時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
憲法を生きる~奥平康弘逝く
奥平康弘氏が亡くなった。まさに、日本国憲法を思想として生きた人だった。折りしも戦後最悪の政権が、憲法をぶち壊し、この社会を滅茶苦茶にしようとしている最中である。こんな重要な時に斃れたのは、ご本人もあまりにも無念だったと思う。
私が初めてこの人の名に接したのは、10年以上前、護憲運動のシンポジウムのときだった。当時の私は専門的な憲法学には疎かったのだが、ご高齢にもかかわらず、積極的に「改憲」阻止へ向けて動き出そうとする氏の姿は極めて印象的だった。
次に彼の名を耳にしたのは松文館「蜜室」裁判の時である。補足するが、この人の専門分野は主に「表現の自由」、そして「知る権利」にまつわるものである。よって、刑法175条との対決は決して余技ではなく、まさに正面切って対決すべき重要な課題としてそこにあった。彼はまさに、真摯な姿勢をもって、マンガ表現の擁護に尽力したわけである。マンガファン・アニメファンは決してこのことを忘れるべきではない。
無論、「蜜室」裁判にも見られるように、国家権力を相手取った憲法訴訟の道程は決して平坦なものではない。憲法裁判は連戦連敗だと彼自身自嘲気味に記しているが、それでもこうした人達の熾烈な闘いの蓄積の上に今日の社会がある。つまり「不断の努力」によって私達の民主主義は培われてきたのである。負けてばかりではあれど、決して無駄な闘いではなかったのである。

奥平氏は多くの著述を残しており、私の手元にも10冊程度の著作があるが、やはりまとまった著作集の刊行が望ましい。
一般的に法律家の文章はセンテンスが異常に長く、何度繰り返し読んでも意味不明なものが少なくない。知の秘教主義というか、わざと門外漢に理解できないようにしているとしか思えないのだが、そんな中、奥平氏の文章は実に平易で取っ付き易いものとなっている。法学者には珍しく、独特の文体を持った人で、著者の息遣いが感じられるのも心地よい。
この人から学ぶことは、まだ数多くある。そして私達は、尚も走り続けなければならない。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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