時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
神秘化と明示化
以前注文したテレビが届く。店頭で見たよりもやたらでかい印象を受ける。複雑な機能がかなり多いのと、無駄に操作に手間がかかるのが気になるところだ。家庭の事情で、こちらでDVDを観ることは殆どないのが残念である。

さて、もう一台の少し古いテレビで「らせん」(監督・脚本:飯田譲治)を観る。
「リング」(監督:中田秀夫 脚本:高橋洋)の正式な続編であり、同時上映された作品だが、評判が悪いのもうなずける。普通のサスペンスドラマなのだ。作劇として間違ったところがあるとは思わない。それなりにしっかり作ってはいるだろう。
しかし、「リング」を観た人が、この作品世界を望んでいないことは確かである。禍々しさが決定的に欠けているのだ。私自身は「リング」にかなり散漫な印象を受けたので、これを神格化するつもりはない。だが、続編としてこれはないよな、というのが率直な感想である。決してそれ自体は駄作というわけではないのだが…怪奇物とSF的サスペンス。ポーとヴェルヌの違いといったら大袈裟だろうか。
尚、私は原作を読んでいないが、映画の評価に原作を勘案する必要はないので、ここではあくまでも映画作品のみの感想を記すこととする。
ついでにいうと、別バージョンの続編に「リング2」があるが、これもどうかと思う。貞子があの泥人形じゃあ…

らせん [DVD]らせん [DVD]
(2005/03/02)
佐藤浩市中谷美紀

商品詳細を見る

スポンサーサイト

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

凡百の教育映画よりはずっといい
「輪廻」(監督・脚本:清水崇)
思ったほど悪くない。わざわざ「思ったほど」という修辞を付したのは、最近邦画ホラーに裏切られてきた経緯があるためである。実は本作も構成上の不備や、説明不足な点は目立つ。「突っ込みどころ」は幾らでもあるだろう。しかし、最終的な完成度は納得いくものだった。以前、「子供にこんなものを見せるとは何事だ」というニュースが話題になったが、寝呆けるのも大概にしろといいたい。
本作は劇中劇の手法をとることにより、一種のメタフィクション的方法を確信的に用いている。そしてこれはミステリアスな展開とも相まって、観る者に混乱した不安感をもたらすことに成功している。
「映画に関する映画」という要素があることは間違いない。だが、それだけで終わらせてしまってはつまらない。妄想めいているかもしれないが、映画を観ること→認識論、輪廻→別の自分を生きること→社会的役割理論と、アナロジーをあれこれ考えてみた。
また折をみて、じっくり鑑賞したいと思う。

輪廻 プレミアム・エディション [DVD]輪廻 プレミアム・エディション [DVD]
(2006/07/14)
優香香里奈

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

闇に蠢く
テレビが壊れたので、池袋の電器店を物色。手頃な品物を注文して帰宅する。
テレビといえば貞子。「お買い上げの方に漏れなく貞子がついてきます」そんな電器屋はイヤだ。
ひとつ、馬鹿馬鹿しいイラストを思いついた。そのうち折を見て描いてみようと思う。夏が終わってしまいそうだが、「ホラーは年中無休なんだ!」と強弁するつもり。あ、暦ではもう秋だ。
私のヨタなイラストは論外だが、文学にしろ、美術にしろ、ホラーは一種の怪奇・幻想作品に属するので、決して侮れないし、とてつもなく大きな可能性を秘めていると思う。いつか近年のJホラーを含め、古今東西のホラー作品を自分なりに検討してみたい。そしてその場合、やはりE.A.ポーが大きな指標となることは疑いないだろう。

テーマ:今日のつぶやき - ジャンル:日記

まあだだよ
仕事疲れで、まるで頭が回らない(いつもと変わらないか?)。
そんなわけで、今日は書き漏らしたレビューをひとつ掲げる。

「ひとりかくれんぼ 劇場版」(監督:山田雅史 脚本:宮本武士 山田雅史)
2週間ほど前に見た作品なのだが、かなり印象が薄れかかっている。よって、覚えている範囲で感想を書き留めておく。
この作品、折角「ひとりかくれんぼ」という、いくらでも面白く出来る題材を見出したにもかかわらず、なぜか普通の神隠しの話に移行してしまう。無論、こちらも扱い次第ではいくらでも盛り上がる筈なのだが、結局中途半端なまま終わっている。元になったビデオ版のほうが、色々なポテンシャルを秘めていた。
夜中にしてはやたら明るすぎる場面が多いのも興醒めであるし、また、中盤に登場する幽霊は顔をはっきり見せないほうがよかっただろう。不気味さを演出したいのなら、「不明瞭さ」を効果的に使うべきだった。
結果、期待はずれの凡作となった。残念。

