時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
桜考
やたら慌しく一日が過ぎる。そういえば、去年のこの時期はバカのせいで、花見をやるのやめるのと騒がれていた。
私は少年時代に読んだ安部公房の影響からか、「桜の花の美しさ」と言われても、どうも違和感が残ってしまう。ちなみに小林秀雄御大は、年をとると桜の花の美しさがわかるようになる、とのたまったという。確か大江健三郎がそんなことを書いていた。その後、少しばかり年を経てきてはいるが、どうだろう。近所を歩いて桜並木を眺めると、確かに見事だな、とは思う。同時に、何かギクシャクしたものを覚える。太宰治が富士山に抱いた違和感もこれに近いかもしれない。「富嶽百景」は日本という国家に対する愛憎相半ばした感情を描き出した傑作だと思うが、私の場合、さすがに桜の花にそこまで身構えた感情を抱いているわけではない。近親憎悪・・・いや、「憎悪」まではいかないな。むしろ「嫌悪」だろうか(尚、本居宣長には「敷島の大和心を・・・」で始まる有名な山桜の歌があるが、石川淳に言わせればただの下手糞な駄作である)。
例えば、ポップスなどでやたら「桜」を歌われるとちょっと勘弁してくれよと思う。フジヤマ・ゲイシャと歌っているのと変わらなく思えてしまうからだ。「桜の美」にはむしろ逆輸入的な要素が含まれているのは事実である。これはドナルド・キーンの功績(?)が大きいが、とにかくあまりベタに扱うのはみっともない。むしろ梶井基次郎のように、死体が埋まっている様子を想像するとき、何故か愉快な気分になる。
アニメなどにおいては桜の花はクリシェである。これは、作品の舞台に学校を設定する場合が多いからだろう。中には「これでもか」といわんばかりに凝った桜を演出する人もいる。昨年他界した出崎統などもその一人だった。
ともあれ、私たちはこれからも否応なしに桜と付き合い続けることになりそうだ。
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テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

この記事に対するコメント
さくらさくら!
あ~!自分はとても単純なつくりに出来ていますので、さくらの花を見ると本当に嬉しく楽しくワクワクして、そして、ゆったり美しいと思います。梶井さんとかメチャ凄いよ~!とか思いつつ。
さくらの花とか見ると、この世にこんな美しいものがあるんだ…って、毎年ゆるゆると素敵な気分になります(微笑)
昔っからご先祖さまとか、ご先祖さまでないひととか、皆さんこの地にいらした方は、さくらが好きとか花見がややこしいとか、花見客の素行がわずらわしいとか、なんだか似たような事をいつも言ってて、しかも毎年さくらの花は同じように美しく、しかも違う花が咲くのが素敵だと思います。
実に、さくらの花は美しくてきれいで、夢のようで、しかもちっとも、美しさとも夢とも遠い、世俗のトホホを味わあせてくれちゃったりするあたりが無茶苦茶ニクい!とか思っちゃいます。
わいわい!
【2012/04/03 01:29】 URL | ふぶら #- [ 編集]

Re: さくらさくら!
花見は「花を見る」のではなく、花に囲まれてワイワイやるのが楽しみですからね。
よく桜の美は無常観と結び付けられますが、「豪奢」と結びつける観点がもっとあっても面白いかと思います。余計なものは一切身に付けず、木々に花だけが一面に咲き乱れるのですから、これは豪奢です。

JASRACはもはや利益追求団体ですね。あるいは取り締まり的な行為が自己目的化しているのか・・・何を目指しているのか全くわかりません。
【2012/04/03 23:52】 URL | のわーる #- [ 編集]


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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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