時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
涌いて出たようでございます
諸星の「西遊妖猿伝 西域編」。この人は相変わらず子供を描くのがうまい。本人もそれを自覚しているのか、今後も引き続きこの双子の少年がストーリーに絡むようだ。ドゥルジ・ナス(ゾロアスター教の悪霊)との闘いは、次巻も続く模様。この妖魔、斉天大聖と通じるものがあるやも知れず、今後の展開が実に楽しみである。

なぜか京極夏彦「豆腐小僧その他」を読み始める。よって「満州国演義」はまた後回しとなる。
まず、収録作のジュブナイル中篇「豆富小僧」だが、この悪役をテロリストと呼ぶのはおこがましいと思う。ただのエコロジー馬鹿に過ぎない。思想として検討すると、実際はこの手のエコロジー思想もまた「人間主義」の枠を出ていない。所詮、人間が頭の中で作り出した、イデオロギーのひとつに過ぎないのだ。
エコロジーに可能性を求めるならば、まず自らの人間主義的性格を一旦認めたうえで、どう建設的に発展させていくかが問われなくてはならないだろう。これについては退行主義批判、二元論批判など、言いたいことが色々あるが、詳細はまた別の機会に述べたい。
それにしても劇場版の豆腐(富)小僧のデザインは愛くるしい。予告編を観て、思わず涙が出そうになった(劇場版は他に見所が無いと評する人が多いが、本編は未見なので何ともいえない)。「双六道中」の続編の表紙も、このキャラ絵で通してくれないだろうか。そんな勝手なことを考えた。

豆腐小僧その他 (角川文庫)豆腐小僧その他 (角川文庫)
(2011/04/23)
京極 夏彦

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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

ネズミがまた出た…
台所で洗い物をしていたら、ネズミが肩に飛びかかってきた。トホホ・・・

丸岡修が亡くなった。「情況」誌などで、心臓病でもう危ないとは知っていた。危険な状態なのだから、執行停止が筋だろう。「よど号」の田中義三だって執行停止になっていたぞ。

図書館の返却期限が迫っているため、大急ぎで「大地の牙 満州国演義6」(船戸与一著)を読了。とはいえ、前作の「灰燼の暦」がまだ50頁ほど残ったままだ(こちらは自前で購入)。感想はもう暫らくしてから纏めてUPするつもり。
このシリーズは図書館での通読に向かない。手元に置きながら何度も読み返し、あれこれ考えながら思索を深めていくタイプの小説だろう。

諸星大二郎「西遊妖猿伝 西域編」第三巻を購入。やたら眠いので読むのは明日にしよう。

西遊妖猿伝 西域篇(3) (モーニングKC)西遊妖猿伝 西域篇(3) (モーニングKC)
(2011/05/23)
諸星 大二郎

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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

国境線の後に残してきた、もう一人の私
池袋のテアトルダイヤ、閉館らしい。この前リニューアルしたばかりだった筈だが。
最後に観たのは「キック・アス」だった。後には何が入るのだろう。やっぱり居酒屋か・・・?

一日中雨が続く。この時期に台風か。どうなっているのだろう。
アゴタ・クリストフ「ふたりの証拠」読了。
大戦が終わり、ソ連の衛星国となったハンガリーが舞台。「悪童日記」の双子の主人公のうち、国許に残った方が本作の主人公だ。但し、二人の名前が明らかにアナグラム(綴り換え)によって作られているので、読者はこの「もう一人の兄弟」の存在に一定の留保を抱きながら読むことになる。三人称で描かれている分、前作と比べ、人間の描き方が身体性を帯びている。前作ではここの部分を意図的に排除していた。

息が詰まるような、統制と監視の社会。そんな中、アル中患者、寡婦といった人々の織り成す喜怒哀楽。悪名高いハンガリー事件も本作に描かれる。近親相姦者など、奇矯な人物が現れるのは前作と同様で、この辺りは容赦が無い。
やがて主人公の引き取った障害者の子供が、嫉妬のあまり自殺する。と同時に物語は中断し、終結部は双子の片割れである、もう一人の主人公が登場する。結末の部分は何を意味するのだろうか。前作を読んだとき、私は「魂の半分を残してきた」と表現したが、その延長で考えていいのだろうか。となると、やはり亡命者の精神世界を寓意的に描いた作品と理解されるだろう。国境線を狭間に引き裂かれた魂の姿。おそらく、その行く末は次作で明かされていくことになる筈だ。

