時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
野坂昭如ノーリターン
野坂昭如が亡くなった。巷では「火垂るの墓」その他の戦争童話の作者、「おもちゃのチャチャチャ」、「ハトヤ」のCMの作詞、「朝生」での論客としての顔ばかりが強調されているが、私にとっては、特異な文体と作風を持った小説家であった。

私が読んだ長編は「騒動師たち」「てろてろ」の二作にとどまる。しかし、そのアナーキーで破天荒な作風は実に私の心に残った。
前者は釜ヶ崎のアンコが各地で騒動を巻き起こし、米国から帰ってきた後、全共闘の学生達に代わって安田講堂に立て籠もるというもの。すったもんだの挙句の果てに東大は焼け野原となり、軍歌「兵隊さんよありがとう」のパロディで締めくくるラストは、実に痛快だった。焼け跡は、野坂文学の原風景である。
後者は、より一層石川淳の影響が強まった作品で(野坂は石川淳を敬愛していた)、奇人変人たちが終結し、テロ活動を敢行するというものだった。テロだから「てろてろ」。明快で清々しいタイトルである。だが、こちらの方はどういうわけかストーリーを殆ど覚えていない。ラストは確か、膣内に隠した爆弾が、愛液で不発となり、自爆攻撃に失敗するというものだった。「てろてろ坊主てろ坊主、明日嵐になぁれ」の替え歌は、このブログでも何度か引用させて貰っている。
その後、私の身辺も慌しくなったため、野坂作品に触れるチャンスが失われてしまったが、一人の作家として気にかかる存在ではあった。「ユリイカ」で野坂の特集があれば購入したし、つい最近もエッセイ集を刊行するなど、健在振りをアピールしていたことを私は知っている。そこには昨今の社会情勢に対する危機感が縷々綴られていた。そうした矢先の訃報である。うまくいかないものだ。
戦争の語り部云々という月並みな台詞は今は語りたくない。野坂昭如は野坂昭如全集の中にあり。わかってはいても、騒々しい人がいなくなるのは、やはり寂しい。またひとつ、世の中がつまらなくなった事だけは確かである。

※尚、「四畳半」裁判の顛末は私は詳らかにしない。無論、一通りの知識はあるが、ここで本格的に論じ立てるだけの充分な情報を持たないので、割愛する。
スポンサーサイト

テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://noir731.blog106.fc2.com/tb.php/1486-58e01b06
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



のわーるのつぶやき



最新記事



カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -



最新コメント



過去記事のアーカイブ



カテゴリ



最新トラックバック



2010年「国際ジュゴン年」



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



RSSリンクの表示



全記事表示リンク

全ての記事を表示する



FC2カウンター