時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
価値を問い直すこと
「アメノウズメ伝」(鶴見俊輔著)。再読しようとしていたが、結局そのまま放ったらかしになってしまった。
あまり体系的に纏まった書物ではない。鶴見独自の観点から捉えた、アメノウズメ的なものに対する考察をまとめた文集である。
笑いと躍動感に満ちたアメノウズメの姿は、アポロン的なものに対する、ディオニュッソス的なものと言い換えてもいいだろう。彼女は「自分のくにと他人のくにとを問わず、権威をおそれない」。
踏み込んだ見方をすれば、近代的理性中心主義の自明性に対し、根本的な問いを投げかけることであり、全ての権威的なものを嗤いのめすことである。
民衆文化のうちに潜む、こうしたアナーキーな生命力に、著者は期待感を寄せていると思える。

例えば、サド侯爵の一連の作品は、価値そのものを徹底的に解体する試みだったといえる。
「支配階級の思想が支配的である」とはエンゲルスの記述であるが、少なくとも人間の意識がその社会的、時代的制約と無関係ではいられないことは確かだ。よって、徒に無為のまま受動的に過ごすのであれば、規格の檻の中で、それは精神であることをやめる。我々の精神は非常に危うい場所の上に立っている。
「決まっていることだから、これは正しい」・・・過去の歴史が示すように、これは排除と抹殺の回路を形成する。考えることをやめるとき、人は怪物となる。だからこそ、くびきを脱し、思考の全体性を回復しようとする試みが貴重となる。
昨今公権力によって提唱される「健全化」など、近代に奇形的にでっち上げられた公式のモンスター化に他ならない。これはまさに、考えることを規制せよといっているだけである。
私達は、自らの精神活動に潜む、エネルギーのマグマを圧殺してはならない。

アメノウズメ伝―神話からのびてくる道 (平凡社ライブラリー)アメノウズメ伝―神話からのびてくる道 (平凡社ライブラリー)
(1997/10)
鶴見 俊輔

商品詳細を見る


スポンサーサイト

テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://noir731.blog106.fc2.com/tb.php/337-4bdeffe1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



のわーるのつぶやき



最新記事



カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -



最新コメント



過去記事のアーカイブ



カテゴリ



最新トラックバック



2010年「国際ジュゴン年」



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



RSSリンクの表示



全記事表示リンク

全ての記事を表示する



FC2カウンター