時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
うらみはらさでおくべきか!
「コックリさん」(監督:アン・ビョンギ)
一種の魔女狩り物のストーリーを基にした作品で、都市伝説の「トイレの花子さん」をも明らかに参照している。コックリさんの呪文には日本語が登場するのだが、この遊び、日本から伝わったものだろうか。
アマゾンでの評価は散々だが、ドラマとしてはよく出来ているし、なかなか面白い。私がイカモノ食いのせいなのか?個人的には、ホラーは全てダークファンタジーだと考えているので、怖さを基準に判断する必要はないと思うのだが。
もっとも、ラストの親子のシーンはやや蛇足で、くどく思える。二人の情愛については本編で充分説明できているので、もっとそぎ落としてもよかっただろう。

あと、整形かもしれないが、キム・インスク役の女優さん(イ・ユリ)がやたら美人だった。これこそ蛇足の感想(笑)

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(2006/10/27)
イ・セウン; イ・ユリ; キム・ギュリ

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夜ひらく
「恐怖」(脚本・監督 高橋洋)
昨日アリエッティの直後に劇場を替えて観た作品。
まず少しも怖くない。エンディングも肩すかしの感を否めない。だが、個人的には楽しめたし、嫌いになれない作品である。導入部の期待が裏切られたことは些か残念だが、夜の病院の雰囲気がいい。真っ昼間のホラーが多い中、夜の雰囲気を基軸に据えてくれたことは、嬉しかった。

↓ 原作らしいが、こちらは未読。

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(2010/06/23)
北野 勇作

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「インフェルノ」(監督:ダリオ・アルジェント)
大御所の登場である。だが、アルジェントもこの辺になるとちょっとキツい。あの豪奢な美的世界も影を潜め、平凡なホラー映画に近くなってしまった。
ガラスをぶち抜くシーンなどは相変わらず健在だが、あれは若い子がやるから象徴としての意味があるので、オバさんがやってもちょっと・・・やはり「「サスペリア2(プロフォンド・ロッソ)」の頃が一番良かったように思う。「恐怖」に肯定的で、こちらに否定的な評価をするのはどうかとも思うが、期待しているものが違うので、致し方ない。
本作は魔女シリーズの2作目。3作目が近年公開された「サスペリア・テルザ」である。「テルザ」は劇場で観たが、どうも今ひとつの感を拭えない。尤も、「改めて見直したら意外とよかった」という人が結構いるので、そのうちまた本作と共に見直そうかと思っている。

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(2007/10/05)
リー・マクロスキーアイリーン・ミラクル

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仮の宿りに・・・ おっと、カリ違い
「借りぐらしのアリエッティ」(監督:米林宏昌 脚本:宮崎駿・丹羽圭子)を観る。
何とか褒めようと色々反芻していたら、悪口しか出てこない事に気が付いた。
絵は綺麗だし、細部に対するきめ細やかな観察力は見事なものである。しかし、ドラマとして最終的に何が言いたかったのだろう。「人は他者とは共生できない、なぜならそのように出来ているから」という事か。
「わかり合えなさ」を描いた作品では、例えば大島渚の「愛と希望の街」が存在するが、そこには階級対立の堅牢な剛直性と、これに牙を剥こうとする峻厳たる姿勢が存在した。
本作には葛藤も煩悶も何もない。ただそのようになっている、というだけである。「もののけ姫」の方が、余程ジレンマに悩む姿があった。
また、「君達は滅び行く種族なんだ」って、何だこれは。いくらなんでもあり得ないセリフだろう。よっぽど憎い相手に喧嘩を売る時にしか使われない啖呵だ。それとも製作者は、難病患者はバカだと思っているのだろうか。脚本は駿御大がたずさわっているが、誰かダメ出しをする人がいなかったのか。
ついでにいうと、明らかに「魔女の宅急便」や「千と千尋」を意識した場面があるが(ジムシーみたいなキャラも登場した)、内輪同士でオマージュを捧げてどうする。恥ずかしくないか。

