時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
銀幕のゲリラ戦
期間が開いてしまったが、先日ポレポレ東中野にて催された、若松孝二特集の話をしよう。結局観たのは「血は太陽よりも赤い」「ある通り魔の告白」「日本暴行暗黒史 異常者の血」のみだった。資金と時間の都合である。致し方ない。またの機会を待とう。若松の特集はそれなりの頻度で行われているし、そのうち発掘されるであろう行方不明作品とともに、観る機会もあるだろう。

・「血は太陽よりも赤い」 これは素晴らしい。助監督の足立正生が大チョンボをやらかしたことで有名な作品で、寺山修司が絶賛したことでも知られている。
主人公は受験を控えた高校生。ある日、父親の組合潰しが原因で恋人との別れを余儀なくされる。その後、家を飛び出した主人公は、フーテン共同体での怠惰な日々を過ごした後、ヤクザに加入しようとする。だが、ヤクザ達が、嘗ての恋人を破滅させた一味と知り、幻滅。組員達を殺害し、逃亡した主人公は、暁の陽光が差し込む中、「俺は太陽になってやる」と叫ぶ。
複数の登場人物の動向が、結末に向かって勢いよく収束していく様子が素晴らしい。かちりと決まった、名作である。

・「ある通り魔の告白」 詩人の福間健二が脚本・主演を勤めた作品。まともに恋愛も出来ず、悶々とした主人公が、強姦と殺人を繰り返していくというもの。今風に言えば、リア充に対する憎しみをひたすらぶつけ続けていくわけである。リア充/非モテを巡るこの確執は、今に始まったわけではなく、この頃から既にテーマ化されている。
「バカにしやがって!」と、主人公が女を襲撃する姿は、若松作品ではお馴染みだろう。見下され、蔑まれ、笑いものにされる主人公が、この世界に対して牙を向くのだ。正義もへちまもあるものか。武器を取れ、憎しみを持て。若松映画のテロルが、ひたすら爆発する。

・「日本暴行暗黒史 異常者の血」 明治時代から現代に至るまで連綿と続く、暴行殺人鬼の血統を描いた作品。足立正生が脚本をものし、天皇制を意識して作られたというが、私の見る限りそこはあまり感じられなかった。むしろ、抑圧され、蔑まれたものの怨念が延々と社会を呪縛する姿として映じた。足立がそこまでを含めて天皇制と重ね合わせているとすれば、それはなかなか意味深であると思うが、そこにこだわる必要もあまり無いかと思う。
若松が評価するように、かなり練りこまれた脚本で、個々の時代のエピソードが有機的にうまく繋がっている。この構成力は見事だと思った。
(尚、個人的には松本零士の「無限海漂流記」を思い出した。あちらは、差別され、抑圧された者の血の系譜を描いたSF作品である。最後に結末を加筆した結果、台無しになった感があるのだが)

足立正生のトークショーでは面白い話が聞けた。「若松は自分の世界を作ることにしか興味がないんだ、あの男はリアリズムなんか、正直どうだっていいんだ」という指摘には、さもありなんという印象を受けた。
例えば、「キャタピラー」では評判の悪い嘘が幾つかある。具体的には、あんな状態の兵士を帰宅させるわけがないということ、いくら武勲を立てたとしても少尉にまで昇進するのは無理があるということ等である。「実録・連合赤軍」でも「関東派」という、実在しないフラク名が登場した。
悪い例を幾つか挙げたが、なりふり構わず自分の世界を作り上げるエネルギーが、若松の魅力でもあった筈である。このある種のふてぶてしさについては、もっと評価されていいだろう。
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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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