時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
大地の歌
午後から用事があったため、朝一の回で映画「標的の村」(監督:三上智恵)を観る。
序盤は今村昌平の「神々の深き欲望」を思わせる家族生活の風景が描かれる。神話的ともいうべき世界。だが、ここにも基地問題が密接な出来事であることが明らかにされる。米軍基地再編、オスプレイ配備。そして抗議行動に対するスラップ訴訟といった具合に。
そして問題の米軍基地抗議に参加した男性の発言から、「ベトナム村」の記憶が辿られる。ベトナム村といっても殆どの人には馴染みがないだろう。ベトナム戦争の頃、米軍は沖縄で対ゲリラ戦の軍事訓練を行うことを決定した。そのため、高江市民を仮想のゲリラ部隊として徴用し、敵役として訓練に協力させたのである。返還前の沖縄は、今日にもまして「何でもあり」の状態だったことが窺われる。
その後、抗議に参加する地元の人々の思いが切々と語られ、また、ニュースを聞いた沖縄県民が次々と集まってくる様子が描かれる。親から子、地域から地域へと闘いが繋げられる様子に、沖縄闘争の層の厚みを見る思いがした。
座り込みによる抵抗と、排除の様子は私たちが動画配信で何度も目にした光景である。暴力的な排除が強行される中、安里屋ユンタが歌われる場面には目頭が熱くなった。
情勢の見通しは明るくない。本作で「私たちは座り込みによってB52を追い出した」との発言がなされていたが、今日の時代は、ベトナム戦争時よりもさらに悪化してしまっているのかもしれない。リベラル勢力はほぼ全滅し、見てくればかり勇ましいタカ派的な言説が幅を利かせる昨今である。

「ドキュメンタリーは作家性の枯渇である」とはアラン・バディウの世迷言であるが、作家性のないドキュメンタリーが創造性の枯渇を意味することは事実だ。漠然と撮られただけの、垂れ流しドキュメンタリーがいかに多いことか。
まず、ドキュメンタリーを和訳すれば記録映画ということになる。ならば、作品としてそれを提示する場合、「自分はどう思うのか」が製作者に対して一層問われることとなる筈だ。「創」の記事で三上監督は「両論併記は公平性の成りすましである」、と指摘した。正しい。当たり障りのない「中立性」など犬にでも食わせてしまえ。


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この記事に対するコメント
DVD化も無理なのでは?
のわーるさんと僕がほぼ同時期に観た初めての作品ではないだろうか?

えぇ、観てきましたよ!ポレポレ東中野で「標的の村」。代休取って、10日に!

高江の人たち、占領時代にも「ベトナム村」という非人道的な仕打ちにあっていたなんてショックだった。しかも枯れ葉剤使って更地とは・・・絶句。

政府によるスラップ訴訟のターゲットには当時7歳の女児も含まれており、残忍極まりないそのスキームは、今の安倍自民政府なら当然踏襲するものと予想される。提出予定の特定秘密保護法(秘密保全法)が成立すれば、本件など幾らでも秘密裏にやりたい放題、特定有害活動(行動)と見なせばそれを理由に逮捕され、ドキュメントした琉球朝日放送は間違いなく潰されるだろう。

基地前抗議行動もビデオカメラによる可視化のお陰で、公妨がなかった(しかし、排除のされ方が酷かった)。現在、Ustreamやツイキャス等で、一般市民が撮影者兼記者をこなす事が可能になり、生中継も出来る程テクノロジーは進化したが、特定秘密保護法は、それらの退化(劣化)しか産まず、行く行くこの国は滅びて亡くなってしまう事しか予想されない。

残る被告人は、2人、うち一方の男性家族の子供たちの笑顔がせめてもの救い(内1人が7歳で被告人に)だった。上映時間前の館内は閑散としていたが、上映後明るくなって周りを見渡すと結構な数の客入り、泣いていた客が多く、自分も怒り涙を流してしまった。

意外にも客層は、若者中心でした。

昨日は、春に知り合った、某女流ピアニストのライブ。のわーるさんにも聴かせてあげたい程、素晴らしい内容でした(チケット渡せなかった事を後悔)。終了後はその女流ピアニストも含め仲間たちと酒を酌み交わして士気を高めました。

それで疲れてしまったのかも知れませんが、今日は、1日丸ごと休みに変更。

明日のLOVEデモは、遠すぎて行けませんがこの情勢下では、もしかして最後のLOVEデモになるかも知れません。
【2013/10/13 23:44】 URL | ダムド #iu8Dq9Ko [ 編集]


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Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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