時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
出口なき<辺境>
井上光晴「階級」の感想を記す。
例のごとく、辺境の炭鉱跡が舞台。複数の直接関係のないストーリーが平行して進んでいくという、いつもの形式を踏襲している。荒廃したスラム的な世界に住み続ける下層階級の人々を描き、社会の暗部を抉り出すと言う事だが、少々異常趣味に偏りすぎていないか。
いつものごとく、やたら猜疑心の強い偏執狂的な登場人物が多く登場するが、小説的な広がりは乏しい。ひたすら息苦しさだけが感ぜられる。終盤になって少し盛り上がりが見えてくるが、すべての事件が未解決のまま、これまたいつも通り尻切れトンボで幕を閉じる。ラストは主人公の一人が理不尽な言いがかりから監禁され、わけもわからず密殺されようとする場面。
この小説が刊行されたのは68年、直後には代表作の「心優しき叛逆者たち」の連載が始まることから、井上が作家としての円熟期を迎えた頃と判断される。だが、方法論的な疑問は別としても、もう少し劇的な広がりを持たせて欲しかったと思う。

henkyo
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Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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