時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
探偵小説の夜
ここ数日の読書ノートから。

・古野まほろ「天帝のはしたなき果実」を読む。
二つの殺人事件を扱ったミステリー小説。この人の作品は中井英夫と小栗虫太郎の影響が濃厚で、本作も独特のよい雰囲気を持った一編である。「あっは!」という笑い声は埴谷雄高からだろうか。文体では堀口大學を意識した節がある。
吹奏楽部の音楽用語が全く頭に入ってこないので、そこは少々忍耐を伴う所だった。どちらかというと「セーラー服と黙示録」シリーズのほうが、カトリックの宗教的禍々しさ(勿論フィクション上のカトリックだが)を感じ取れて面白かったのだが、こちらもなかなか読ませてくれる。主人公の正体など、続編に色々含みを持たせているので楽しみである。

・古野まほろ「背徳のぐるりよざ」を読む。
「ぐるりよざ」とは、長崎の隠れキリシタンの間で伝えられてきた聖歌である。グレゴリオ聖歌「O GLORIOSA DOMINA」が元となっているらしいが、本編の内容とは直接関係が無いため詳細は省く。あくまでも全体の雰囲気を象徴する言葉と理解すればよい。
さて、本作は前述した「セーラー服と黙示録」シリーズの二作目だが、こちらは前作の前日譚にあたる。陸の孤島となり、戦時中から外界と隔絶されていた山村が舞台。この地に迷い込んだ主人公たちが、連続殺人事件に巻き込まれる。一読すればわかるように、「八つ墓村」をはじめとする横溝正史の作品をオマージュした作品で、「よし、わかった!」というあの決め台詞も登場する。
「正直村と嘘吐き村」という有名な論理パズルを巧みに取り込んだ一編であり、モーセの十戒の使い方もなかなか見事だった。だが本作の魅力は謎解きよりも、「カトリック(あくまでもフィクショナルな)」と土俗的因習のグロテスクな混交による、独特の作品世界を構築して見せている点にある。神学的ペダントリーも、うまくそれを補強している。
とはいえ、本作は決して小難しく込み入ったミステリー小説ではない。「天帝」シリーズにしてもそうなのだが、「私にまたキュベレイで闘わせるのか!」「ヴァチカンに下品な女は不要だ」等の台詞には吹き出してしまった。ガンダム、エヴァ、ヤマト2199等の小ネタをあちこちにちりばめているので、探してみるのも一興だろう。

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Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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