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)
(2001/11)
アゴタ クリストフ

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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

パレスチナの春はいずこに
一日中雨が続くので、本を読みながら過ごす。
手塚治虫のブッダが今日から公開の筈だが、どうだろうか。あれは原作も決して出来はよくないし、映画としてうまくいくかどうか、不安が残る。

パレスチナ(ガザ地区)-エジプト間でラファ検問所開放。今までの封鎖が異常だった。ガザの人たちはよく耐え抜いたものだと思う。
懸念材料が無いわけではない。ビン・ラディン暗殺もあったことだし、便乗したイスラエルがまた血迷った行動に走る可能性は否定できない。よって今後も充分警戒が必要であるが、取り敢えずはよいニュースである。

.<パレスチナ>ラファ検問所を常時開放 アラブの春を象徴


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何をなすべきでないか
昨日の続き:反原発運動においても、そこでは何故反原発か、如何に反原発であるか、その内実が問われる。前者については今日の福島の事態をもって説明に換えるとして、今、我々に問われるのは後者の「如何に」の部分だろう。
例えば、「署名しない奴、参加しない奴を吊るし上げろ」といった運動のあり方は到底許されない。過去の反核運動の一部にはこうしたファッショ的な動きが見られた。この種の偏狭な視野狭窄は、運動に対してナイーヴな人ほど陥りやすいので、注意するべきである。また、「週刊金曜日」的な吊るし上げの手口(例の原発文化人リストのことだ)も私は評価しない
吉本隆明の「「反核」異論」は、「運動体が何をやってはいけないか」において今日尚、示唆的なものを含んでいる。小馬鹿にして済ませられるようなものではない。

「反核」異論 (1983年)「反核」異論 (1983年)
(1983/02)
吉本 隆明

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情勢論議、または四方山話
大阪府では維新ゴッコ集団が暴走を続け、東京ではオリンピック誘致が取り沙汰されている。さすがにオリンピックは現実味が無さ過ぎるだろう。立候補したら本当にアホだぞ。開催地決定までに原発問題が完全に解決すると思うか?これについては4/13の記事に記したので繰り返さない。
それより、もう強権的なファシストに何か期待するのはやめようよ。

山本太郎が干されている件、あれだけ派手にやっているわけだし、本人もある程度覚悟はしているかもしれない。ゆくゆくはイヴ・モンタンのようになるつもりだろうか。反原発へのアンガジュマン(engagement=政治参加)については、方向性として間違っているとは思わないので、これについては支持したい。尤も、私は彼の事を映画等を通じてしか知らないので、これ以上踏み込んだことを言うつもりはない。

テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

倒錯した心理
「麻生元首相、日中アニメ交流行事の政府特使に」
これで喜んでいるマンガファンが多いようだが、この男が規制派の急先鋒に立っていたことを忘れるべきではない(長岡義幸「マンガはなぜ規制されるのか」参照)。
自称「マンガ好き」のこの男のこれまでの動向から推察すると、その目論見は「健全なマンガを育て、不健全なマンガをどしどし取り締まろう」という所にあるのではないか。つまり、ゴリゴリの規制派の主張そのものである。
規制反対を明言したわけでもないのに、なぜこの男が支持を集めるのか、不可解であるという他ない。我欲の塊・石原珍太郎に期待するのと同じ心理なのだろうか。こちらも全く理解できないが。

テーマ:みんなに知って貰いたい事 - ジャンル:日記

ぼくは悪童になるんだ
アゴタ・クリストフ著「悪童日記」読了。
ハンガリーの現代史の寓話。いわば第二次世界大戦下の恐るべき子供たちである。
主人公の双子の置かれた境遇は育児放棄、児童虐待に近いような、えぐい環境なのだが、アパテイアの境地というか、徹底的な無感動によって彼らはしぶとく生き延びる。必要ならば彼らは犯罪すらも辞さない。
同性愛の将校、獣姦趣味の少女、破戒僧など、奇矯な登場人物たちの生と死が描かれた後、戦争が終わり、ソ連の衛星国時代がやってくる。
結末で主人公の一人が国外に去り、一人が国元に残るのは、亡命者の心境を象徴的に表現しているといっていいだろう。つまり、魂の半分を祖国に置いてきたということである。

