時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
遅ればせながら
これまで延び延びになっていた映評を記す。

まずは「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」(監督・脚本:出渕裕)。
舞台はイスカンダルからの帰路。ガミラスとの停戦後、コスモ・リバースを搭載したヤマトは、新たなる敵対者・ガトランティスからの攻撃に晒される。辛うじて逃亡に成功したヤマトは、未知の惑星に到達する。調査に向かった古代達は、そこでガミラスの敗残兵たちと奇妙な共同生活を行う。ガミラス人は、かの七色星団会戦の生き残り、フォムト・バーガーの一行であった。
最終的に全てはアケーリアスの末裔たる異能力者・ジレル人による、集団幻覚であったと判明する。ジレル人は迫害を恐れ、このような自己防衛策を行っていたのだった。

本作のテーマは、対立・恩讐を乗り越えた、和解と相互理解である。戦争の当事国であり、実際に矛先を交えたヤマトクルーとバーガー達、ガミラスから差別と迫害を受けてきたジレル人達。ストックホルム症候群という陳腐な概念が人口に膾炙しているが、共に生活し、相手の顔が見えるようになれば、そこに連帯感が生まれることは何ら不思議ではない。この輪にガトランティスが加われば完璧であるが、ストーリーの都合上、彼らを悪者のままにせざるを得なかったようだ。まあ、短い上映時間のことで、そこは致し方ない。
やたら漢語を振り回す、このガトランティスのイメージは、匈奴などの騎馬民族の姿が意識されていると思われる。古代中国王朝にとって騎馬民族は野蛮な脅威であったが、ガトランティスにも、蛮族としてのイメージは戯画化して投影されている。

旧ヤマトシリーズは、思い出すと悲しくなるような無残な続編群が存在するが、本作はそれらを丁寧に作り直したような気がする。本来あるべき姿で、外伝を呈示して見せたのだ。そう思うと、実に感慨深い。改めて製作スタッフに感謝を贈りたいと思う。


「楽園追放」(監督:水島精二 脚本:虚淵玄)
近未来社会、人類は高度に管理された電脳社会の住人と、外部のアナログな地上社会の住人とに分断されている。主人公アンジェラは電脳社会の調査官であり、ある日、外部からのハッキングを調査するために地上へと降り立つ。
人格を持ったAIたる「フロンティアセッサー」に出会う。フロンティアセッサーは自らの力で外宇宙へと飛び立つという壮大な夢を持っており、一連のハッキングはその同行者を募るためのものであった。

「マトリックス」的な管理社会と、「オネアミスの翼」的な、宇宙への旅立ちストーリーを組み合わせたような作品だが、虚淵にしては素直で好感の持てる作りとなっていた。主人公はフロンティアセッサーに協力したため、電脳社会という楽園/牢獄から「追放」されるが、むしろ「解放」のイメージがそこには存在する。つまり、地上からの解放と、「楽園」からの解放が重ねあわされるのだ。観終えた後になかなか爽やかな余韻を残す、好作だった。


「ファースト・スクワッド」(監督:芦野芳晴 脚本:ミーシャ・シュプリッツ、アリョーシャ・クリモフ)
少し前の作品だが、「魔法少女隊アルス」や「クロスアンジュ」の芦野監督の作品ということで鑑賞した。元々「アルス」が好きだったので、その軌跡を確かめたく思ったのである。
舞台は大祖国戦争時代のソ連。主人公ナージャは超能力者の特殊部隊で活動する少女であったが、空爆で記憶の一部を失ってしまう。一方、ナチス・ドイツは中世の騎士「ヴォルフ男爵」を死後の世界から呼び寄せ、戦局を優位に進めようとしていた。部隊に復帰したナージャは、戦没して冥界にいる同僚たちと協力し、ナチスの野望を阻もうとする。
ナチスとオカルトを結び付けた、ありきたりなアクション・ストーリー。とはいえ、幾分駆け足気味ではあるものの、なかなか面白い。レニングラード攻防戦、シベリヤ物語、鏡、アンドレイ・ルブリョフ、僕の村は戦場だった等々、ロシア映画をオマージュしたような場面があちこちにあり、実に愉快である。
そう思っていたのだが、この作品、やたらアニメファンからの評判が悪い。どうしたことか、私の感覚がおかしいのかと、再度友人と一緒に視聴した。結論は、「詰め込みすぎだが、それ程悪いものではない」である。
友人「この手の作品を観る人は、歴史の知識を持たない人が多いので、そこで判りにくかったんじゃないか?東部戦線とか、普通知らないから」
私「いや、でも世界史の教科書程度の知識があれば判るんじゃない?」
友人「だから、それが無い人が多いから」
私「…」
ドストエフスキーやレールモントフなどのロシア文学にかぶれて以来、ロシア・ソ連映画を熱心に見てきたクチなので、何の疑問も無く観てしまったのだが、上述の意味であまり一般向けではないらしい。ちなみにDVDでは、登場人物の声は全てロシア語だった。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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