時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
血の忘却
ポレポレで映画「靖国・地霊・天皇」(監督:大浦信行)を観る。「終戦」の日にちなんで、入場無料だったのには驚いた。急遽決まったそうで、なかなかの心意気だ。
映画は右派陣営の弁護士・徳永信一と左派の弁護士・大口昭彦へのインタビューに、金満里の舞踏、さらに様々なイマージュを挟み込む形で描かれている。在特会の桜井の演説シーンには失笑してしまった。
興味深いのが徳永弁護士の発言である。彼は独特のねじれたロジックから現憲法を擁護するのだが、インタビューの中でユニークな揺らぎを見せる。そればかりか、時としてその論理は監督とのニアミスすら発生させる。
立場的には靖国支持の典型的な「右」で、苛立たしい限りだが、被写体としてはなかなか面白い存在ではないかと思う。

印象に残った部分を挙げよう。映画の中で大浦監督は、「靖国の地下には厖大な血の海が横たわっている」という意味の発言をする。そこには大量死がうずもれているのだ。嘗て目取真俊は靖国を「忘却の装置」と喝破したが、この映画でも、靖国の存在がその地下に横たわる血の海の存在を忘却させている、と語られる。
反シオニズムのユダヤ人映画監督・エイアル・シヴァンはイスラエルについて、「記憶することが忘却することのプロセスになっている」と指摘した。つまり、ユダヤ人を記憶することが、パレスチナ人を忘却することに繋がっている、ということである。同様のことが靖国にもいえそうである。「英霊」を記憶することが、地下に眠る夥しい血の海の存在を忘れさせる。
もっといえば、「美しい国」とやらにまつわる記憶が、沖縄を忘れ、広島を忘れ、長崎を忘れ、福島を忘れ、アジア各国に齎した災禍を忘れることに繋がっている。必要なことは、こうした忘却の力学から、これらの記憶を私たちの手に奪還することである。

「9.11-8.15 日本心中」などと比べると、奔放さが少ない。これは「日本心中」が針生一郎といういじくり甲斐のある素材を扱っていたことに起因するのだろう。本作での監督の姿勢はひたすらストレートである。
上映はまだ続くようなので、一度御覧いただきたい。なかなかの力作である。
スポンサーサイト

テーマ:最近見た映画 - ジャンル:映画

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://noir731.blog106.fc2.com/tb.php/1393-ad8038af
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



のわーるのつぶやき



最新記事



カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -



最新コメント



過去記事のアーカイブ



カテゴリ



最新トラックバック



2010年「国際ジュゴン年」



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



RSSリンクの表示



全記事表示リンク

全ての記事を表示する



FC2カウンター