この小説、続編が後二冊あるようなので、こちらも近いうちに読んでおきたい。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
(2001/05)
アゴタ クリストフ

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冤罪事件に思う
布川事件に無罪判決。これって、逮捕された当初はみんな「やっつけてしまえ、吊るしてしまえ」と口々に罵っていたんじゃないだろうか。
これから検察や裁判官への批判が厳しく行われることになるだろう。無論、それは必要なことだと私も思う。だが、まず第一に必要なのは、頭から「やっつけろ、抹殺しろ」と喚き散らす、私たち自身の感性を問うことだろう。「事件があった→被疑者を処罰しろ」「冤罪だった→検察を処罰しろ」これではやっている事がなんら変わらない。
「初めに処罰ありき」。冤罪を巡る社会的雰囲気で、最も深刻なのはその点だと思われる。

布川事件のドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」


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飲んでも安全!
沢田研二が原爆を作っていたのは映画の話。無論、シロートに原爆など作れるわけなどありませぬ。
さて、驚くなかれ、皆の衆。やんごとなきエラーい先生方の仰るには、「プルトニウムは飲んでも安全!」とか・・・

エラいさんって、どうしてこう、おちょくり甲斐のあるネタを提供してくれるのかなー。



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井口昇作品のこと
「愛の井口昇作品集」を観る。結論をいうと、どうも井口昇の作品は自分には合わない。
「美少女便器」などのAV作品は措くとしても、「片腕マシンガール」はイマイチだし、「栞と紙魚子」はまるで受け付けなかった。
今回の作品群を鑑賞しても、やはり印象は変わらない。例えていえばガロ系漫画の世界なのだが、フリークス志向など、特に根本敬の作品などに近いのかなと思う。「わびしゃび」などは素直な学生映画に徹しているのだが。

尚、余談だが、「イジメ」のシーンはどんなにオーソドックスに撮っても私は受け付けない。生理的に無理というか、神経が保たないのだ。本作品集でも「クルシメさん」に一部イジメのシーンが出てくるが、それでさえリモコンを破壊しそうになったほどである。
よくテレビドラマなどで、「イジメ」を作品のスパイス的に扱う人がいるが、正直私には理解できないと思う。

クルシメさん/アトピー刑事 愛の井口昇劇場 1988-2003 [DVD]クルシメさん/アトピー刑事 愛の井口昇劇場 1988-2003 [DVD]
(2004/08/27)
不明

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貧弱な思想
少し日がたってしまったが、「清貧の思想」の感想を記しておく。
中野孝次は嘗て埴谷雄高に対して、「戦後文学は自分が継承する」と大言壮語していた。戦後文学に対する評価そのものは措くとして、埴谷や大岡昇平の最良の部分をを継承しようとしていたらしいこの人物が、最低の清貧宗教に転落していく姿は実に痛ましい。
大体、満ち足りた人間に限って清貧の理想を他者に要求するものだ。私自身も、破滅する心配のない金持ちが、食い詰めた人間に「守りに入るな」などと能書きをたれるのを目にしたことがある。他者にリスキーな苦行を要求するのは、大抵安全圏に身を置いている人間に決まっているのだ。

一口に言って、本書は清貧萌えの駄本である。前半は大雅、良寛、蕪村などの人物の言行から、都合のよい部分をつまみ食いして論を組み立てる。正直、個々の人間ついては断片的なイメージしかわかない。肉体を持った存在ではなく、中野の理念を補完するための例証として、幽霊のように描かれているためである。
後半部の野放図な放談の無惨さは目も当てられない。インチキに作られた貧乏ユートピア。「乞食の身こそたのしけれ」安全圏からの無責任な貧困礼讃はとどまるところを知らない(中野は「貧困礼讃ではない」と言い張ってはいるが)。
いかがわしく抽出した清貧美学を諸外国の文化に対置するなど、比較文化論としてもまるで話にならない。ここで唱えられている「日本的」なるものは、中野の頭の中で捏造した「日本的」なるものである。本書において、中野は完全に石原慎太郎的なナショナリズムに堕しているといっていい。