・・・些かムキになってしまったが、映画などアラを探せばいくらでも攻撃は出来てしまうので、これ以上叩こうとは思わない(「ゲド戦記」のときは、映画以外の場所であまりに叩かれ過ぎたので、擁護したことがある)。正直を言うと、出来映えこそ良くないものの、本作を駄作とまで言い切るつもりはないのだ。
理由は、もっと酷い映画がこの世にはいくらでもある、ということに尽きる。
「ハナミズキ」の予告編を観たときは、スクリーンに自動小銃をぶち込みたくなった。あれこそ許せないだろう。

キネマ旬報 2010年 8/1号 [雑誌]キネマ旬報 2010年 8/1号 [雑誌]
(2010/07/20)
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もっと暗黒を!
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(監督・脚本ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス)
この作品、やたら友人達の受けが悪いのだが、思ったほどひどくはない。
どちらかというと、肝試し的な怖さを狙った作品で、寧ろ邦画ホラーに近い。ホラージャンルではないが、ここでクリスティの「そして誰もいなくなった」を思い出してもいいだろう。いわば、得体の知れないものに対する恐怖である。
個人的な好みをいえば、終盤の廃屋探索のくだりをもっと強調したら面白かったと思う。尤も、かえってわざとらしくなるだけかもしれないのだが。
結局のところ、決して派手な怖さがあるわけではないが、割合スリリングで良質な作品というのが私の評価である。

尚、私は「リング」を観て笑ってしまったクチなので、怖い映画というのはあまりお目にかかったことがない。例外はTVアニメ「ゴーストハント」の「血塗られた迷宮」くらいだろうか。あれは本格的に怖かった。

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(2000/04/28)
ヘザー・ドナヒュー

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「酔える身を広大な空間にさまよわすものには、やがて宇宙の意識が意識されよう」-埴谷雄高
ある雑誌で、南北問題研究家の太田昌国が60年代の文化芸術について考察している。
この特異な文学的感性を持った運動家が、どのようにカウンターカルチャーシーンと付き合ってきたのか興味があったので、中々面白かった。
サド裁判の公判記録を枕頭の書にしていたとのくだりには、思わずにやりとした。私も同じような経験があるからだ。シュルレアリスム文学や、埴谷雄高作品の読書体験なども私と重なる所が多い。
もっとも怠け者の私などより、太田の読書体験の方がより広く、深い域にまで達している。文化的に無知蒙昧なスターリン型左翼が多い中、太田の仕事は貴重といえるだろう。
ただし、例の都条例や、その他マンガ表現の規制には、運動圏でもさすがに反対の声が多い。このことは強調すべきだろう。
同じ雑誌に掲載された、るいべはやみのマンガ「シエテちゃんVS非実在」は、青少年健全育成条例を左側から批判的に風刺したもので、なかなか愉快だった。

テーマ:雑記 - ジャンル:本・雑誌

マンガの話などあれこれ
聖悠紀著「超人ロック 嗤う男」第一巻を読む。前作の「エピタフ」は腰砕けに終わったので、今回は頑張って欲しいところ。このシリーズは、いい時と悪い時の落差が激しいので注意を要する。
今回はミリアム・グアンジという人物が話の軸となる模様。「凍てついた星座」のマーヤ・マーヤと雰囲気が似ているが、あそこまでハイテンションではない。
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聖 悠紀

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そういえば冬目景の「アコニー」の連載が終わってしまった。この作品はのんびり、だらだらと続いてくれるかと思ったが、あっさりと終幕を迎える事となった。いずれどこかでまた再開して欲しいと思う。
終わり方も相変わらず。初期の頃に顕著だった、カタストロフへの偏執こそ見られなくなったが、それに代わる突破口はなかなか見出せないようだ。作者も自覚していると思うが、或る種のパターンに陥ってしまっているので、奮起して欲しい。