ひとりかくれんぼ 劇場版 [DVD]ひとりかくれんぼ 劇場版 [DVD]
(2009/07/17)
川村ゆきえ河北麻友子

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

明証的な、あまりに明証的な
眠れる蔵書の消化作業。デカルト「方法序説」を読む。
スコラ哲学批判が主となっているのだが、デカルト自身の論理にスコラ学の残滓が残っており、かなり回りくどい点が多い。また、心臓の機能を長々と解説する段になると、あまり今日的な意義はないだろう。
いまさら私などが解説者の真似をしても仕方がないのだが、ただ、彼の「明晰への意志」については幾分学びたいと思う。無論、花田清輝が指摘するように「世界には完全な白や完全な黒というものはない」のは事実であり、私もそのことに異存はない。世界は「明晰」という言葉で一括りに出来るほど単純ではないだろう。私が言っているのは、あくまでも意志の問題である。
そして、ここでは単純化や粗雑化は厳禁であることは、言うまでもないだろう。明晰は緻密、正確ということと不可分であるのだから。
また、著者は本書後段で、「(伝言ゲーム的に)私の話したことが歪められて伝わっている」とボヤいているが、これは今日の彼の立場をも表している。実際、デカルトを読んだ事もない連中が、デカルト批判を口真似して、現代思想家ぶっているのを往々にして目にするのだ。「注意深く速断と偏見を避けること」という本書の言葉は、彼らのためにあると思えた。

方法序説 (岩波文庫)方法序説 (岩波文庫)
(1997/07)
デカルト

商品詳細を見る

テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

オリオンの幽閉者
先日、足立正生の「幽閉者/テロリスト」のレンタル落ちDVDを購入した。売れそうにないからか、この作品、セル版が出ていない。些か残念である。ちなみに私は公開当時にユーロスペースで観ているが、平日のためもあってかガラ空きだった。
この作品は一応、岡本公三達の空港銃撃事件を題材にしているが、実際は足立の想念世界を描いたものである。ブランキやネチャーエフ、ネグリなどと延々と議論するシーンはなかなか楽しい。
「幽閉」は引き籠りのアナロジーでもある。足立は引き籠りには肯定的であるが、引き籠り青年の想念世界の話として捕らえると、また別の観方ができるかもしれない。
社会問題としての引き籠りに対して、私は判断する立場にない。だが、内省的な世界を開拓する、という程度であれば、充分了解可能である。これについては吉本隆明の引き籠り肯定論が参考になると思うが、ここであまり間口を広げすぎるのは差し当たり控えておきたい。

↓愛育社刊「幽閉者」。こちらはこの映画にまつわるインタビュー、脚本を収めたもので、実質的なパンフレットとしての性格を持っている。
幽閉者(テロリスト)幽閉者(テロリスト)
(2007/01)
リンディホップスタジオ

商品詳細を見る

テーマ:お気に入り映画 - ジャンル:映画

今敏逝く
連日の猛暑。遅番の日など、会社に着いた途端、すでに体力を使い果たしてしまっている。
一体どうなっているのだろう。

今敏が亡くなったそうだ。膵臓癌だという。彼の映画を観たことが無いのだが、我が家には「パーフェクト・ブルー」のDVDが眠ったままとなっている。怠惰と不勉強を恥じ、近いうちに観賞する予定。ただし、その前にやることが色々と溜まっているのも事実だ。

PERFECT BLUE [DVD]PERFECT BLUE [DVD]
(1998/12/22)
岩男潤子松本梨香

商品詳細を見る

テーマ:今日の出来事 - ジャンル:日記

知の密教主義への一抹の不安
高橋洋監督の「恐怖」について、「これは映画を観るという行為を寓意的に描いたものである」という評が続出している。いわば、メタ映画であるということだが、これって作品評価にとって主題となりうるものなのだろうか。
一時期、メタ小説の類が流行ったときにも同じ疑問を感じた。一口に言うと、「だから何だよ」ということだ。「そうですか、よくわかりました。しかしそれは私の人生にとって、なんら重要な課題ではありません」つまり、普遍性がないのである。こうした評価は、下手をすれば、アカデミズムの中でしか通用しない、秘教主義的な暗号ゲームのようなものに堕してしまわないだろうか。そんな不安を覚える。
批評家はもっと普遍性のある読解を提示するべきではないかと思う。メタ映画としての読解は、あくまでも副次的なテーマに留めておいてほしい。