退行を賛美する思想は全部駄目である。第一、オウム真理教の道場に行けば、幾らでもその手の苦行青年は見出せるはずである。このロジックは「貧乏でも苦しいと思うな、楽しいと思え!」といった、愚昧な精神主義まであと一歩である。嘗て啓蒙主義時代の哲学者は、「人間の理想(自然)状態(起源=オリジーヌ)」なるものを捏造し、今日の人間はそこから堕落していった、と説いた。中野の清貧思想はこれの時代遅れの焼き直しである。

ここまで書いてきて、F.ガタリのことを思い出した。私は彼の著書はあまり多くを読んでおらず、よく理解できたとはいい難い。だが、彼の唱える「創造性としての欲望」のようなものは肯定していきたいと思う。

清貧の思想清貧の思想
(1992/09)
中野 孝次

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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

情報戦争
小説家の大西赤人のツィッターより。誰が本当のことを言っているかわかったものじゃない。

3月12日、東電が現場の判断で1号機への海水注入を開始したのに、菅首相の意向で小一時間中断との批判。だが、官邸から問い合わせを受けた原子力安全委が海水注入による再臨界の惧れありと回答→検討後、恐れ無しと変更→ホウ酸を混ぜ再開というから、何でも菅を叩けばいいわけでもなかろうと思う。

ところで、花見にダメ出しした舌の根も乾かないうちに「祭りやれ」と言い出したり、隣組復活だのと暴走しているバカ、何で早く死なないのだろう。

テーマ:気になるニュース - ジャンル:ニュース

「先生を流産させる会」
この映画が話題になっているようだ。まだ公開の見通しは立っていないのようだが、どこかで掛けてくれないだろうか。教育映画と銘打ってあるのだから、健全育成の大好きな方々にとってはうってつけだろう。
いうまでもなく、基になったのは少し前に実際に起こった事件。映画では、男子生徒を女子生徒に置き換えて制作されているという。流産といえば、「恐怖女子高校」シリーズの一作目「女暴力教室」が鮮烈だった。不良グループが登場人物の一人にリンチを加え、流産させるのだが、本作はどうだろうか。未遂に終わるのか、徹底的にやってしまうのか、これは一度観てみたい。




武蔵野市民学校 上映会情報
会場:志木市柳瀬川図書館(だからウチから遠いんだってば!)
入場無料
カンパ歓迎
●フクシマ支援のための映写会
5/22 13:10 「見えない雲」(監督:グレゴール・シュニッツラー)
15:00 ディスカッション
16:00 「なぜ警告を続けるのか・〜京大原子炉実験所”異端”の研究者たち〜」

テーマ:すごく観たい映画(公開前) - ジャンル:映画

武蔵野市民学校のこと
忘れていた。仕事場から、取り急ぎ今日の上映会情報。
会場は志木市柳瀬川図書館。
入場無料
●フクシマ支援のための映写会
5/21(追悼・田中好子さん) 13:10黒い雨 15:20ディスカッション 16:00解かれた封印
5/22 13:10 見えない雲 15:00 ディスカッション 16:00 なぜ警告を続けるのか
今日こそ早く眠りたい
友人に紹介してもらったアゴタ・クリストフ「悪童日記」を読み始める。第二次大戦下のハンガリーを舞台にした小説だが、意外にすらすらと読みやすい。少し突拍子もない登場人物が跋扈する作品世界であり、むしろ独自の寓意的・神話的物語空間を構築しようとしているようにも思える。読み終えたらまた報告するつもり。
以前「清貧の何ちゃら」のレビューを予告したが、長くなりそうなので休みの日にじっくり書こうと思う。
糸杉柾宏「あきそら」最終巻を読む。痛い決別を覚悟していたが、そうはならなかった。基本的に恋愛物は嫌いな筈なのだが、とりあえずホッとする。安易なカタストロフへの逃避にはうんざりしているので、その点よく頑張ったと思う。