テーマ:漫画 - ジャンル:アニメ・コミック

「アバタもエクボ」 この駄洒落を言った人はどれぐらいの数に上るのだろう
以前予告した超大作映画「アバター」を観る。基本的に3D向けに作られた映像なので、不必要な場面が多い。CGが凄いのは確かだが、1時間も見ていると飽きてくる。
ストーリーについてはというと、およそ予測の範囲は一歩も出ていない。案の定の展開だった。とはいえ、決してつまらないというものでもない。映画としての基本はしっかり抑えているし、複線も巧みに活かしている。今風の西部劇としては、そこそこの出来栄えといっていいと思う。
西部劇、と私は言った。しばしば指摘されているように、この作品は白人によるインディアン虐殺史を基にしている。その点は実に判り易過ぎるといってもいい。意地悪く観れば、白人の側からのエクスキューズとして見えないこともない。「白人だっていい奴もいたんだ」もしくは「白人は本当はいい奴だったんだ」といった具合に。
だが、殆どのアメリカ人はそもそもそんな事は考えていないような気がする。悪役の軍人を見て、「なんて野郎だ、ひどい奴もいるもんだ」なんて他人事として受けとめたのではないだろうか。

それにしても、主人公が特殊能力を備えた「選ばれた人」で、世界を救う救世主、というのは何とかならないか。この種のご都合主義的なパターンには些かうんざりしているので、もっと工夫して欲しかった。伝説のドラゴンを乗りこなし、ナヴィに受け入れられるシーンも、あっさりし過ぎている。
結論を言うと、駄作まではいかないが、騒ぐほどの映画でもない、そんなところだろう。

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勢いでもう一本。「ザ・トーチャー 拷問人」(監督・脚本:ランベルト・バーバー )を観る。
出来損ないの凡作サスペンス。あらゆる面において中途半端で、話にならない。amazonのリストにも無いので、画像はなし。

テーマ:私が観た映画&DVD - ジャンル:映画

捨子物語
バカバカしい画(一般向け)を描き進めるが、納得いかないので中断。少し頭を冷やそう。
献血に行く。このところ不摂生が続いていたので心配だったが、問題なく検査をパス。400ccの採血。またしても呪われた血を振りまいてしまった(いや、ジョーダンだって!変な病気とか持ってないから!)。


「トラック野郎大全集」を眺める。
決して踏み込んだ研究書などではないが、鈴木則文監督他、関係者のインタビューが中々楽しい。
ただ個人的には、一作目の捨て子のエピソードについて詳しく知りたいと思った。あの場面は黒澤の「羅生門」の痛烈なパロディであり、批判でもある。
志村喬演じる主人公が苦渋の表情を浮かべながら、終に発したどんでん返しの一言を、愛川欽也のジョナサンが完全にギャグにして笑いのめしてみせた。ここには、「そんなこと悩みながら言う事じゃねぇんだよ」という製作者の意思が見受けられ、庶民的バイタリティへの力強い信頼が籠められていると思えた。
この精神が、その後もシリーズを一貫して流れ続けている事は周知の通りである。

映画『トラック野郎』大全集 (別冊映画秘宝)映画『トラック野郎』大全集 (別冊映画秘宝)
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鈴木 則文宮崎 靖男

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テーマ:心に残る映画 - ジャンル:映画

何かの前兆か?
ウチのカメが卵を産んだ…つがいはいないから無精卵だろうが、何故?



テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

折角なので…
「ぼくのエリ」の話題に何度か触れたので、原題の基になったモリッシーの曲を挙げておこう。
ソロになってから全然聴いていなかったなぁ。


テーマ:今日の1曲 - ジャンル:音楽

魔女の世紀
森島恒雄「魔女狩り」を読む。以前から、中世・ルネサンス期の文化史に興味があったためである。
まず、構成がよろしくない。もっと時系列に、整理して欲しかった。
対象となる事例が、中世もルネサンスも絶対王政期も、全てごっちゃに提示されているため、全て同じ時代に起こった出来事として印象付けられてしまう。率直に言うと、教会大分裂に触れた、冒頭の「中世」という概念しか記憶に残らない。注意深く読めば、取り上げられた事例がどの時代の出来事であるかを把握できるのだが、この点は不親切のそしりを免れないだろう。
エピローグにはルネサンス期、絶対王政期の時代背景との関連付けがなされているが、本論中でもっとそこを掘り下げて欲しかったと思う。