テーマ:映画関連ネタ - ジャンル:映画

残暑の続く中、ホラー談義
ビデオ作品だが、ここでは映画枠で取り上げる。
「新耳袋」シリーズは初めて観るのだが、それにしても、どちらもジャケット負けしていないか。

「怪談新耳袋 絶叫編上・ぶうん」(監督・脚本:三宅隆太)
「もうひとりいる」にも共通しているが、アイディアを活かしきれていない(あと、あの舞台はどう見ても廃校だろう)。これだったら「怪談ブタ男」を大真面目に撮ったほうが、まだマシなものが出来たのではないか(そういえば諸星大二郎のギャグに「怪人ゾウ男」というのがあったな)。
観た事を一刻も早く忘れたいような、残念な作品となった。

「怪談新耳袋 殴り込み」(監督:豊島圭介)
一口に言うと、心霊スポット突撃レポートである。私はこの手のオカルト話に疎いので、最初はフェイクかと思った。
「映画秘宝」のファンとしては、出演者に対し、妙な共犯意識が生まれてしまう。そのせいか、まるで内輪の人たちが怪奇現象を前に、ドタバタを演じているような感覚で楽しめた。とりわけ、京撮の人たちから「よくあんな場所にいきましたねー」と驚かれたというのが実に可笑しかった。
軽い「ブレア・ウィッチ」テイストも楽しめる一品。

怪談新耳袋 絶叫編 上 ぶぅん [DVD]怪談新耳袋 絶叫編 上 ぶぅん [DVD]
(2008/07/09)
大政絢

商品詳細を見る


怪談新耳袋 殴り込み [DVD]怪談新耳袋 殴り込み [DVD]
(2008/07/23)
豊島圭介木原浩勝

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

誰のせいでもない雨が
暑さのせいか、一日中ぐったりする。極めて非生産的な一日。

「少女情婦」(監督:高橋伴明 脚本:大貫圭)を観る。
「光の雨」「禅」などで知られる高橋伴明のピンク時代の作品(袴田事件映画は未見)。この監督はピンク時代のほうが圧倒的にいいと言われているが、本作も噂にたがわぬ出来映えである。
主演女優は「少女」というにはいささか無理があると思うが(これも非実在青少年か?)、内容はしっとりした青春映画だった。
冒頭と同じ場所で、雨の降りしきる中、主人公二人がもう一度出会いなおすというラストは実に味がある。かちりと決まった、名場面だろう。

少女情婦 [DVD]少女情婦 [DVD]
(2002/06/28)
不明

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

「先生、カッコいいよ!」
PCの調子が悪く埒が明かないため、思い切って初期化。一日仕事となる。疲れた。

「痴情報道 悦辱肉しびれ」(監督:池島ゆたか 脚本:五代暁子)を観る。
非実在女子高生失踪事件を追うテレビレポーター・マドカ。真相を追究するうちに、彼女自身が事件に巻き込まれる。
おくての堅物教師が手玉に取られ、破滅へと転落していくというもので、話自体はありふれているが、出来栄えは実に見事である。結局この教師と同様、自らもまた社会的に利用されていただけだと気付いたとき、マドカの感情は少しずつ変遷していく。このあたりは強い説得力を持って描写されていると思う。
最後は痛い結末を予想したが、さにあらず。心に残るラストシーンとなった。

moblog_6ab21d81.jpg

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

壁の中の惨劇
アン・ビョンギ監督「アパートメント」を観る。
疎外された人間が孤独で惨めな死を迎え、怨霊として祟り続けるのは「友引忌」「コックリさん」にも共通するテーマである。
何らかの社会問題を織り込むのはこの監督の特徴だろうか。本作でもひきこもり、障害者虐待の問題が扱われている(「ひきこもり」は劇中でも「ひきこもり」と発音されている)。尚、斎藤環によれば、韓国やイタリアなどでもひきこもりは社会問題となっているらしい。
また本作では、アパートや団地といった閉塞的環境による、人間性の抑圧といったテーマが顕著である。これは過去にしばしば取り上げられた題材であり、映画では若松孝二の「壁の中の秘事」などが想起される。昨今では当たり前となったせいか、取り上げられなくなってしまったが、今なお解決を見ない問題である事に変わりはない。擬似的なユートピアへの意思が、正反対の結果を齎していく様は実に痛ましい。
ストーリー自体は、幾許かの不備や疑問点があるものの、悪くはない。話を最後まで引っ張っていく技量は見事なものであり、なかなかの佳作であった。
尚、明らかに貞子など、日本映画を意識したシーンも見られるが、私はオマージュと考えている。剽窃にしてはあまりにも判り易すぎる。