あきそら 6完あきそら 6完
(2011/05/20)
糸杉 柾宏

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テーマ:本読みの記録 - ジャンル:本・雑誌

呪われた維新
船戸与一「新・雨月」(上・下)読了。以前にも述べたと思うが、会津藩を中心とした戊辰戦争の物語である。ここで明治維新論を展開するつもりはないので、あくまでも簡単なスケッチのみとする。
これはひとつの壊滅の物語だ。明治維新と称される国家的規模の権力争いの結果、列藩同盟に次々と見放された会津は、完膚無きにまで痛めつけられた挙句、ついに降伏(恭順ではない)する。
錦の御旗を掲げた官軍も、会津にしてみれば正統性を僭称する奸賊に過ぎない。また、少し距離をとれば薩長も奥州も碌なものではないのが見て取れる。いずれも下層民のことを蔑ろにしていることに変わりはない。これは奇兵隊においても同様である。
日清戦争に匹敵する犠牲者を出した殺戮戦は、作中人物の語る「時代の流れ」では済まされる性質のものではないし、それは船戸も承知のことと思う。このロジックでは例えばインディアン(米先住民)の虐殺すらも「時代の流れ」として正当化されてしまうからだ。
本書のエピローグでは、日本の近代史を震撼させたこの内戦が、その後の明治から昭和にいたる国家社会の形成に大きな影響(後遺症)を及ぼしていくことが示される。そして、その爪痕は今日にも及んでいるのかもしれない。奥州-東北地方と中央政府の関係を考えると、福島原発の事態は象徴的とも思える。

船戸与一の小説の中では最も情報量が多く、最も内容の重い作品だろう。だが、船戸の筆致は読者をぐいぐい引っ張っていき、決して飽きさせることがない。全巻を通じた、戦争の荒廃した有様は読者の心を荒ませるかも知れない。主人公三人のうち二人は犬のように惨めたらしく死んでいく(逆恨みしたバカに殺されたり、官軍の集団強姦を止めようとして殺されるなんてそりゃないよ!)し、ただ一人生き残った主人公は長州のスパイである。後味悪いことこの上ないが、この後味の悪さは後の明治時代に対する、作者による歴史批判でもあると思う。そして、このテーマは現在進行中の「満州国演義」に流れていくことになるだろう。
明治維新史を扱った小説では、最も重要な作品と思えた。

新・雨月上 戊辰戦役朧夜話新・雨月上 戊辰戦役朧夜話
(2010/02/18)
船戸 与一

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新・雨月下 戊辰戦役朧夜話新・雨月下 戊辰戦役朧夜話
(2010/02/18)
船戸 与一

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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

公然たる敵
珍太郎の「ざまあみろ」発言。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110518-00000001-jct-soci実際、こいつにとっては震災様々なのだろう。この非生産的な血税寄生者は口が悪いのではない。頭が決定的に悪いのだ。アニメフェアの時、出展拒否の出版社に協力要請の手紙を送っていたのは、一体なんだったんだ?

中野孝次著「清貧の思想」を我慢して読了する。昨今の自粛ムードに繋がるものがあると思えたためである。詳しい感想は船戸の「新・雨月」と共に後日記す予定だが、「我執を捨て去って」「こんなに物をムダにしていてはそのうち天罰が当たろう」等という文言については特筆しておきたい。どこかで聞いたような文句ではないか?繋がるものどころか、そっくりそのままだ。まあ、ベストセラーになった本だし、奴が読んでいてもおかしくはない。タネ本はここにあったか。
そういえば、「映画秘宝」で「慎太郎の惨死は一刻の猶予もならない懸案事項である・・・(キ・ターヴォ)」(「映画秘宝」2011.3月号 死んでほしい奴グランプリ)とコメントしているひとがいた。
無論、他愛ないギャグである。我々としてはこれまで通り、粛々と(志は熱く)反対運動を続けるまでのことだ。だが、近い将来奴が死亡した暁には、その時こそ「ざまあみろ」と祝杯をあげよう。

清貧の思想清貧の思想
(1992/09)
中野 孝次

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テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

ゆきゆきて、マイケル
マイケル・ムーア「ロジャー&ミー」を観る。
「処女作に作家の全てが詰め込まれている」という俗説を私は必ずしも信じない。だが、この作品には後年の彼のテーマがしっかり詰め込まれているのは事実だ。内容は、大企業の大量解雇、レイオフによる地域社会の崩壊を描いたもの。
企業の海外進出、それによるコストカットとしての国内労働者の切捨て、内需の低下、景気低迷・・・以前、E.トッドの本を紹介したが、そこに書かれていることが文字通り再現されているといっていい。労働問題はムーアの一貫したテーマであり、「ザ・ビッグ・ワン」や「キャピタリズム」にも引き継がれている。勿論、「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏9.11」もその延長上にあると見てもいいだろう。
後年のバラエティ番組を思わせるような作為的な手法は殆ど見られない。素直なドキュメンタリーとして作られているので、割合受け入れられやすいと思う。尚、この作品制作のきっかけは原一男監督の「ゆきゆきて、神軍」を観たことにあるそうだ。

