時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
<鏡>としての神話
特に書くことも無いので、先日観た、「神々の深き欲望」(監督:今村昌平 脚本:今村昌平・長谷部慶次)の感想を記しておこう。私にこの大作のモチーフが正確に把捉しえたかどうか自信が無いが、私なりの印象を拙いながらも記しておきたい。

多くの人が指摘するように、ここには神話的な世界が活写されている(インセスト・タブー、シーシュポス的苦役、マレビト信仰等)。だが、決して後味のよい話ではない。私達は、神話とはグロテスクなものであることを忘れてはならない。
私はこの作品を、神話として昇華された物語世界を、土俗的な次元に還元する試みとして理解する。つまり、神話の背景に隠されたものを探るわけである。
一口に言えばこの物語の骨子は、閉鎖的なムラ社会において、いじめが嵩じて集団狂気に陥り、殺人に至る過程である。社会が存在する以上、そこには必ず「はみ出し者」が存在する。閉鎖的な社会はそうした異分子を抹殺し、それによって秩序を回復しようとする。いわば、小規模の全体主義構造であり、現代の私達の姿も、決してこれと無縁ではない。つまり、ここに描かれる世界は、我々の社会の写し鏡である。
やがて、歳月は流れ、島の事件は伝承として人々に語り継がれるようになる。嘗てのリンチ殺人は、新しいカミが古いカミに敗れる姿として表象されるだろう。これは「カムイ伝 第二部」において、正助への集団リンチが民間伝承として語り継がれることを想起させる。
最後にクラゲ島が文明化していくくだりは、国譲り神話と比較してもよいような気がする。
神話的世界を映し出しながら、同時に何かしら、しこりのようなものを残す、この作品の狙いは案外そこにあるのかもしれない。

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Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
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