アパートメント [DVD]アパートメント [DVD]
(2008/07/25)
コ・ソヨンカン・ソンジン

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

もうひとつの修羅
舞城王太郎著「阿修羅ガール」読了。
もとより、作者にも作品にも一切予備知識はなく、ただ友人に勧められるままに読み始めた本である。
頭の悪そうな女子高生のモノローグで物語は幕を開ける。一見しまりのない文章がだらだらと続くが、無論意図的なものだろう。些か辟易しながら、続発する奇妙な事件を追っていくと、何故か途中からグッチ裕三が登場。読者を途方にくれさせるが、実は小説が俄然力を帯び始めるのはここからである。めくるめく破天荒な展開に不安を覚えながら読み進めるが、予想外にしっかりまとまった結末を迎える。
「他者性」を巡る省察を織り込むなど、興味深い点はあるものの、個人的にはもっとオーソドックスな形式で書かれたものの方が好みである。尤も、それは資質の問題に属するのかもしれないのだが。

阿修羅ガール (新潮文庫)阿修羅ガール (新潮文庫)
(2005/04)
舞城 王太郎

商品詳細を見る

テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

どの時代も固有の問題を抱えている
エドウィン・ミュア「スコットランド紀行」を読了。
紀行と銘打ってあるが、所謂旅行記の類いではない。そこを勘違いすると、肩透かしを食うだろう。
本書はエディンバラ、グラスゴー、ハイランド、オークニー諸島といった、スコットランド諸地域を巡る、随想、歴史的考察、社会批判である。産業資本主義に対する手厳しい批判意識が随所に見られ、とりわけグラスゴーを語る際にその筆致は一段と激しくなる。
著者は社会主義から多くを学んでいるが、決して教条主義的なものではない。むしろ、彼の批判精神は自身の生活者、文学者として築き上げた精神性から生まれたものと思われる。そして、その観察眼、洞察力は、今日の読者にとっても、得るところは大きいだろう。
じっくりと時間をかけて読むにふさわしい書物だった。

スコットランド紀行 (岩波文庫)スコットランド紀行 (岩波文庫)
(2007/07)
エドウィン ミュア

商品詳細を見る

テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

もの言う死者の記録
数日前、購入した本の中から。

「PG」105号(すべての死者よ、甦れ!~池島ゆたかが見た、生きた、ピンク映画傍証50年史~)
知る人ぞ知るピンク映画の専門誌であるが、本書はまるまる一冊、池島ゆたか監督のロングインタビューで構成されている。
パラパラ眺めたところ、ピンクの草創期(無論、池島はまだ学生)から、現役監督としての自らの現在までを語りおろす内容らしい。
日本映画を論ずる際にピンク映画の存在は欠かせないはずであるが、今も尚、充分な歴史的叙述がなされないでいるのが現状である。そんな中、本書のような試みがなされるのは喜ばしい。
もしかしたら、若松孝二「俺は手を汚す」「時効なし」、足立正生「映画/革命」と並ぶような、貴重な証言記録となるのではないかと読む前から勝手に期待している。

PG

テーマ:この本買いました - ジャンル:本・雑誌

権力はワイセツを嫉妬する
月刊誌「紙の爆弾」がおかしなことを言い出した。
今月発売の9月号に非実在青少年の問題が掲載されているのだが、趣旨は、「BL本やアダルトコミックの性描写は表現の自由では擁護できない」というもの。
おそろしく退行した議論に舞い戻っている。今さら何を言っているのか?
「いかに唾棄すべき内容であれ、それを表現する権利は尊重されるべきである」
ヴォルテールの言葉とされるこの命題を、我々は確認してきたのではなかったのか。
もう一度、オスカー・ワイルドの言葉を思い出そう。
「道徳的な書物、不道徳的な書物などというものは存在しない。書物はよく書けているか、書けていないか、それだけの事である」
無論、ここに公権力の介入する余地は無い。