ロジャー&ミー [DVD]ロジャー&ミー [DVD]
(2004/12/03)
マイケル・ムーア

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「レオン」のマチルダの名はまだまだ重い
「ブラック・スワン」(監督:ダーレン・アロノフスキー)を観る。
序盤、顔のアップがやたら多いのには閉口した。
ストーリーには既視感がある。ライバルと主演の座を争う主人公の話。追い詰められた彼女は、やがて精神的に破綻していく。最終的に、最大の敵は自分だったというもの。劇中劇が本編のストーリーと重なっていくところなど、全てありがちな展開なので、意外性のあるストーリー展開を期待すると肩透かしを食うだろう。
寧ろ、それを全て踏まえた上で、おなじみのストーリーを如何に見せていくかに製作者の関心はあるのかもしれない。音楽もなかなかだし、バレエのシーンは見事なものである。ナタリー・ポートマン演ずる主人公が踊るブラック・スワンは素晴らしく(勿論映画的な演出を通してだが)、観終わって決して損な思いはしないと思う。

今敏の「パーフェクト・ブルー」とよく比較されているので、こちらも今度こそ観ておこうと思う。尚、「映画秘宝」によれば、監督は「PB」のリメイク権を持っているので、パクりにはならないようだ。




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「PALESTINE みんなの物語」
パレスチナ、ナクバの日を記念して、各地でデモ、衝突。エジプトのカイロでは治安部隊がデモ隊に発砲した模様。ナクバ(NAKBA)とは1948年の「大災厄」。シオニストがパレスチナ人を叩き出し、イスラエルを「建国」した事件である。


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チョムスキーの眼差し
すっかり忘れていた。ノーム・チョムスキー、この人がいたんだっけ。もうかなりの高齢だが、語る内容はしっかりしている。

<オサマ・ビン・ラディンの死について考える>
http://www42.tok2.com/home/ieas/chmsky110507binladen_assasination..PDF
チョムスキーに倣ってアメリカを批判することはたやすい。勿論、かの国の現状を見るに、それは必要なことではあるに違いない。だが、「人の振りみて我が振りなおせ」という視点は常に必要であると思える。チョムスキーの社会批判に学ぶとしたら、そこだろう。彼は自国の傍若無人の歴史、対外政策について、長年にわたり厳しく批判してきた。同様の批判精神を私達は獲得できるだろうか。

チョムスキー「アメリカが本当に望んでいること」(現代企画室刊)
この本は極めて読みやすいのでお勧めである。入門書としてはうってつけだろう。
アメリカが本当に望んでいることアメリカが本当に望んでいること
(1994/06)
ノーム チョムスキー

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空っぽに過ごす
朝起きると風邪気味。このところ気温の差が激しいので体調を崩しやすい。昨日までの仕事の疲れも溜まっているので、注意が必要だ。
結局二度寝して昼過ぎに起きる。折角の休みだが、もはやあって無いようなものだ。その代わり、体の調子はよくなった。近所のベローチェで本を読んでいるとすぐに夜になってしまう。やれやれだ。
マイケル・ムーアのデビュー作「ロジャー&ミー」を観る。感想はまた後日。
池上彰がテレビでビン・ラディンの解説をしていた。真新しい内容は無いが、一通りのおさらいにはなったと思う。だが、ビン・ラディンの行動原理を宗教性のみに還元していることには強い疑問を覚える。アメリカには憎まれる理由が幾らでもあるというのに。

テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

警戒はしておくべきである。
サイゾーの記事がまた騒がれている。
http://www.cyzo.com/2011/05/post_7328.html
情報の精度については微妙だといわれているが、こんなときに限って当たっていたりする場合がある。
やはり規制反対の原則論を確認するための投書、メールは送った方がいいだろう。特定の発言者を名指しするのではなく、「このような趣旨の案は受け入れられない」と一般化した文面で意見を送るのがいいと思う。日頃のロビー活動の一環として働きかけるということだ。
それにしても、出版社も屈服などすれば、読者を完全に敵に回すということは判りそうなものだが?


