時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
映画「カルロス」(監督:オリヴィエ・アサイヤス)をめぐる、とりとめのない印象
「カルロス」とは、イリイッチ・ラミレス・サンチェスの活動名。ヨーロッパで様々な事件を引き起こした、ベネズエラ出身の活動家である。
映画はシオニスト資本家の暗殺未遂から始まり、日本赤軍によるハーグ事件の後方支援、その後警官殺害を経て、OPEC襲撃、TGV爆破、冷戦後は各地を転々とした後、スーダンで拘束に至るまでを描く(現在ラ・サンテ刑務所に収監中)。バックに流れる、ニュー・オーダーのDREAMS NEVER ENDがなかなか心地よく、テンポの良いアクション映画としても楽しめるだろう。
主人公の自己顕示性と、男根主義的メタファーについては多くの人が指摘しているのでここでは繰り返さない。ここでいう自己顕示とは、「俺はこれだけ凄いことをしでかしたんだ」と、冒険者たる自分を誇示するというものである。
自己顕示欲の強い男だったのは事実なのだろう。だが、それだけでは彼の人間性の一面しか捉えていないような気がする。

勿論、ロマンを求める心情が無かったらこんな活動などやっていられない。ゲバラやカストロに憧れて活動を始める人間はどこにでもいるし、カルロスもその例外ではないだろう。
日本赤軍やRZ(革命細胞)の青年たちが向こう見ずな活動を続けたことは多くの人々にとっては想像を絶することに違いない。彼らはゲバラになりたかったのだ。第三世界民衆のためならいくらでも命を捨てられる、ここで人生が終わることなど何ほどのことでもない、あるいはそんな事は考える必要はない、ということだろうか。こうして命知らずが出来上がる。命知らずになれるということは、汚れ役も辞さないということである。人名軽視、同士に対する専制的な姿勢などもここから発生する。
社会を動かすのは名も無き民衆である。虫けらのように這いつくばってみじめにその日を暮らし続ける大多数の民衆こそが主人公である。彼らは時としてエゴイスティックで、意地汚く、醜悪ですらあるだろう。
私はゲバラという人は、ロマンに逃げたのではないかと思っている。
勿論、活動家たちも最終的には「全てこれら人民のため」であり、死地に追いやった同志たちが「かけがえの無い存在」ということを理解している。矛盾しているように見えるが、これらは両立しているものである。

資本主義に対し、武力によるゲリラ戦で対抗することは、美しく見えるが勝機は無い。敗北は確定している。輝かしい理想を掲げた国際主義は、時の経過と共に政治機関の傭兵活動と化し、その栄光を失墜させる。男根主義者カルロスも睾丸の病に罹り、司法官憲の手に委ねられる。ここで彼らを嗤うことは愚かである。この嘲弄には社会変革の不可能性という罠が潜んでいる。変革の運動は不可避的に敗北するという狡猾な罠が。
「キネマ旬報」の「カルロス」評において、足立正生はそうした「変革の不可能性」というメッセージを超えた作品を作りたいという旨を語っていた。私はというと、華々しい活動に命を賭けるつもりはさらさらないし、また、大掛かりな変革の夢を語る活動家が、ロクでもない人間性の持ち主であるという例をいくつも知っている。要は、付き合い切れねえよ、という事だ。
目下の私の関心事は、むしろ「人間」に関する事柄にある。

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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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