時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
<英雄>が逝く
ボクシングは嫌いではないが、別に詳しいわけではない。寧ろ、ど素人だといっていいだろう。
そんな私がモハメド・アリの名を知ったのは、幼い頃に読んだ藤子不二雄のマンガ「ドラえもん」においてである。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」という形容は、当時の私の記憶に残った。残念ながら私の家族は誰一人ボクシングの知識が無く、私自身もその人物が実在するのかどうかすら定かにしないまま幼年期を過ごした。
彼の存在を少しなりとも意識するようになったのは、ブラック・パワーの歴史に触れるようになってからである。月並みな言い方だが、彼もまた時代の子であった。彼が活躍した時代は、ブラック・パワーの高揚期。マルコムXと出会い、ブラック・ムスリムに入信するなど、彼は単なるスポーツ選手というだけでなく、ノーマン・メイラーの言い回しを借りれば、黒人大衆の「民族的抵抗者」としての夢を仮託されていったのである。そして、彼自身、その夢を意識的に、積極的に引き受けたのだった。
「白人はもう黒人にリングの上で勝てないから、そのかわりにアンクル・トム(白人的黒人)をおれにぶつけようとしている。しかし、おれはいつでもそいつをぶちのめしてやる!」
「黒は最高なんだ!」
ベトナム戦争への兵役拒否は、黒人大衆のみならず、世界の多くの人々に勇気を与えた。「俺にはベトコンと争ういわれは無い」、この単純明快なメッセージの中に、彼がどれだけの覚悟を込めていたか、想像に難くない。タイトル剥奪から復帰までの道程は多くの人々の知るところである。
やがてブラック・パワーも嘗てのような大きなエネルギーを失っていった。だが、現在も散発的に黒人虐殺事件が発生するなど、アメリカ社会の抱える人種問題が決して解消されたわけではない。とはいえ、アトランタ・オリンピックの聖火を掲げるアリの姿には、もはや抵抗者としての面影は存在しなかった。別に「体制に取り込まれた」などと、彼を責めるつもりは無い。英雄はその役割を終えた。あとは次の世代の仕事である。

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のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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