だが、そうした不満はあるものの、本書が意義深い書物である事に変わりはない。
ルネサンス、宗教改革に始まるとされる近代的理性が、野蛮極まりない魔女裁判と共にあった事はいくら強調しても足りないだろう。
また、本書を読んでいてしばしば気になった事がある。こうした蒙昧さを支えるロジックには既視感があるのだ。私が何度も取り上げた青少年健全育成条例などはその典型だが、マスメディアにおいてしばしば見受けられるヒステリー現象、暴走する「正義」の氾濫などは現代の異端審問、魔女狩りといえないだろうか。
「正義」は政治用語である、と寺山修司は述べた。魔女裁判の野蛮な不寛容の内に、今日への教訓を見出す事は無駄ではないと思われる。

魔女狩り (岩波新書)魔女狩り (岩波新書)
(1970/06)
森島 恒雄

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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

切れ切れの断想
キム・ヒョンヒ来日で騒がしい。あの北の国のことを考えると橋本忍の「私は貝になりたい」を思い出すのだが、気のせいだろうか。中居正弘主演作品は期待通りの凡作だったが。

そういえば先日、某超大作映画を途中まで見たままとなっていた。途中までというのは、1時間ほどで飽きてきたためである。この先のストーリーもおよそ想像が付いてしまう。おそらく、予想と寸分違わない筈だ。まだ返却日まで期間があるので、見終わったら感想を書くつもり。

以前紹介した「ぼくのエリ」の邦題が、すこぶる評判が悪いらしい。そんなに騒ぐ程のものなのか?意味もなくアメリカ語の邦題をつけるよりはマシだろう。あれが、「レット・ザ・ライト・ワン・イン」だったら目も当てられない。ルー大柴じゃあるまいし、一体どこの国の映画だ?
以前、フランス映画にわざわざアメリカ語の邦題をつけるような愚行に何度かお目にかかったことがあるが、植民地性を言祝ぐのもいい加減にしてもらいたい。
例:マルティール(殉教者)→邦題:マーターズ
ノートル・ミュズィーク(われらの音楽)→邦題:アワー・ミュージック

↓ 映画は素晴らしいが、とにかくひどい邦題だね。あと、「ヒア・アンド・ゼア」もそうだった。
その意味では、「キャタピラー」も工夫がない。
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ジャン=リュック・ゴダールナード・デュー

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テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

魂を犬にくれてやった
サムライミ監督「スペル」を観る。怖い映画というよりはむしろ、ショックで脅かす映画。まじめに考えて観てしまうと、やたら後味の悪さが気になってしまう作品である。
あの主人公、どう考えても可哀想だ。殆ど理不尽なイジメに近い。スティーヴン・キングの「痩せゆく男」と着想は似ているが、あの程度で呪われるくらいなら、私など一万回は魂を食われているはずだ。
よって、鑑賞法としては余裕を持った心で、ケラケラと無茶さ加減を楽しんでみるのがお勧め。まぁその意味でも、いつものサムライミの作品である。

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やり切れない…
プリンターが逝ってしまった。で、急遽新品を購入。中古も考えたが、インク代や諸々のリスク等を勘案し、思い切って新品の購入を決めた。
PC関係のトラブルは一日がかりになってしまうのが不愉快。予定外の出費も痛い。
気を取り直して、森島恒雄「魔女狩り」を読み始める。いわばルネサンス裏面史であるが、詳しい話はまた後日としよう。今日は不毛に疲れた。