白衣の哄笑
先日、「看護女子寮・凌された天使」(監督:堀内靖博 脚本:加藤正人)を観た。
少し古い日活ロマンポルノ。女子寮物と看護婦物を組み合わせた安易な企画だが、出来映えはなかなかいい。
新人看護婦がサディストの医者に翻弄される話に、ちょっとした三角関係を絡めたもの。
終局部では、この医者が見かけ倒しの存在でしかなく、矮小な人間に過ぎないことが、暴露される。賭けに怯え、屈服したこの男を、捨てられた元恋人が高らかに嘲笑う場面は実に見事で、かちりと纏まった佳作となっていた。
尚、この作品、ソフト化されていないのが実に残念なところである。

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

「あれは兇暴きはまる抒情の一時期だつたのである」
終戦の日だが、改まった事を言うのも何となく気が進まない。
ところで、池袋のサンシャインビルの辺りが巣鴨プリズン跡地である事は周知の事と思う。
以前、リメイク版「私は貝になりたい」(監督:福澤克雄 脚本:橋本忍)を観た帰り、何か慰霊碑のようなものが無いかと思って、この周辺を散策した事がある。
程なくして、隣の公園に碑を見つけることができた。映画そのものは凡作だったが、この場所に来た事で何となく達成感を感じた事を覚えている。尚、私は東京裁判に反対であることを付言しておく。






テーマ:日記 - ジャンル:日記

今日が初日、「キャタピラー」を観る
「キャタピラー」初日、テアトル新宿まで行く。はっきりしない天気の下、入り口前に並ぶがとにかく酷い暑さだ。そのせいか、帰宅してからずっと偏頭痛が続いている。

さて、映画の方はいかにも若松らしい力技の映画。初期のピンク映画の感触を思い出した人も多いと思う。
大本営発表による華々しい「戦果」と、現実の戦局、困窮する人々の生活のギャップには黒いユーモアすら感じられ、ぞっとした。大西信満、寺島しのぶの演技は評判にたがわず鬼気迫る勢いで、あのシゲ子がケラケラ笑うシーンには圧倒された。
また、クマさん(篠原勝之)はトリックスターとして独特の存在感を示している。彼が佯狂かどうかは不明だが。「論語」の狂接輿など、古来よりこうした人物の存在は語り継がれている(大川周明のことはひとまず措く)。文学ではハシェクの抵抗文学「兵士シュヴェイクの冒険」を思い出してもよい(兵士シュヴェイクは抵抗者である。一部で「服従の兵士」という風評が流されていたので訂正する)。無論、フィクションはともかく、現実問題としてこれを抵抗と呼ぶかは議論の分かれるところだろう。私もあくまでトリックスターとして彼を理解したい。
尚、幾つか、監督が当初語っていた内容との相違が見られた。初期の構想では原爆がストーリーに直接絡んでいた筈であるが、無理があるためか、変更されたようだ。「ユルス」という遺言も使われていない。これは乱歩と距離を置くためという見方も出来るだろう。だがそれ以上に、やっぱり指導者達は許せないと思ったのではないだろうか。
濃厚な1時間半だったが、終わった後、何故か涙が流れて止まらなかった。歳のせいか、涙もろくなったのか?

若松孝二キャタピラー若松孝二キャタピラー
(2010/07)
不明

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

まさに人間の形をしているよ
ローザ・ルクセンブルクの「獄中からの手紙」を読む。
学生時代に購入したままほったらかしになっていたのだが、いい加減、本棚に眠っている本を消化していきたいと思ったのだ。
ローザについての私の知識は受験世界史の域を出ない。現在、どのような古典的評価を受けているかも詳らかにしない。
さて、本書であるが、ここにはややこしい思想的な話題は一切無い。花鳥風月とは言わないまでも、自然観察や、詩(ゲーテなど)、音楽に関する話題が殆どである。寧ろ牧歌的な田園詩人を思わせる内容といってもいい。
幼馴染の親友に宛てたその筆致たるや、殆どレズビアンかと思わせる程だが、こうした手紙以外に外界との接点があまり無いことを考えると、情熱的になるのもむべなるかなという気がする。
思想書というよりも、文学書として有意義な書物だった。

