時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
読み散らした本のことなど
さて、またも赤本読書録である。たとえ一言でも、何らかの感想を記さなければ気が済まない性分なので、ここに書きとめておくこととする。

黒史郎「怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花」
黒史郎「未完少女ラヴクラフト」
田中啓文「大魔神伝奇」
黒史郎「未完少女ラフクラフト2」
黒史郎「怪談撲滅委員会 死人に口なし」 

「怪談撲滅委員会」はコメディタッチで描かれた、幽霊退治のホラー小説。古野まほろのポップな小説の文体を思い出せば、大体の雰囲気はおわかりと思う。一応シリーズ物であり、まだ続きそうな気もするのだが、二巻目の「死人に口なし」で話は一段落しているので、このまま終幕でもいいかもしれない。
これに対して、放り出されたら困るのが「未完少女」である。こちらの小説は完全にラノベを意識したものであり、意図的にしまりのない文体で書かれた作品である。だが、ストーリー構成は古典的な冒険小説であり、ラヴクラフトの作品を下敷きにした二次創作として成立している。このこだわりは相当なもので、ラヴクラフトである必要がない「ニャル子さん」とは趣を異にしている。ボルヘスの「バベルの図書館」や「砂の本」にそれとなく言及したくだりにはにやりとした。問題は、二巻目のラストで予想外の急展開を見せたまま、話が中断していることである。まさかこのまま「未完」で終わるつもりではあるまいな。続編の刊行を望む。
「大魔神伝奇」は、クトゥルー物の二次創作シリーズ、「クトゥルー・ミュトス・ファイルズ」の一冊である。
内容は、島原の乱で、天草四郎たちが邪神の力を借りて叛乱に臨む話。序盤は邪神側が淀君の妄執と結託し、完全に悪玉として描かれるのだが、話が進むにつれて、読者としては邪神側を応援したい気持ちにさせられる。これに崇徳院達の恩讐が加わって、かなり混沌とした流れになるのだが、混乱を収拾させるために、ヒロインの巫女が大魔神=オオナムチを呼び起こす。いうまでもなく、大映の特撮映画でおなじみのヒーローである。最終的には史実どおりの結果に収束するのだが、そこは一捻り欲しかったように思う。
邪神の位置付けとしては、諸星大二郎「西遊妖猿伝」の無支奇(斉天大聖)とかなり近い。こちらは民衆を解放する荒ぶる神として現れるが、邪神の方は大元がクトゥルー神話なので、それ自体はそこまで明確な意図は持たない。だが、邪神と結託した諸々の勢力と、民衆の怨念が結びついていくにつれ、邪神の有様は次第に諸星漫画の「斉天大聖」に近づいていく。
大魔神映画は観たことがないのだが、これ、本来は大魔神が担う役割ではなかろうか。このあたり、いろいろ含みがあるようにも受け取れ、なかなか興味深く感じた。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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