「日本政府が提唱する文化など、ただ表面だけの奇麗事とチャンバラだけではないか」
「若松孝二全発言」を眺めてみる。
但し、全発言というのは正確さを欠く。実際には取捨選択がなされているので、むしろ、発言集と題した方がいい。例えば実録・連赤関連の発言は意識的にカットされている。これには編者の平沢剛の意思が働いていると思う。おそらく、「若松孝二=連赤映画の監督」という固定観念を打ち破りたいのだろうし、その意図は正当である。
若松の言説はベルリン映画祭出品作「壁の中の秘事」から始まる。その後、ポルノ文化論、また、連合赤軍事件やリッダ事件を背景にした文化時評を経て、最新作「キャタピラー」のコメントに続く。彼は決してインテリではないが、直感的に、極めて斬新な視点を提示することが多い。「日本流血列島の記」などは今読んでも斬新である。
ただ、マリリン・モンローへの評価は世代的な刷り込みの域を出ず、普遍性がないと思える。しかしこの頃から吉永小百合の悪口を言っていたんだな。「母べえ」の時も、「あんな大根役者!」なんて散々毒づいていたのを私は聞いている。あの時はトークショーの司会者が、「まあまあ、そのうち映画に出て貰う事もあるかもしれませんから」などと、とりなしていたが、「あるわけねえだろ!」とにべもない返答。うん、あるわけないよなぁ。
だが、山田洋次に対する批判はかなり本質的な点に触れている。若松は、山田のポルノ映画へのあからさまな蔑視感情を批判した上、「男はつらいよ」に表出された「日本人の心」は「ダメな心」であるとする。この指摘は重要である。
また、本書で指摘されているように、山田洋次は「プライド 運命の瞬間」(伊藤俊也監督)の上映反対運動に署名しているが、これらの点から日本の自称進歩主義者達の欠陥が浮き彫りになってくると思える。

それにしても、こうして一冊の書物として纏めてみると、若松の語ることは本質的な点で変わっていないことに驚く。カウンター・カルチャーという言葉も久しく聞かないが、ともあれ、刺激的な概念が豊富に詰め込まれた、有意義な書物だった。




テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

「ピンク映画はゲリラなんだ」
寺島しのぶが何か言っているらしい。
「キャタピラー」について、日本のマスコミが「脱ぎっぷり」ばかり強調しているのが不満なのだそうだ。
まだ全国公開前だし、もっと堂々と構えていればいいのにね。エロ映画のつもりで観に行った人が、衝撃を受けて考え込んだとしたら、してやったりだろう。
ちなみにこれ、若松監督の受け売りである。若松のピンク映画はいつもそうだった。
(例:「処女ゲバゲバ」←処女なんか出てこない 「犯された白衣」←犯っていない、但し、殺っている)

さらに気になる事がひとつ。寺島にはポルノ文化に対する蔑視感情がないだろうか。海外でのインタビューに対し、「これ(キャタピラー)はピンク映画ではない」と強調していたという。
ここには寺島のピンク映画に対する無理解が表れている。ピンクというのはベッドシーンを入れておけば、後は何を描いてもいいというものなので、若松プロはそれを逆手に同時代を告発する作品を作り続けてきた。
その意味では、やっている事は当時からあまり変わらないのである。先のインタビュアーも、近しいものを感じたからこの質問をしたのではないだろうか。だから、答えとしては「ご自由に判断してください」くらいでよかったと思う。

前売りは一般が千円とお買い得。先行上映のチケットは残念ながら売り切れで、涙を呑んだ。
(尚、このたび若松の発言集という、ユニークな本が出版された。今日感想を書くつもりだったが、長くなったので明日以降に回す)




テーマ:映画情報 - ジャンル:映画

「キャタピラー」ではなく、「芋虫」
折角なので、「芋虫」の感想を書くことにする。
かなり乱歩の原作に忠実に仕上げたな、というのが読後の感想。
ただ、相変わらず絵は見事だが、内容的に今ひとつな印象を受ける。原作に忠実な分、逸脱したところがない。旧作の「腐った夜」の方が良かったと思う。
私は丸尾の初期作品に入れあげた事があるが、この乱歩シリーズはどうも窮屈で仕方がない。「うんこスープの作り方」など、出鱈目さを絵に書いたような、初期の八方破れな作品の方が好きだった。
もっとも、見方を変えれば、それが「成熟」ということなのだろう。ただ、あの頃の妖しげな夢幻世界に触れることはもう無いのかと思うと、少し淋しい気がする。

