時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
サドと死刑廃止論(2)
(承前)「法律はそれ自体冷静なものであり、人間において殺人という残酷な行為を正当化しうるような情熱には近付き得ないものであろう。人間は自然からこうした行為を許されるような感じやすい性質を与えられているが、反対に、法律は常に自然と対立し、自然から何も受けていないので、勝手に同じ逸脱を行うことが認められている筈がないのである」(「閨房哲学」)
ここで言われていることは、今日の言葉に置き直せば、「人間に対する生殺与奪権を、抽象的かつ無機的な法律などに委ねてはならない」ということになる。もっともサドの論理では人間の情熱による殺人ならば容認されることになってしまい、そのため復讐法も認めなくてはならないという結果に陥ってしまうのだが、少なくとも、人間の死というものをより現実的な事件として~抽象的な事項ではなく~捉え直そうとする試みは現在もなお、説得力を持つ。
モーリス・ルヴェは次のように述べる。
「ルソーや「善良な自然」の信奉者達が、美徳の名の下にあまたの首を切り落とす一方で、「破廉恥侯爵」が死刑に抗して唯一人立ち上がるのを考えることは興味深いことである」('Donatien Alphonse François, marquis de Sade')
かかる死刑反対論において、サドが彼の同時代から一歩現代に足を踏み入れていることは確実である。

付記:実際には、サドに先駆けてベッカリーアの死刑反対論が存在する。また、あのロベスピエールも弁護士時代は死刑廃止論者であった。しかしそれでも尚、サドの死刑反対論の独自の輝きが失われることはない。
ところで本日、三人の殺害が執行された。昨日から、死刑の話題に触れてきた矢先である。まさかこのブログに対する当て付けではないだろうが、嫌な符合だ。

先程、首相官邸前の、原発再稼動に対する抗議行動に顔を出してきた。この報告については稿を改めたいと思う。
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この記事に対するコメント
極東再分配?
政治が混迷を極めると、何やら「符牒」でもあるのでしょうか?バレバレだけど。

ツィッターにて、「原発、わたしはこう思う」の時間帯に「報ステ」で検索かけると毎回の様に嫌がらせ的な「符牒」が大量発生している様に感じてしまうのは私だけでしょうか?。
【2012/03/30 01:49】 URL | ダムド #- [ 編集]

知らなかった~勉強になります!
サド侯爵といえばエロティックな興味でのみ語られる事が多いせいか、死刑廃止について深く考えていた方だとは全然知りませんでした。勉強になります。
自分は島田荘司氏の「秋好事件」を読んで、「死刑…やっぱそれはあってはいけないんではないか?」等と考え始めたのが最初です。非常に特異なケースだとは思いますが、現実にそのような難しさは存在する以上、「庶民の懲罰感情」でワイワイとお祭り騒ぎで「悪人を高く吊るせ」と娯楽みたいに死刑を肯定するのはとても危険な気がします。それ、人間の範疇を逸脱している、とか思ってしまいます。
それにしてもサド侯爵が…勉強になるなぁ…
【2012/03/31 12:04】 URL | ふぶら #- [ 編集]

Re: 知らなかった~勉強になります!
>ふぶらさん
サドについては昔書いた論文を、少し整理しながらおいおい紹介していこうと思います。自分への宿題として残したテーマも多いので、いつかもう一度向き合うべきだと考えていました。近頃、色々ときっかけがあったので、そろそろ機が熟してきたようです。
【2012/04/01 00:25】 URL | のわーる #- [ 編集]


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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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