時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
相模原事件への反応について
以下は、先日大雑把に記した事柄の再論である。多くは同じ内容の反復であるが、改めて別の記事として取り上げてみた。

相模原事件を巡る報道/社会的反応への違和感は、容疑者を医学的な<狂人>として扱いたいのか、卑劣な差別主義者として扱いたいのか、よく判らない点にある。
報道は、容疑者の薬物使用歴を強調する。この線でいくと、「被疑者はドラッグで頭をやられた狂人だ」ということになる。心神耗弱とされるかどうかは別として、「彼は医学的な意味で普通の人間では無いのだ」という位置づけがなされていく。
実際のところ、容疑者がどちらに属するのかは明確ではない。例えば、「ヒトラー思想が降りてきた」という証言は、運動圏の人間の多くにとっては、彼が許しがたい差別主義者である証左となるだろう。だが、わたしがこの証言から受けた印象は、「かなり電波な、イっちゃってる人」というものである。宇宙人と交信したというのと、あまり変わりが見えないのだ。
だが、報道はこの両者を混同したまま、かなり踏み込んだ内容にまで言及してしまい、道徳的断罪を行っている。「犯人は危険思想の持ち主だ」、「犯人は狂人だ」という二つの主張が屢々すり替わり、「犯人は危険思想を持った、許しがたい狂人だ」というアマルガムとなる。
この概念のすり替わりは、かなり危うい。「許しがたい狂人」という概念を突き詰めると、「危険な狂人を許すな」という主張に到達する。事実、そうした論調も見受けられる。そうなると、本件のみに限った話でなく、精神疾患を道徳的に断罪する事が一般的に可能となってしまうのだ。ここから、「精神障害者を抹殺せよ」までは、あと一歩である。
今日の社会が、ヘイトクライムを生みやすい土壌にあることは事実である。だが、今回の事件がどのように関係しているのか、あるいは関係していないのかは、今の所よくわからないのが実情である。本件に対し、早急に判断を下すのは控えたほうがいいだろう。結論を急ぐあまり、監視体制の強化や人権の抑制に迎合するのは愚の骨頂である。
有田芳生は、容疑者が「ネットや書籍(あればだが)で何を読んできたのかを検証しなければならない」などとのたまっている。思想狩りのゲーペーウー気取りか。公権力がこのような措置をとることに、何ら疑問を抱いていないこの姿勢にはぞっとする。彼が刑訴法改悪に異を唱えなかったのも、この辺にあるのかもしれない。サド侯爵を大学の卒論に選んだわたしなどは、さぞかし危険極まりない犯罪者予備軍としてマークされるのだろう。
治安国家化への罠は至る所に存在する。溢れ出る情報の洪水に、わたし達は慎重に立ち向かわなくてはならない。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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