ビンラディン容疑者殺害現場でポルノ押収、米国防総省
CNNの記事。これを読んで失笑した人は多いだろう。勿論、国防総省および記事をタレ流すCNNに対してである。サウスパークじゃあるまいし、誰がこんな露骨な記事を真に受けると思うんだ?胡散臭いと思うのが普通だろう。無論、事実だとしてもニュースとしての価値など一切ない。結局は印象操作の材料でしかない。

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上映会のこと
武蔵野市民学校の情報
私は行かれないので、お近くの方、どうぞ。会場は志木市柳瀬川図書館。ウチから遠いんだよな~

小津&溝口特集
5月14日
13:10 東京の宿
15:00 折り鶴お千
入場無料
カンパ歓迎
文化果つるところ
「13日の金曜日 ジェイソンの命日」(監督:アダム・マーカス)を観る。
今回は番外編。ジェイソンの正体が、正体不明の寄生生命体であるという設定。ファンにとっては些か興醒めの感がある。無かったことにされているのも無理は無い。
「ジェイソンX」は過去に観ているので、これでリメイク版を除く全ての作品を観たことになる。そこでひとつ、総括的な事柄を述べようと思う。

ジェイソンが体現するものは原始の野蛮性であり、動物性である。非-理性であり、凶暴なマグマである。彼は並外れた怪力を持ち、マチェーテ(山刀)のような単純な武器を振り回し、人々を惨殺する。彼の暴力はひたすら原始的である。彼は文明が置き去りにし、近代的理性が封印しようと努めてきた、野蛮性の体現者なのだ。それは意識の夜であり、狂気であり、おぞましき退行性である。
いうまでもなく、この闇の部分は我々の意識の奥底に潜んでいるものでもある。いかに近代化し、文明化しようとも駆逐できるものではないだろう。これは影で人間を人間たらしめている要素でもあるからだ。「X」でハイテク兵器を駆使した未来人たちが次々と殺されていくことはそれを象徴的に暗示している。人間が人間である限り、その意識の根幹には拭い難い原始的なものが付き纏う。絶えることがないのだ。よって、ジェイソンが「不死」であることは偶然ではない。落雷によって再生する以前から、既に彼は不死性を内包していた。
近代的理性の闇を体現したジェイソン・ボーヒーズ。彼のむき出しの暴力性は、今後も我々観客を魅惑してやまないことだろう。

13日の金曜日 ジェイソンの命日 [DVD]13日の金曜日 ジェイソンの命日 [DVD]
(2008/06/04)
ジョン・D・ルメイ、エリン・グレイ 他

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テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

「近代化」の正体を問い直せ
船戸与一「新・雨月」。もう少しで読み終わるのだが、どうもこの本、心が荒む。
これは出来が悪いからというわけではなく、戊辰戦争というテーマそのものに内在する要因によるものだろう。リアリズムに徹すれば徹するほど、碌でもない出来事ばかり浮き彫りになってくるのだ。
詳しくは読了時に述べようと思う。
「「現代思想」5月号 特集:東日本大震災」を購入。内容はかなり気合の入ったもので、読み応えがある。「ユリイカ」がサブカル化している(サブカルを扱うのはいいのだが、雑誌そのものがサブカル化している)この頃、「現代思想」の頑張りは貴重である。
論者それぞれ立場は異なるが、その主張には共通した事柄がある。それは、今回の震災と原発事故により、明治維新以降の日本の近代化の本質そのものが問われるということである。おや、先程の「新・雨月」と話が繋がってきた。妙な偶然だ。

現代思想2011年5月号 特集=東日本大震災 危機を生きる思想現代思想2011年5月号 特集=東日本大震災 危機を生きる思想
(2011/04/27)
柄谷 行人、酒井 直樹 他

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「自分自身の独裁者にして、国民の奴隷」~カストロを巡る二本の映画を観て
若松孝二の三島由紀夫映画、5/2にクランクアップしたらしい。もう撮影終了?いいのか?

