時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
まぼろしの映像
下北沢で、「恐るべき遺産 裸の影」(監督:若松孝二)を観る。
何でこんないい作品が埋もれてしまったんだ?というくらい、良い出来栄えだった。
経緯を記すと、本作はフィルムが行方不明で、半世紀もの間幻の作品となっていた。監督没後、若松プロの人たちがフィルムセンターから見つけ出してきたのがこの作品とのこと。
劇団ひまわりの子役達の入浴シーンがあり、初公開時には児童福祉法違反として、散々叩かれた曰くつきの映画である。実際に観てみると、監督本人の言うとおり「どうってことない」シーンなのだが、「はだしのゲン」の一件もあるのでまた色々と蒸し返されないか心配だ。
フィルムは傷だらけで、画面の乱れがかなり多い。手間をかければデジタル修復も出来そうな気がするが、予算が無いから仕方ないか。

内容は監督が生前話していたものとだいぶ異なる。
幸福な家庭に育ったバレー部所属の女子高生。或る時期を境に原因不明の体調不良に襲われるようになる。
そんな中、誕生日の夜に「実は今の両親は本当の親ではなく、伯父夫婦であり、本当の両親は原爆投下が原因で亡くなっている」と告げられる。被爆二世であることを知った主人公は、自分が原爆症ではないかと不安を抱き、自暴自棄になっていく。
主人公の病気が決定的なものとなった時、周囲の理解が広まり、ギクシャクした関係が漸く解けていく。バレー部の合宿所を訪れ、仲間達と再び打ち解けていく主人公。だがその晩、彼女は合宿所を抜け出し、海に身を投じていく…

お分かりのように、かなり生真面目な反核青春映画だ。前述のスキャンダルの最中、映倫からは「青少年向きに推奨しようかと思ったほどの作品だ」との証言が得られている程である。特に広島の原爆資料館の場面は、新藤兼人の「原爆の子」よりも長く時間を割きながら描かれていたように思う。土門拳の写真集の扱い方といい、若松孝二はこの頃から直球勝負だ。
勿論、ヌードモデルのシーン、強姦未遂のシーンなど、「性」を描き続けた若松らしい場面も随所にある。しかし、最も若松的なのは最後の海辺のシーンだろう。海を描くことに拘った若松孝二にふさわしい、見事な場面だった。

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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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