獄中からの手紙 (岩波文庫)獄中からの手紙 (岩波文庫)
(1982/01)
ローザ・ルクセンブルク

商品詳細を見る

テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

雑音への批判
西村雅史という人が、当ブログの過去の記事http://noir731.blog106.fc2.com/blog-entry-110.html
に触れ、「凄い。AKB48でシコらないのはスターリニストなんだそうな」などと記していた。
http://sinzinrui.blog.so-net.ne.jp/2010-08-06
驚いたのはこっちの方だ。一体どこをどうひっくり返したらこんな奇天烈な解釈が生まれてくるんだ?断片的な単語を組み合わせて、妄想をブクブク膨らませていったということか。正直、この思考回路は私などにとって想像を絶している。
私の主張ははっきりしている。「文化をイデオロギー的物差しで断罪するような行為は許されない。それは悪しき文化スターリニズムである」ということだ。
あまりにもレベルが低いので、これ以上わけのわからない話に付き合うつもりは無い。
ただ、この西村という人物にはもっと基礎的な国語力をつけて欲しいと思う。

テーマ:日記 - ジャンル:日記

真面目に語らせていただきます
「もうひとりいる」(監督・脚本:柴田一成)
ドッペルゲンガーといえば、ポーの小説「ウィリアム・ウィルソン」を始め、様々なジャンルにおいて扱われてきた題材である。本作もそうした流れのうちに位置づけられるといっていいのだろう。

さて、肝心の出来映えであるが、どうにもコメントのしようがない。
まず、脚本が酷い。どう考えても不自然な言動が多すぎる。登場人物たちは意地でも事態を解決しようとしないし、危険を避けようともしない。一体何なのか。
演出も酷い。俳優の演技にはオーバーアクトが目立ち、最悪の意味でマンガ的である。コメディか?
そもそも、真昼間のホラーとは何事か。多くの作家達が白昼のホラー映画に挑み、悉く失敗しているのを忘れたか。それでも新たな可能性を賭けるのなら、脚本の練りこみなど、相応の下準備が必要である。
低予算が低品質の言い訳にならない事は、今日もはや自明の理であろう。
もしも製作者が「中高生向けだからこれでいい」と考えたとすれば、それは中高生をバカにした発想である。
本来、笑いものにするしかないような代物であるが、映画言説の貧困化を嘆く四方田犬彦氏の提言(「図書新聞」2978号)に従い、大真面目に語ってみた。製作者には猛省してもらいたい。

もうひとりいる COMPLETE COLLECTION [DVD]もうひとりいる COMPLETE COLLECTION [DVD]
(2004/07/07)
佐久間信子世那

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

夏の夜のホラー談義
「友引忌」監督:アン・ビョンギ
2000年に発表されたアン・ビョンギの作品。「コックリさん」に見られた、いじめ、疎外といったテーマはこの時点から表われている。これをパターンと見るべきか、こだわりと見るべきか、現時点では何ともいえない。
ホラー的要素と共に、グロテスクな愛憎劇がじっくり描かれる点から、本作を一種の青春群像劇と見てもいいだろう。ラストもかちりと決まっていて見事である。
尚、画面の明滅がやたらと激しいシーンがあるので、鑑賞の際は注意していただきたい。

友引忌 [DVD]友引忌 [DVD]
(2004/11/25)
ハ・ジウォンユ・ジテ

商品詳細を見る


「ボイス」監督:アン・ビョンギ
携帯を題材にする点は三池祟史の「着信アリ」の影響と思われる。
だが、少女売春(援助交際)や不妊治療の問題など、現代的な記号をちりばめる点で、本作は人間ドラマの要素が強い。不倫関係が泥沼化していく有様は鬼気迫る勢いである。
終盤の展開ははE.ポーであるが、このあたり、古典ホラーへのオマージュも忘れてはいない。
映画の本筋とは少しずれるが、ヒロインが遺伝上の娘に向ける想いは複雑で、他人事とは思えない。わが国でも代理母の問題など、法整備の必要性が唱えられているが、人の心の問題はそう簡単に整理の付くものではないだろう。
傑作というほどでもないのだが、良質な佳作だったと思う。

