時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
書きたいテーマを書け
「表現者は政治的な問題を扱ってはならない」という、奇怪な公式を信奉する連中が存在する。
特に日本においてはこの公式がかなり蔓延っているといっていい。実に馬鹿馬鹿しい。私の結論は単純である。書きたいものを書け、描きたいものを描け、である。ユゴーが民衆蜂起を描こうと、ピカソがゲルニカを描こうと、ゴダールがパレスチナ問題を撮ろうと、何ら非難には値しない。ただ、その出来栄えが問われるだけだ。
勿論、自らの美意識としてアクチュアルな問題を扱わないという方法はあり得る。だが、それはあくまでも個人的な美学でしかない。作家は自らの関心領域において創作活動を行う。その関心事が政治的課題であろうと、倒錯的なエロスであろうと、その選択自体によっては作品の価値は上がりもしなければ下がりもしない。これは自明のことである。
つまらない公式で創作活動の選択肢を狭めていくことに、何ら生産的な意義があるとは思えない。やりたければやればいい、やりたくなければやめればいい。ただ、「エロを扱うのはけしからん」だの、「政治を扱うのはけしからん」だのとぬかす輩は軽蔑に値する。言えるのは「こういう作品は好きではない」という程度である。

さて、そうであるとして-
近頃話題のいましろたかし「原発幻魔大戦」は、3.11以降の自己の姿を題材にした、「(私小説に対する)私漫画」の一種であると考えていい。主人公がやたら極端な焦燥感に駆られている点はどうかと思うが、こちらも青少年条例の時は同じような状態だったので、そういうのもありかなと思う。それに、程度の差を別にすれば、私も主人公と思いは共通する。ただ、「オナニーして寝よう」のくだりなどの方が、人間的で好感が持てた。
主人公が「無関心派」に対し苛立ちを覚える場面は、幾分相対化されているものの、少し危うい。これは一歩間違えると大衆蔑視・大衆憎悪に行き着く。昨今も瓦礫問題をめぐり、やたら恫喝口調で自分の主張を押し付ける傍若無人の輩が見られた。こうなると処置なしだが、運動に関わる人は皆、注意するべき事柄であると思う。
漫画としての出来栄えはアンバランスな点が多いが、(事実関係の真偽を含め)あまり作者も拘っていないように思える。震災後の混乱した自己自身の姿をひたすら記録し続けようという所に力点があるのだろう。私のブログも自己の足跡を記録として残そうというものなので、似たようなものだ。震災を跨いだ今、なにやら近しいものを感じないでもない。

genpatsugenma
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テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック

この記事に対するコメント
アトミック・カフェ
>運動に関わる人 

ここ本当に注意しなければならないと思います。 

東京新聞、1面、3.11後・デモ考、小熊英二が「デモ」について、昨年秋までは「(参加者も見る側も)単純に慣れていないので、対応の仕方が分からなかったのでしょう」と述べ、現在の好転ぶりを評価しておりますが、「原発幻魔大戦」のサトー君(いましろたかし)の焦燥感はそんな昨年秋までの時点で終わっているので続編が出ればまた読んでみたいですね。巻末の田中康夫氏との対談でいましろ氏の飲み屋での愚痴を、田中氏が「(こういった)漫画を描くことで飲み屋でこういう話をすることができる読者がうまれたりする…」と励ましていますが、やはり漫画の持つパワーを感じてしまいます。それと一応注意はしておりますが、私たちが参加している「デモ」の雰囲気からして「大衆・民衆蔑視」に向かう事はおそらくないかも。漠然とした思いからですけど。

【2012/03/18 18:39】 URL | ダムド #- [ 編集]

Re: アトミック・カフェ
>私たちが参加している「デモ」
多くの参加者は理解して行動していると思います。実際、皆さん物凄く意識は高いですよ。

ただ、ネット上では、ちょっとボランティアに行っただけで、被災者代表のような顔をする人が散見されますね。後は記事に記したとおり。瓦礫問題に触れると大炎上します。敢えて名指しすることはしませんが・・・
自分は自分自身しか代表できやしない、他人を僭称するな、と吉本が口を酸っぱくして語っていたのを思い出します。
【2012/03/18 23:05】 URL | のわーる #- [ 編集]


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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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