芋虫 (BEAM COMIX)芋虫 (BEAM COMIX)
(2009/10/26)
江戸川 乱歩丸尾 末広

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テーマ:マンガ - ジャンル:アニメ・コミック

ブラッド・ミュージック
会社帰り、銀座まで出る。映画「ぼくのエリ」(監督:トーマス・アフルレッドソン)を観るためである。途中で丸尾末広の「芋虫」を購入。
さて、映画の方は、ハートフル・スプラッター・純愛ホラー(何だそりゃ)。ヴァンパイアの少女との血まみれのラブストーリー。今年は新作を殆ど観ていなかったが、まれにみる快作だった。正直、ヴァンパイア物は大のお気に入りなので、かなりこだわりがある。それだけに納得いかない代物も多いのだが、今回良質な作品に出会えたことは、喜びだった。
そういえばブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」は途中で身辺が忙しくなったため、投げ出したままだった。レ・ファニュの「カーミラ」は楽しく読んだ経験がある。こちらはレズビアン・ホラーで、吸血鬼物としてはこちらの方が本家本元にあたる。個人的な好みを言えば、吸血鬼役は女の方が面白い。


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ラ・フェット・コンティニュ
フランスでブルカ禁止の方向であるという。下院で決議したらしい。差別だからブルカ禁止というならスカートも禁止だよなぁ。スコットランドの民族衣装では男性のスカートというものがあるが。
そもそもフランスのブルカ人口は極少数だ。そう考えると、一種のコスプレ禁止法ということにならないだろうか。フランス人がお揃いの人民服みたいな衣装着て、パリ祭に参加する日も近いのか?



パリ祭といえば…あれ?今日だ。フランスの革命記念日(1789年7月14日)ということで、「祭りは続く」。エディット・ピアフの歌でお楽しみください。



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感想にならない感想
「廣松渉 マルクスと哲学を語る」
一通り眼を通したのだが、おいそれと感想を書けるような書物ではない。それでも折角予告したのだから、心に浮かんだ事は記しておこう。
まず本書は廣松渉の単行本未収録の講演集であり、マルクス主義、物象化論、主客図式の超克、関係主義、四肢構造等(これらの項目は、概念として殆ど重複している)、廣松哲学のエッセンスを一通り集めたものである。
講演という性格のせいか、あまり深い議論に踏み込む事がないのが些か物足りない。その代わり、あの廣松文体が見られない分、読みやすくなってはいる。
ただ、ドイツ語の概念がそのまま提示されているのが難点である。これは「世界の共同主観的存在構造」などの論文にも見られ、ドイツ語を解しない者にとって、読解を著しく困難にしている。私は漢語調の廣松用語は嫌いではないのだが、このドイツ語は勘弁して欲しかった。
語られている内容は従来の廣松哲学の内容の踏襲であり、真新しいところはあまりない。ただ、講演向けに整理された、違った語り口から廣松の思考を体験していくという楽しみはあるだろう。
末尾のインタビューには「存在と意味」の続編となる部分のヒントが示唆されており、中々興味深かった。

廣松渉マルクスと哲学を語る―単行本未収録講演集廣松渉マルクスと哲学を語る―単行本未収録講演集
(2010/04)
廣松 渉

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参院選の総括
うんざりするが、参院選の総括。
「炎上選挙」だったというのが正直な感想。「炎上」はネット用語の方の「炎上」。マスメディアが囃し立て、大騒ぎした挙句、マスヒステリア的に自民党に票が流れた。そこにあったのは「分析」でも「判断」でもなく「気分」「空気」であった。
無論、今に始まった事ではない。この兆候は嘗て社会党が大圧勝した時に既に始まっていたし、前回の政権交代劇もその延長だったかもしれない。結局、この国はそのようにしてしか動かないものなのか?
「肉屋を愛するブタ」というのは、判断力のないマンガファンを指すばかりではない。今や、自民党を熱烈に支持する自称愛国者の謂いでもある。この政党が我々を守るつもりなどさらさら無い事は、歴史が証明している筈なのだが。
いつの時代も、大衆というのは捉えどころがない。ゲバラを密告したのは農民だった。彼が命を賭けて守ろうとした存在である。今さらながら、暗澹と広がるナロードの海に茫然とする。
私も票を投じた保坂展人氏の落選は痛手だったが、無論、我々の闘いはまだまだ続く。あきらめたら終わりだ。
保坂氏にも次こそは国政に復帰して欲しい。

