時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
葱と糸
背中を痛めたので、一日安静にする。

先日、「蜘蛛の糸」に触れたので、ちょっとその続き。
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」に、「蜘蛛の糸」とそっくりの小咄が登場することは、読了した方ならご存知と思う。中盤でグルーシェニカがアリョーシャに語って聞かせる話だ。題して「一本の葱」という。
話の骨子は「蜘蛛の糸」と同じ。守護天使が一人の女に葱を差し伸べ、地獄から救い出そうとする。彼女は生前、乞食に葱を与えたことがあったのだ。すると、地獄にいた他の罪人たちが自分も助かろうと、女にしがみついた。女が「これはあたしの葱だ」と足で蹴落としにかかると、葱はぷつんご切れてしまった。天使は泣きながら去っていった。
芥川の作品は仏典の解説書が元になっている筈なので、直接的な模倣というわけではないだろう。人間の業を描いた作品だが、同時に作者自身の姿をそこに描き出したといっていい。カンダタは芥川であり、私たち自身なのだ。ここで注意して欲しいのは、作者がそれを断罪する立場にないということである。マルバツを判定するのが文学の役目ではない。己の宿命の悲劇を 見据えた作品であり、そこがこの掌編を印象深いものにしている。

kumonoito
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のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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