時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
テロルの季節
アナトール・フランス「神々は渇く」読了。
舞台は恐怖政治時代のフランス。周辺国からの干渉戦争がたけなわの頃である。
主人公のエヴァリスト・ガムランは、ちゃきちゃきのジャコビニスト。政治的潔癖主義の彼は、高邁なる理想を達成せんとして、陪審員として次々と被告達をギヨティーヌ(断頭台)に送り込む。
祖国を救え!子供達に、自由で幸福な未来を。そしてそのために、僕はこれからも手を汚す。僕が兇悪なのは君達が幸福になるためなのだ!君達が、喚起の涙にくれるために!そのためには、裏切り者共の血が流されなくてはならない。去年までは祖国は無惨に侵略され、我々にはボロをまとった敗残兵しか残されていなかった。今や我々は攻勢に立ち、世界に自由をもたらそうとしている!聖なる恐怖政治よ!愛すべきギヨティーヌよ!
裁判の略式化もそれに拍車をかける。見知った人、世話になった人々もまた、次々に断頭台に送り込む。例外など無い。
「人は悪意が無くても彼らと違った考え方をする、ということは彼らには考えられないことだったのである」
革命いまだ成らず。干渉戦争も終わっていない。眠れない日々を過ごす中、ガムランは次第に<怪物>となってゆく。
やがてテルミドールがやってくる。「清廉な人」ことロベスピエールをはじめ、革命の指導者達が次々と逮捕され、人々の悪罵を受けながら、ガムランもまた断頭台に向かう。かつては王党派や穏健派を罵り、「マラー万歳」と唱えた同じ口が、ジャコビニストたちを罵倒するのである。
「正義はハタ迷惑なものだ」と言ったのは鶴見俊輔である。これに異存は無い。だが、「正義」を渇望し、賞賛した人々が、次の日には手の平を返すのは痛ましい。他人事ではない。戦時中、「貴様!それでも日本臣民か!」とビンタを食らわせていた人間が、敗戦後、ぬけぬけと「私は元々民主主義者で・・・」と語りだした例を私達は知っている。

こうした古典小説を今更レビューするのもどうかと思うが、当時のフランス社会の雰囲気をよく描き出した傑作だった。どちらに加担するかという問題ではない。或る時代、状況において、人間がどのように振り回され、何を選択し、どのような運命を辿っていくのか、を活写することが主題なのである。
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Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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