「コマンダンテ」(監督:オリバー・ストーン)、「フィデル・カストロ×キューバ革命」(監督:アドリナーナ・ボッシュ)を観る。
前者は言うまでも無くオリバー・ストーンによるカストロのドキュメンタリーであり、後者は反カストロ派による一種のプロパガンダ映画。こちらは古い記録映像に亡命キューバ人のインタビューを貼り合わせたものだが、そこに含まれる諸々の悪意にもかかわらず、学び取るものはそれなりにあったと思う。
カストロという人は評価が極めて難しい人物で、正直、私自身うまく言い表す言葉がなかなか見つからない。革命の英雄であり、今日に至るも尚、刺激的な問題提起を発し続ける一方、反対派に対する容赦ない弾圧については、信頼できる情報源によっても確認されている(これはゲバラも同罪である)。同時に、第三世界各国に対する教育、医療面での積極的な援助もまた、よく知られている。
ごく最近まで、類を見ない長期政権に留まり続けながら、個人崇拝を嫌い、自らの銅像の作成を厳格に禁止するなど、極端な欠点と極端な美点が同居する。こういう複雑な人物を論評するのは辛い。
それにしても、カストロの人を惹きつける魅力は圧倒的だ(長々しい演説は今回のストーンの映画では見られない)。カストロ節と呼ばれる、示唆に富む発言も健在である。初めて来日したのをニュースで見たとき、私の第一印象は「でかい」だった。やはり歴史に名を残す人物だけあって、只者ではない。
それだけに、盲目的な礼讃に陥るのは警戒しなくてはならないぞ、と自戒したいと思う(我が国でも一部に能天気な礼讃文書を刊行している人がいる)。
大病を経て、引退した後の動向は詳しく知らないが、キューバが今後、どのような方向に向かっていくのか見守っていきたい。

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オリバー・ストーン、フィデル・カストロ 他

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フィデル・カストロ.ジョン・F・ケネディ.チェ・ゲバラ.フルヘンシオ・バティスタ.ノルベルト.フェンテス

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テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

アメリカの終焉
E・トッド著「自由貿易は民主主義を滅ぼす」読了。
エマニュエル・トッド、ポール・ニザンの孫でオリヴィエ・トッドの息子。
本書は彼の来日時の講演とインタビュー、対談を収録したものである。
述べられている事柄は多岐にわたるが、いくつか簡単に纏めると次のようになると思う。

まず、経済的自由主義と政治的自由主義は全くの別物である。寧ろ両者は反比例する関係にある。
現在、自由貿易は経済危機に見られるように行き詰まりを迎えており、プラグマティックな調整機能として保護主義を導入することが有効である。これは「保護主義は正しい」というのではなく、必要に応じて経済的自由主義と保護主義を使い分けようということである。
アメリカの金融工学は不確定性を排除した疑似科学であり、最終的にこの国は虚栄の繁栄を作り上げ、サブプライムローンのような詐欺活動に至り、破綻した。現在、アメリカ型の繁栄を目指すことは無謀である・・・

その他、識字率の問題、家族構造の問題、サルコジ選出の社会的背景の分析(石原に通じる?)など、重要な提起は幾つもある。彼の持論の信頼性について私は判断する立場には無いが、「経済的自由主義と政治的自由主義は全くの別物である」という命題は、これまで漠然と感じていたことを明確に整理してくれた感があり、参考になったと思う。TPPの問題から、昨今の原発問題について考察する際にも、学ぶ点は大いにありそうである。
尚、トッドの核武装論については私は支持しない。彼の論には「核兵器それ自体の持つメッセージ性」についての考察が、欠けていると思われるからである。

自由貿易は、民主主義を滅ぼす自由貿易は、民主主義を滅ぼす
(2010/12/22)
エマニュエル・トッド

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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

原発を止めるのが凄く困る人たち
以下、ダーティー・松本さんのブログより引用。実に的を射ていると思う。

お昼のテレ朝「浜岡原発停止のニュース」、
地元の反対意見のみ多数放映。
賛成意見は放映なし。
他の討論番組も評論家たちいつもより
必死!で菅政権批判!
原発を止めるのが凄く困る人たちが
必死になっているような感じ?
「俺が!俺が!」と自己アピールを
繰り返すのみで野球評論家の
「結果論」とたいして変らず。

テーマ:気になるニュース - ジャンル:ニュース



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のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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