時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
愚か者たちの挽歌
「海燕ホテル・ブルー」(監督:若松孝二 脚本:黒沢久子・若松孝二)を観る。
突風の中、午前の回ということもあり、客席は空いていた。原作はこのブログでもレビューした、船戸与一のあまり出来のよくない作品。どうなることかと心配したが、往年の若松映画を髣髴とさせる、不思議な味わいのある作品となった。「犯された白衣」や「処女ゲバゲバ」を想起した人も多いだろう。一種のファンタジーといってもいい。尚、原作に登場した、コミューンを夢見るおやじは登場しない。
テーマは「転向」である。私は転向自体を悪とは考えない。なぜ転向するのか、いかに転向するのか、が問われる筈である。本作では欲望・快楽に溺れて志を喪失したあげく、浅ましく醜い争いにひた走る者たちが描かれる。序盤に登場した、右田(ウダタカキ)の方が人間的ですらある。彼は黒田三郎的な「日常」を必死に生き抜こうとするのだ。
転向の問題では、「現代好色伝 テロルの季節」(脚本:小水一男)を思い出してもいいだろう。こちらは愛欲に溺れながらも、志を保ち続ける偽装転向者の話であった。この映画は自爆テロで終わるが、そのまま静かに転向者として共同生活を続けていったとしても、否定すべきではないと思うのだが・・・
ヒロインの梨花(片山瞳)は、とらえどころのない不思議な精霊ともいうべき存在である。劇中で彼女は言葉を発しない。老女の姿をとったときを除き、最後の「愚かな人たち!」という決め台詞が、唯一彼女の発する台詞である。「たまもの 熟女・発情・タマしゃぶり」(監督・脚本:いまおかしんじ)の林由美香に通じるものがある。こちらは決め台詞があるわけではなく、最後に声を発したときに、それまでの感情が迸るという構造だが。
グロテスクな争いを続けた挙句、自滅していく男たちを見下すヒロインの姿に、原発事故に対する総括を見出すことも可能だろう。からかうように発せられるラストの台詞は、重大な事故を引き起こしてしまった、私たち日本人に対して投げらつけれた言葉でもあると思われた。



パンフレットにはジム・オルークのサントラが付属している。
kaien
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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