時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
蟻塚の中のかぶと虫
映画「311」。見終わって色々考えたが、どうにも奇妙な映画である。整理できたとはいいがたいが、とりあえず感想を記す。尚、これまでの記事同様、ネタバレを厭わないことをお断りしておく。
まず、車の中からの映像から映画は幕を開ける。ガイガーカウンターをチェックしながら、一行は被災地に向けて北上する。福島に着いた四人は、雨の中原発付近まで接近しようとするが、途中タイヤがバーストしてしまい、断念する。その後、一行はさらに北上し、延々と続く瓦礫の風景を目の当たりにする。森達也の体当たりのインタビューが行われ、ネットで話題になった遺体のシーンが映される。正確に言うと遺体の搬送シーンだ。前評判を聞いていると、「エッ、これだけ?」と拍子抜けするはずである。綿井健陽の「リトル・バーズ」の方が、遙かに生々しい遺体の映像が晒されていた。尚、抗議した男性とは撮影後に和解している。

そもそも映画として纏めることを予定せずに行った撮影である。よって明確なテーマをもって出向いたわけではない。体当たりのインタビューにも、延々と続く瓦礫の風景にも恣意的な(安い)意味付けは行われていない。むしろむきだしの風景自身に物事を語らせている。足立正生たちの「風景論」と重ね合わせてもいい。都市の均質化された街並みは息苦しいものだが、壊滅した風景もまた窒息しそうな息苦しさを孕んでいる。
映画はひたすら震災後の現実と、どうしようもないままそこにいる四人の姿を映し出す。途方もない崩壊を前に、彼らはなかなか取っ掛かりを見つけられない。そして、どうしようもないのは映画を見ている私たち自身の姿でもある。夕暮れの中、トボトボと歩いていく撮影者たちの姿に、やりきれない自分自身の思いを見たような気がした。

311chirashi
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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