時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
15年目の「4.2.3」
中島みゆきに「4.2.3」という曲がある。アルバム「わたしの子供になりなさい」の末尾に収録されているものである。
15年前の4月23日、MRTAによる日本大使館占拠事件に際し、ペルーのフジモリ大統領は武力突入を命令。17人の犠牲者を出しながらこれを鎮圧した。
「4.2.3」はこの事件を題材にしたものである。歌はテレビ中継の様子をやや物憂げに淡々と歌い上げながら、やがてペルー国軍の兵士が担架に乗せられていく様子を描写する。「胸元に赤いしみが広がって」と、兵士が瀕死(或いは既に死亡)の状態にあることが窺われる。そしてこのことに対し、日本のテレビ報道が一切言及しようとしない様子に、歌の主人公は苛立ちを見せる。
長いので要約すると、「あの国の戦いの正当性については判らない。だが、助けてくれた兵士に対し、一言も触れようとしないのはどういうことなのだろう」ということだ。さらに「この国は危ない、何度でも同じ過ちを繰り返すだろう」と歌は続けられ、日本社会の病理性を描き出す。歌は後半に至るにつれ、ぞっとするような凄みを帯びてくるが、このあたりは実際に聴いて確かめていただきたいところだ。

中島みゆきの歌は譬喩、婉曲や反語表現を特徴とするが、この歌はストレートに時事的な問題を歌い上げたものである。それだけに、ファンの間では今でも語り草となっている。太田昌国が高く評価し、繰り返し言及していたことも記憶に残っている。
中島はゲリラ兵士の死については前述のように慎重な姿勢を見せるが、「少なくともこれだけはいえる」という視点から、事態の深部を抉り出すことに成功している。予備知識のない者にとっても普遍的に通じうる言葉となっている点は、決して侮れない。
「棚から本マグロ」でも何でもいいが、こうしたまなざしの鋭さだけは失わないでほしいと思う。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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