時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
雄弁と沈黙と
その昔、アメリカの女性パフォーマーが、「ハローキティに口がないのはアジアの男性優越主義が女性に沈黙を強要していることの証である」と告発したという(四方田犬彦「「かわいい」論」)。幼稚な言い掛かりであることはいうを俟たない。この手合いにとっては、郵便ポストが赤いのも差別や抑圧の象徴なのだろう。
この女性が実際にどのような価値観に基づいて行動しているかは知らない。だが、ただひたすら内容空疎な饒舌が持て囃される傾向は事実としてあるだろう。「よく自己を主張している」とかいうのがその理由らしい。私たちの身近にも、空回りした饒舌で肥大した自我を満たそうとしているような人物が存在する。そこには人間性への洞察など、微塵も存在しない。
法律学では「黙示の承諾」という概念が存在する。つまり、「黙っていると相手の言い分を認めたのと同じこととみなされる」という事である。「権利の上に眠るものを擁護しない」というのが法の原則であるが、これは取引や契約などの社会関係を円滑に進めるために設けられたルールである。
とりわけ、政治闘争においては結果がすべてである。勝たなくてはならない。沈黙は敗北を意味する。
こうした外形標準的な価値観は、人間性の真実からは程遠い。政治は愚劣である、と埴谷雄高が述べるゆえんである。そこでは、人間性にまつわる一切が捨象されてしまうからである。「沈黙」という概念ひとつとっても、そこには、傲慢、羞恥、怯懦、憎悪、照れ、感動など、さまざまな感情が存在し得る筈である。
さて、「自分を売り込んだものが勝ち」という価値観の持ち主が、社会のトップに立ち、汚らわしい手で私たちの生活をかき回す姿を想像してみよう。パワーゲーム的な、野卑な人間観により、私たちの人間性のかけがえのない部分が「無価値」として切り捨てられてしまうのだ。嘗て幸徳秋水は、運動において重要なのは人間学だ、と述べたという。私も、政治には人間学的イマジネーションが必要だと考えてきた。「維新」などという空文句に豊穣さなど何一つない。いま行われているのは価値をめぐる闘いである。
スポンサーサイト

テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

この記事に対するコメント
ハローキティ?!
いやもう知りませんでした。びっくりでした。ハローキティに「口が無い」なんて気がつきもしなかったです…はぁ。脱力。
いや確かに日本の(アジアの他の国をよく知りませんから…)女性が「ろくでもない男性優位社会の中でモノ言えずからめとられているキツい状況」はあるんですが(特に年長女性にとっては…若い一時期だけは逆に「ワガママ」通せたりする場合もありますねwごく僅かの容姿端麗な方々の場合はww勿論自分には無縁www)、それをハローキティに拡大解釈しちゃコジツケも良いトコロだろと。それこそ逆にアジア女性への偏見ムキ出しだろと。
政治のやりきれなさ、「維新の会」。大阪の友人達との会話を思いだし、底知れない不見識と無神経を憂慮します。まだうまく言い表せませんが。
【2012/03/27 01:03】 URL | ふぶら #- [ 編集]

Re: ハローキティ?!
> ハローキティに「口が無い」
水戸泉さんがツイッターで触れていたので、少し発展させて記事にしてみました。サンリオサイドでは、敢えて特定の表情をつけなかったようですね。見る人が、様々な表情をその中に見出せるようにというのが理由です。能面がその内に多義的な表情・感情を内包しているのと同じですね。
【2012/03/27 23:36】 URL | のわーる #- [ 編集]

成程「能面」ですね!
風邪ひきで反応遅れましたが、成程!「能面」と同じように「敢えて特定の表情をつけない」ハローキティ…とても納得しました。能も少し好きです。その意図ワクワクです!当時のサンリオのキャラクターはキキ&ララもLittle Gangも確かに…コジツケは勘弁して欲しいです。
…尤も、公平を期すと、反ラディカルフェミニズム派?にもコジツケ好きはおりますね。ある携帯電話会社のCMに登場する人気家族の父親役が「犬」なのを「男女雇用均等法以降の父親男性の権威の失墜」とかコジツケてる表現規制反対派の本を読んでしまい、これ又ゲンナリしました。ミソジニーは多分、確実に表現規制反対派の足を引っ張ってるんですが、困っちゃうなぁ…。
まぁ来月、お能に行くので(わーい!)しばし浮世忘れて楽しんで来ます。
【2012/03/31 11:51】 URL | ふぶら #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://noir731.blog106.fc2.com/tb.php/818-eb26d7e0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



のわーるのつぶやき



最新記事



カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -



最新コメント



過去記事のアーカイブ



カテゴリ



最新トラックバック



2010年「国際ジュゴン年」



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



RSSリンクの表示



全記事表示リンク

全ての記事を表示する



FC2カウンター