時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
夜と霧の街
大島渚が亡くなった。若松孝二が亡くなってから、何か嫌な予感はしていたのだが、現実のものとなってしまった。実相寺昭雄と佐々木守、深作欣二と笠原和夫など、不思議と近しい人の間同士では連鎖的な訃報が生ずるのである。

「愛と希望の街」では階級対立の非和解性を鮮明に打ち出し、「日本の夜と霧」では、徹底した討論を中心とした、類を見ない政治劇を描いて見せた。「日本春歌考」「帰ってきたヨッパライ」「絞死刑」では、在日韓国・朝鮮人というテーマに大きく切り込んだ。私はTVドキュメンタリー「忘れられた皇軍」をいまだ観るにいたっていない。内容を考えれば、今日極めて重要な作品であるはずなのだが。

以前も記したと思うが「夏の妹」での沖縄批判はあまりにも性急だったと思う。大島達は観光地化した沖縄に我慢がならなかったのだろうが、その内に潜むポテンシャルを測り損ねた。本人も忸怩たるものがあっただろう。「我々は沖縄に負債を負っている」という彼の言葉は、今も尚、私達の肩にのしかかっている。

私が大島作品で最初に観たのは「東京戦争戦後秘話」だったろうか。古い記憶であるのと、屈折したストーリーである事から、ちょっと感想を述べる事が出来ない。「黒寛の社探」という業界用語が妙に印象に残っているが(同様に「白昼の通り魔」も何故か印象が漠然としている)。
テレビのコメンテーターとしての活躍は周知の通りである。小泉訪朝で拉致問題が明るみに出た時、私は大島の不在が実に残念でならなかった。あの狂乱報道の最中、どうしても大島の発言を聞きたいと切に願っていた。彼のこれまでの仕事を考えれば、何か一言あって然るべきだと思ったのである。当時、大島が脳梗塞の再発で全く表に出られない状態と知ったのは、ずっと後の話である。

皮肉な事に、大島の初期作品のテーマは今日極めて生々しい。「戦メリ」以降、「世界のオーシマ」という名声ばかりが広まってしまった感があるが、松竹~ATG時代の作品こそ今一度検証してみる価値はあると思う。
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テーマ:映画関連ネタ - ジャンル:映画

この記事に対するコメント
食い潰して
本人が存命中の時は「この世にいない」事にして、死去すると「いい人扱い」、もう何人目だよ?って言いたくもなるよねぇ。 

どこの局も「戦メリ」と「あの乱闘事件(笑)」だけ(苦笑)。   

余計な事かも知れないが、若松監督の時と同じで、普段「表現規制がぁ~」なんて言ってる人らにとっては、「どうでも良いニュース」みたいですね。 
【2013/01/16 22:37】 URL | ダムド #- [ 編集]


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首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
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