時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
大いなる遺産
ウージェーヌ・シュー「さまよえるユダヤ人」下、漸く読了。ちんたらちんたら読み進んでいたため、時間がかかった。途中で少し飽きてきたためである。
150年前の遺言による遺産相続をめぐり、相続人たる子孫達がイエズス会の陰謀に巻き込まれるという話。抄訳という性格からか、ストーリーのバランスが悪い。インドの王子は後半ほとんど登場せず、工場長は全く印象に残らない。ごろ寝の大将は結局何だかよく判らない登場人物。囚われの身となったアドリエンヌや、双子の姉妹のその後も曖昧なままである。題名の「さまよえるユダヤ人」の役割も、いささか物足りない。とはいえ、娯楽小説として充分面白く読める。
19世紀は近代的な意味での「小説」というジャンルが漸く成立したばかりなので、今日的な尺度で測るのは少々無理があるだろう。むしろシューのあたりがその草分けとなったといってもいい。よって、その欠陥をあげつらっても意味がない。むしろ娯楽小説というジャンルにおいて、七月王政期の19世紀社会を立体的に描こうとした点を評価したほうがいいように思える。事実、ここに描かれる社会階層は極めて多岐に亘り、貴族、イエズス会、軍人、労働者、職工達が、八犬伝さながらの運命の交錯を見せる。メイユーことマドレーヌ・ソリヴォ嬢がユニークな活躍をするのも楽しい。
ナント勅令の廃止が作中で言及されていることは前に述べた。宗教改革以後の内ゲバが、19世紀を舞台にした作品においてもロマンの題材となっていることは興味深い。

juif
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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