時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
シベリアのピアニスト
武蔵野市民学校の上映会で「シベリヤ物語」(監督:イワン・ プィリエフ)を観る。作曲家の故・林光に影響を与えた作品特集、という企画である。無料にもかかわらず、相変わらず観客は5人ほどだ。
内容はソ連のプロパガンダ映画。戦争で片手を負傷したピアニストが、ピアノを断念し、大衆酒場のアコーディオン弾きとして絶賛を博する。市井の人々の気持ちに接した彼はそこで新たな人生を始めようとするが、恋愛問題に悩んで忽然と姿を消す。その後、北極観測所で働きながら黙々と作曲を続け、大作を手に音楽界に返り咲く。
前半は薄っぺらな人間ドラマが続き、中盤の大衆酒場の場面から漸く登場人物像が立体的になる。コサックのむさい男など、なかなか魅力的な登場人物も現れるのだが、最後の演奏会のシーンでの朗読で全てがぶち壊しになっている。極めて粗悪で教条的なプロパガンダをぶち上げてしまっているのだ。イェルマークを「征服者」として讃えるシーン(スターリンを重ね合わせているのか)など、映像を客観的に見ても、先住民殺しの虐殺者としか思えない。
ソ連映画は「雪解け」以降に漸く変貌を遂げるが、それ以前の時代にどれだけの表現努力が可能であったか。この作品では庶民の姿を魅力的に描くなど一定の成果は窺われるが、結論から言うと、下らん制約など無い方がいい。
とはいえ、ロシア民謡映画として、また、アコーディオンの流行という副次的な影響において、歴史的な役割を果たした作品であることは記憶にとどめておくべきだろう。
尚、上映後、客席にいたシベリア抑留の経験者から貴重な話を聞くことができた。齢90才を超える方だがかくしゃくとしており、抑留時代の経験を詳細に語っていた。それだけでも有意義な一日と思えた。

「現代思想」5月号を購入。特集は「大阪論」で、内容は想像されるとおり。またクズ雑誌だの何だのと言い出さないか、ちょっと気になる。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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