時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
偉そうに言えた義理ではないが、あえて言わせてもらう。
サン・テグジュペリの「人間の土地」の冒頭部分を少し眺める。失恋して自殺した青年を蔑んで記述したくだりを読み。この人の書くものは到底好きになれないと思った。「夜間飛行」にしてもそうだが、私はこの作家の英雄主義が嫌いだ。この人なら「世間の非難に耐える、東電幹部の英雄的な姿」でさえ、平気で描くだろう。勝ち残った側の峻厳たる美学を描くのがこの作家の特質と思える。これが「星の王子さま」の世界とどう繋がるのかよくわからないが。
「ただぼくは思い出す、この情けない見せびらかし(引用者註:自殺の事)を前にして、自分が高貴な印象を受けるかわりに、じつにあさましい印象を受けたことだけを。つまりこの男の愛すべき相貌の裏側、この人間の頭蓋の中には、何ものも存在しなかった。何ものも。存在したのは、ただ多くの娘と同じような愚かしい一人の娘の姿だけだったのだ」(「人間の土地」)
このくだりを読む限り、この人には人間が判っていないのではないかと思う。青年の死は、「情けない」ものでも「浅ましい」ものでもない。ただひたすら痛ましさを覚えるだけだ。そしてあらゆる「死」は常に等価である。
恋をした、恋に破れた、耐えられずに自殺した。別におかしなものではない。如何に稚拙に見えようとも、それが人間というものだ、人間は、彼が思っているほど強いものではない。
必要な事はそうした人間的な不完全さ、弱点を包摂する事だ。他者を理解するという事はそこから始まるのだから。

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テーマ:本読みの記録 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
澄み切った空のその先に逝く
>サン・テグジュペリ 

自殺、この時代、キリスト教的教義に反するとして現在以上に忌避された当時の欧米諸国を象徴している様な…。 

>星の王子さま

辛酸なめこの超訳本なら読みました((笑)(^Q^)/^)。
【2012/01/20 02:05】 URL | ダムド #- [ 編集]

香水は好きなんですが(苦笑)
「星の王子さま」の後「夜間飛行」を読んで「…う~ん、ダメだぁ…」だった過去があります。
最初の方でミスを犯した従業員がめっちゃ厳しい処分を受けるくだりがあって、とても違和感ありました。その後防災安全とかちょっと勉強して、「やっば、そんな個人のミスに帰結させたらダメじゃん!ミスは共有知識化して再発防止策を策定して標準化しなくちゃあ…個人に懲罰的なやり方じゃあ安全は確保出来ないのにっ!」とか思いました。香水は好きなんですけど、「夜間飛行」。
この作品は…きっと読まないと思いました…「雪国」は古本屋さんで探しています。
関係ないですが、誤って最初「夜間非行」とタイプしちゃいました。何だか、あどけない不良少年クンが夜の街をうろついてるみたい?あやうくマヌケなコメントしちゃうところでした(微笑)
【2012/01/20 17:56】 URL | ふぶら #- [ 編集]


あっ、間違えた。 

なめこ→なめ子でした。
【2012/01/20 20:51】 URL | ダムド #- [ 編集]

戦う操縦士
アントワーヌ・ド・サン・テグジュペリは両次大戦間のいわゆる「不安の文学」に属する作家ですね。同時代に活躍した作家にはマルロー、モンテルラン、セリーヌ、サルトルなどがいます。ベル・エポックの享楽主義への批判から、作家たちが倫理主義的な作風に傾いていった時代でした。サン・テグジュペリの場合、強靭な精神を持ち備えた理想主義的人間像を描こうとしたようですが、その結果、文学としても人間学としても、薄っぺらなものに成り下がってしまったというのが私の批判です。
先程「フランス文学史」で調べたら、「星の王子さま」は晩年の作品で、フランスの降伏による挫折感が前面に表れた作品のようです。だからこの作品だけ、ちょっと異色のようですね。
【2012/01/20 23:53】 URL | のわーる #- [ 編集]

宝塚版「サン=テグジュペリ~『星の王子さま』になった男」
最近、宝塚花組の「サン=テグジュペリ」を観劇、かなり興味深かったので…
宝塚版サン=テグジュペリの生涯のお芝居は「星の王子さま」の登場人物が、そのまんま「現実のサン=テックス(テグジュペリ)の生涯に現れる」という、ヅカならではの夢々しい設定でした。サン=テックスが砂漠で遭難すると星の王子さまが登場しちゃうとかw「あっこれはアリだ!」なかなか面白かったです。
サン=テックスと妻コンスエロは「どちらも子供」、故に時にすれ違う…て。あぁそうか「英雄主義」って、単に「子供」って事か!流石はヅカ、男のロマン(微笑)を一刀両断(か?(^-^;)。
舞台としては組替えで去る二番手と退団する三番手が素敵過ぎて「主役のサン=テックスが割り食った」感まで含めて、「非・英雄主義」なひねくれ読みも出来ちゃった面白い公演でした。いや素直に乙女で観てもいましたが(汗)
【2012/09/23 10:05】 URL | ふぶら #- [ 編集]

「わたしのなかで死んだ朗らかな子供」
>サン=テグジュペリ
あの人も晩年の「星の王子さま」になると雰囲気が大分変わってきますからね。作品にも挫折感が深く刻まれています。

まあ、どこかしら子供で無かったら文学なんてやってられませんから(笑)。サルトル、ジュネ、コクトーあたりは完全に子供の感性を残してますね。中には、東京都知事なんて人も居ますが(笑)
でも、英雄主義を振りかざす人は、文学と縁もゆかりも無い人に多いですね。政治家や財界人とか、子供というか幼稚というか・・・何なのでしょう
【2012/09/25 00:51】 URL | のわーる #- [ 編集]


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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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