、みなさんご存知のように、拷問は特高警察などによって半ば公然とおこなわれていました。小林多喜二が拷問死したのは有名です。
現憲法は条文として拷問を禁止していますが、過去においても違法であるのにおこなわれていたわけですから、憲法に明記されたからといって、なくなるということではありません。実際に、今でも身体的な暴力が行使されることがあります。憲法意思の実現は、まさに私達の「不断の努力」にかかっているのです。
つい先日も、名古屋刑務所で「革手錠事件」がありました。革手錠をされて保護房に収容された受刑者が死亡した事件です。しかし、私はこの刑務官が特別に残酷な人間であったとは思わないのです。知り合いのまた知り合いに刑務官がいまして、「服役囚というのは言うことを聞かないし、暴れる。ああいうふうにやりたくなる気持ちは非常によくわかる」と言うのです。おそらく、同じ立場になれば、大抵の人は同じような行動や思考に陥っていくと思うのです。だからこそ、公権力の行使には厳しい制限が求められているわけです。(続く)

nani02
スポンサーサイト

テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://noir731.blog106.fc2.com/tb.php/866-5b2ede62
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



のわーるのつぶやき



最新記事



カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -



最新コメント



過去記事のアーカイブ



カテゴリ



最新トラックバック



2010年「国際ジュゴン年」



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



RSSリンクの表示



全記事表示リンク

全ての記事を表示する



FC2カウンター