ボイス [DVD]ボイス [DVD]
(2003/10/16)
ハ・ジウォンキム・ユミ

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

書かれざる終章
井上光晴の詩に次のようなものがあった。

四月長崎花の町
八月長崎灰の町
十月烏が死にまする
正月障子が破れ果て
三月淋しい母の墓

うろ覚えなので、正確ではないかもしれない。「町」は「街」だったろうか。
久しぶりに、彼の作品について色々考えてみた。井上光晴といっても、現在この名前を知る人は少なくなっているかもしれない。かろうじて、原一男の「全身小説家」によって記憶されている程度ではないだろうか。小説家・井上荒野の父でもあるのだが。
一読すればわかるように、井上光晴の小説作品は殆どが尻切れトンボである。劇的な構想を練り上げ、物語が大きな転機に差し掛かる時点で、突然小説が終わってしまう、それが井上のいつもの手法だった。「現代」に終わりは無いので、結末を提示しないことにより、まさに我々の生きるこの時代性に直結するのである…そう言いたいようだった。
だが中途半端でストーリーを放り出す「前衛的」手法は、今考えてみると到底うまくいっているとは思えず、もっとオーソドックスに結末をつけるべきだったと思う。ストーリーに結末をつけた上で、終わりの無いテーマが提示される。それがこのタイプの小説の意義だと思えるからだ。

私の読んだ範囲では、「胸の木槌に従え」「心優しき叛逆者たち」「未青年」あたりが一番印象に残っている。全集、作品集が生前に数種出ていたが、単行本未収録の長編小説はまだまだ多い筈である。どうも出版される見通しも無いようだが、このまま埋もれてしまうのだろうか。実に残念である。

 ↓ 「明日」。こちらは原爆投下前日の長崎を描いた作品。黒木和雄の映画版を観た方も多いと思う。映画版の方はちゃんと結末をつけていた。

明日―一九四五年八月八日・長崎 (1982年)明日―一九四五年八月八日・長崎 (1982年)
(1982/05)
井上 光晴

商品詳細を見る

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

邦題が泣く、原題も泣く
豚小屋(監督:スチュワート・ホープウェル)
原題は「スローター」。よって、パゾリーニの寓意的映画とは何の関係も無い。
反芻しているうちにむかっ腹が立ってくる作品。
まず、人間ドラマとしては、犯人にひとかけらのシンパシーも感じられない。これじゃ、ただの不愉快なバカ女だ。虐待が全てのエクスキューズになるわけが無いのだが、この作劇、そもそも製作者の姿勢に問題はないか。
もしかすると公正中立を求めようとして、「客観的」に突き放しているのかもしれない。「父親の行為は許せないが、犯人の行為も許せない。だからどちらの立場にも立つべきでない」といった具合に。
結果、出来事の表層を撫でただけの薄っぺらな作品が出来上がった。
どちらの立場にも与し難いのなら、逆にそれぞれの人間性の奥底まで分け入って描くべきだった。善悪の次元を超えた、人間性の真実の部分を掴み取っていく事にこそ、ドラマ作りの使命がある筈だ。
森鴎外の言い草ではないが、傍観者というのは多くの場合、人を小馬鹿にしているものである。
ホラー、スラッシャー映画としても、成立しておらず、あらゆる面で中途半端に終わった作品。

豚小屋 [DVD]豚小屋 [DVD]
(2010/02/10)
ルーシー・ホルトエイミー・シールズ

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

「Legend」を聴きながら
「創」9・10月合併号を買う。「ザ・コーヴ」特集。先月号はネットで配信済みの記事が殆どだったが、今回は全て初見の内容。とても読み応えがあって面白い。新右翼と主権回復会メンバーとの激論など、本誌ならではの特集だった。しかしこのメンバー、不勉強過ぎるな。
本号には、引き続き「非実在青少年」問題の記事も掲載されている。我々規制反対派にとって、今一度意識を引き締めるよう喚起する、有意義な記事であった。




会社の帰りがけに中古CDを買う。ヘンリー・カウ「Legend」。好き嫌いが分かれそうな音だが、聞き込んでいくとハマるかも。

LegendLegend
(1991/05/13)
Ana D

商品詳細を見る

テーマ:雑誌 - ジャンル:本・雑誌

走れ、走り続けよ、
「キネマ旬報」8月下旬号を買う。今日、広島で初日を迎えた「キャタピラー」も特集されており、若松、寺島両氏のインタビューの他、足立正生による小論が掲載されている。読み応えがあって面白い。
足立はこの閉塞的な時代状況の中、「若松孝二に立ち止まる権利は全く無いだろう。遮二無二疾走し続けることこそが要求されている」と結論する。全く同感である。また、この事は他ならぬ私たち自身にも要求されている筈であり、我々もまた、それぞれの場所でひたすら走り続けなければならない。

