時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
北杜夫逝く
北杜夫が亡くなった。少年時代、この人のエッセイは実によく読んだものだった。
「昆虫記」を皮切りに、「マンボウ」シリーズや、ユーモア小説、童話、少し背伸びして「羽蟻のいる丘」「夜と霧の隅で」「遥かな国遠い国」などの硬い短編、長編では「白きたおやかな峰」が印象に残っている。
高校生ぐらいになった頃か、受験勉強を「嫌なものだが、勉強できる事自体いい事ではないか」と無神経に肯定したり、戦争責任を「国のためを思ったのだから」と、安易に免責してしまうなど(この点は父親のことがあるので複雑かもしれないが)幻滅する事が多く、次第に心が離れていった。
「楡家~」や「輝ける碧き空~」を読まずに来ているので、あまり良い読者ではないかもしれない。
だが過去のマンガ規制問題で、手塚治虫や白土三平が槍玉に挙げられた際に、積極的に擁護に回った事は評価したい。そして、何よりも読書の悦びを教えてくれた事は貴重である。多くの人を導いてきた水先案内人としての役割は大きかった。感謝の言葉を送りたい。

「手塚 うん、「罪と罰」でいわゆる売春婦を描いたんですね。
北 あ、だったかな?
手塚 で、あれもね、子どもを持つ親から、ずいぶん非難を受けた。
北 そうですか。
手塚 だって、「罪と罰」は売春婦のソーニャ書かなきゃしょうがないもん。ね!」(手塚治虫「虫られっ話」)

この親キチガイ過ぎ。
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テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

この記事に対するコメント
猥歌 炭坑節
訃報にふさわしくないタイトルで申し訳ありません。ただ、それ位ひょうきんな人だったなぁ、北杜夫。
私は高校を卒業するまで一冊たりとも「本」を読んだ事がないバカな不良少年でしたが、程なくして、島崎藤村の「夜明け前」で読書に目覚め、その次が北杜夫の「どくとるマンボウ」シリーズでした(遅すぎですね)。 
「夜と霧の隅で」は何回も読み返し、ナチスドイツのみならず、同時代の大日本帝国とは?と考える様になり、感慨…否、感謝すべき著作でした。 
言いだしたらキリがありませんが、2000年に世田谷文学館で、「北杜夫展」があり行きました、講演者は実兄の斎藤茂太だったのですが、本人に劣らずユーモラスな人物で「どくとる~」シリーズのトリビア的な実話が聞け、内容の半分近くが下ネタ関連だったので会場中が爆笑でしたね。
友人のなだいなだが都合で来れなかったのは残念でしたけど。 

巨匠達が次々と鬼籍に入って行くのは、残された下の世代への警告と想う様になりました。
つまりは、今の表現者達がこの期に及んで…中略、己自身の過去或いは直近の仕事(表現)に責任を取ろうとしないこの「沈黙」「逃避」もう「赤信号」が灯り出そうとしているのに…。

本来ならば名指しで吊し上げたいが、のわーるさんに迷惑がかかるのでやめます。

なんか以前にも同じ様なコメントを書いた様な……ご免なさい。
【2011/10/28 00:36】 URL | ダムド #- [ 編集]

アタオコロイノナ
私など、埴谷雄高の名前も北杜夫経由で初めて知ったのですね。「近代文学」の人は怖そうだと思っていたところ、色々アドバイスを受けて助けられた、と繰り返し書き記していました。確かに「近代文学」は平野謙はじめ、日共がらみのキツい面子ばかりでドン引きするのは判ります。
個人的には、たしか「追想記」か何かで「オナニーは医学的にみて害はない。むしろ罪悪感を持つ事で神経症などの症状を引き起こす事がある」と書いていたことに助けられました(笑)。青春時代の思い出です。
【2011/10/29 00:34】 URL | のわーる #- [ 編集]


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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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