時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
大西巨人逝く
初めて大西巨人の名を知ったのは、埴谷雄高の評論集だったと思う。軍隊小説の書き手としての大西の存在は、その特異な名と共に、少年期の私の脳裏に印象付けられた。後に、「真空地帯」をめぐる論争の存在を知り、「軍隊は真空地帯ではない」という命題は、極めて気にかかるものとなった。
「神聖喜劇」が筑摩書房から文庫化されたのは、それから数年後のことである。この作品を貫く主題は、軍隊は徹底した法治主義による、合理主義的な体系である、というものだった。主人公はこの軍隊の論理性を逆手に取り、果敢に抵抗を試みる。
大西によれば、真空地帯的な方法でこれを「打ち砕く」ことを期待するのは、ヤクザや無頼漢に世直しを期待するようなものである。一口に言えば、敵は馬鹿ではない、舐めてかかるな、ということだ。
その独特のトリビアリズムのため、後半は飛ばし読みに走ってしまったが、終盤の模擬死刑の場面は鮮烈だった。ここで作者は、軍隊の論理の限界を呈示しているように見えたがどうだろうか。もっというと、村崎古兵に代表される素朴な人間主義は、決して馬鹿に出来たものではない。

うろ覚えの感想はこの辺で打ち止めにする。私が読んだ大西の小説は「迷宮」「三位一体の神話」「縮図・インコ道理教」、あとは「五里霧」「二十一世紀前夜祭」といった短編集くらいか。これに対して、評論の方はあまり感心できない。凡庸なリゴリズムがどうしても顔を覗かせてしまうからだ。特に性に関するテーマになると、どうもいただけない。向こう側の人だな、と思うことも屡々だった。
彼は一時期、ポストモダンの輩共からやたら持ち上げられたことがあるのだが、そんなことはどうでもいい。ファシズムがいよいよ到来した今日、一番意見を聞いてみたい人物の一人だった。本人も、ここで逝くのはあまりにも心残りだったような気がしてならない。
スポンサーサイト

テーマ:本読みの記録 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://noir731.blog106.fc2.com/tb.php/1349-8e335516
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



のわーるのつぶやき



最新記事



カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -



最新コメント



過去記事のアーカイブ



カテゴリ



最新トラックバック



2010年「国際ジュゴン年」



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



RSSリンクの表示



全記事表示リンク

全ての記事を表示する



FC2カウンター