時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
夢の埋葬
船戸与一「南冥の雫 満州国演義8」読了。
舞台は1942年、ミッドウェイ会戦に始まる。結果は周知の通りだが、報道は「大勝利」と一色に染まり、日本人達は歓喜に沸き立つ。「ブロックされている」のようなものだ。だが、こうした弥縫策がいつまでも通用する筈がない。そこで権力は内地、満州を問わず、いたるところに監視の目を光らせていく。真実ほど権力者に都合の悪いことはない。
ストーリーはやがて、ガダルカナル、ふ号作戦、そして大陸打通作戦とインパール作戦へと、惨たらしい破滅への道を辿って行く。作品は満州国演義というより、さながら大東亜共栄圏演義の様相を呈している。
満州での動きが少ない分、大部分が登場人物の会話によって、状況が説明される。小説としては邪道かもしれないが、船戸による近代史の解説を読むような気持ちでいるといい。これはこれで充分読み応えがある。
例外は主人公の一人、敷島次郎の動向を追う箇所である。彼はビルマに赴き、囚人部隊を率いてインパール作戦に参加する。食料の欠乏、マラリアとアメーバ赤痢、生きながら蛆にたかられ、東条や牟田口への呪詛を吐きながら死んでいく兵士達。死体はあっという間に骨だけになることから、本書ではこれを虫葬と表記している。
シリーズもここまで来て、主人公四兄弟のうちの一人が最期を迎えることになった。大陸浪人から日本軍の工作員となり、夢を失いながら手を汚していった敷島次郎。彼が最期に目蓋に浮かべたのは、馬賊として駈け回った広大な満州の風景だった。
作者が意識しているのかどうか定かではないが、本作の東条英機が安倍晋三の姿とダブって仕方がない。「東条幕府でも作ったつもりか」、私達も安倍幕府気取りかと散々批判しているところだ。
本作は次巻で完結予定という。ちらりほらりと背景に登場する731部隊が表面に登場することがあるのか、目が離せない。

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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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