さて、そうした走り続ける映画のひとつ、「ドキュメンタリー頭脳警察」(監督:瀬々敬久)のDVDが発売された。この映画、数ヶ月前にオールナイトで全作観たが、やはり圧巻。デジタル撮影のせいか、大画面で観ると画質に粗さが目立つのだが、それを上回る力の籠もった映画だった。頭脳警察のファンは勿論、これまで聴いた事もなかったという人にも是非観てほしい。このガッチガチに窮屈な時代、頭脳警察はぴったりくる筈である。

ドキュメンタリー 頭脳警察 [DVD]ドキュメンタリー 頭脳警察 [DVD]
(2010/08/06)
PANTA/TOSHI/菊池琢己/中谷宏道/中山努小柳”CHERRY”昌法/遠藤ミチロウ/三上寛/重信メイ

商品詳細を見る



テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

左翼ゴロこそ仕訳しては如何
何かだるい。今日は一日中ダイ・インを決め込みたいところだが、そうもいかず、会社に向かう。
週刊金曜日で北原みのりがAKB48をコキ下ろしていた。その容姿や活動が「男に媚びる」ものだからということらしい。そして、それに喝采を送るロリコン男性を盛んに罵倒している。性的指向/嗜好は党が定める!とでもいいたいらしい。「男に媚びてきた顔が…」という永田洋子の言葉を思い出した。
私自身、このタレント集団に何のシンパシーもなく、散々小馬鹿にしてきた口である。ただ、北原のような愚昧なスターリニストを苛立たせているところをみると、それだけの文化的意義は認めてもいいのかもしれない。
鉄条網を切れ
折角名前を出したので、「ワシントンの銃弾」。ザ・クラッシュの名盤「サンディニスタ!」より。
結果的に、ワシントンの銃弾はニカラグアにもやって来た(しかも壮絶)のだが、それは後知恵。
尚、この曲で、私は初めてビクトル・ハラの名前を知った。




テーマ:今日の1曲 - ジャンル:音楽

ワシントンの銃弾
「プレデター」(監督:ジョン・マクティアナン)
この映画、初めて観た。基本的に密林冒険物だが、これ、宇宙人である意味が果たしてあるのだろうか。まぁ、その方が奇抜で楽しいのは事実で、野暮は言いっこなしといったところか。
話の内容は川口浩探検隊のようなもので、プレデター=猿人バーゴンといったところだろう。昔からある秘境冒険物の基本パターンを忠実に守り通した、娯楽活劇であるといえる。

だが、作品は予期せぬところで、製作者の無意識を表してしまう事がある。やや妄想めいているかもしれないが、天邪鬼な考察を少々加えてみたい。
この作品の舞台は中南米の架空の国である。そして本作の制作時期は1980年代、中南米の各地で野蛮な独裁政権が、アメリカの肝煎りで林立していた時期である。冒頭の反政府ゲリラのモデルはサンディニスタ民族解放戦線だろうか。
本作のあらすじを今一度確認すると、ゲリラを殲滅したアメリカ軍がその帰路に、今度は自らが怪物の標的になるという話であった。だが、前述の時代背景を考えると、「プレデター」にはアメリカがこれらの解放闘争に抱く病的な恐怖心が、無意識のうちに反映されているのではないだろうか。つまり、ゲリラ兵士達はモンスターであるというわけだ。
征服者、統治者に対する叛乱の記憶が、怪物譚の形をとって語り伝えられることは古来よりよくある話である。我が国でいえば、「土蜘蛛」などがその典型である。本作がそうした手法を期せずして踏襲している、というのは考えすぎだろうか。
残忍なアメリカ軍兵士達が、密林の中で次々と倒されていく話、そんな観点から本作を見直すと、また興味深いかもしれない。

プレデター [DVD]プレデター [DVD]
(2004/04/02)
アーノルド・シュワルツェネッガーカール・ウェザース

商品詳細を見る

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画



プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



のわーるのつぶやき



最新記事



カレンダー

07 | 2010/08 | 09
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -



最新コメント



過去記事のアーカイブ



カテゴリ



最新トラックバック



2010年「国際ジュゴン年」



検索フォーム



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QR



RSSリンクの表示



全記事表示リンク

全ての記事を表示する



FC2カウンター