テーマ:日記 - ジャンル:日記

つかこうへい逝く
演劇に疎いので、つかこうへいの作品に接することは殆ど無かった。ただ著作は家にあったし、子供の頃から名前くらいは一応心に残っていた。ただ、生来の天の邪鬼のせいで、人気者には手を出しにくく、遠くから遠望するといった関係が続いていた。
意識したのは若松孝二の映画「寝盗られ宗介」くらいだろうか。題名から引いてしまう人も多いかもしれないが、あっけらかんとした軽やかな喜劇だった(ラストシーンは若松監督の発案)。笑いが止まらなかったことを告白しておきたい。
また世の中が詰まらなくなったなぁ、そう思うこの頃である。

寝盗られ宗介 [DVD]寝盗られ宗介 [DVD]
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原田芳雄藤谷美和子

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塗ってみた
以前描いた落書きに着色してみる。取り敢えず、決勝には間に合った。
単にブブゼラ/ブルセラという駄洒落をやりたかっただけなのだが、ブルマ属性が無いためセーラー服のみのイラストと相成った。
実はこの楽器、少し気に入っている。あのハタ迷惑な所がいい。

Vuvuzela1

参院選の日に
ゾンビは嫌いだ。映画や小説、漫画だけにして欲しい。
尤も、映画も皆同工異曲に思えてあまり好きではないが。

そんなわけで、フェラ・クティのプロテストソング「ゾンビ」


テーマ:今日の1曲 - ジャンル:音楽

ブラッディ・クリスマス
「ブルークリスマス」監督:岡本喜八 脚本:倉本聰
UFOが登場すると聞いて、SFものを期待してしまうが、むしろ山上たつひこの「光る風」や永井豪の「デビルマン」を髣髴とさせる作品。
未知の存在に対し「何か起こってからでは遅い」と様々な権謀を用いて、排除、抹殺を企て、徹底したファシズム体制を完成させる国家権力の姿を描く。率直にいって、ホラー映画よりも遥かに怖ろしい。人間にとって一番怖ろしいのは人間という事か。まさに治安パラノイアと化した今日の事態を予言したような怪作だった。

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「お前さん、死んで生きたんだよ!」
「座頭市海を渡る」監督:池広一夫 脚本は何と新藤兼人。
「座頭市版・真昼の決闘」と評している人がいたが、言い得て妙。尚、こちらの方が敵の数は多く、壮絶な殺陣が繰り広げられる。山形勲の凄みある悪党ぶりは圧巻である。
作中の狡猾な農民達の姿は、大衆の狡猾さを表している。他人が困っている様子は何十年でも傍観していられる、というセリフは今日の様々な問題にも置き換えられそうだ。
安造の死は一見犬死ともとれるだろう。この辺りは身も蓋も無いリアリズムだが、これは努力しても報われない庶民の姿でもある。死に物狂いで真面目に尽くしても、報われる事の無い人々の姿を新藤は「狼」で描いたが、本作の安造もその延長線上にある。そんな彼の姿に共感を寄せる製作者の姿勢は忘れないで欲しい。

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絶頂期の黒澤と対峙する
四方田犬彦「「七人の侍」と現代」を買う。四方田が黒澤映画を真正面から論ずる事はあまり無かったので、実に興味深い。
冒頭を少し読んだが、「八月の狂詩曲」を「これは悪い作品ではない。正確にいえば勉強不足の作品なのだ」と喝破しているくだりは、実に見事である。また、キューバやパレスチナなどにおける黒澤受容のあり方については大きく考えさせられた。
私自身は黒澤映画をそれ程多く観ている訳ではない。「姿三四郎」「続・姿三四郎」「虎の尾を踏む男達」「静かなる決闘」「醜聞」「羅生門」「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」「乱」「夢」「八月の狂詩曲」…それなりに観ているか。ただ、見ていない作品に代表作が沢山あるため、多く観ているという感覚が無いのだろう。
黒澤が晩年にスペクタクル大作から離れた事は良い事だったと思う。ただ、それが成果として結実しないまま終わってしまった事は、いかにも残念であった。

『七人の侍』と現代――黒澤明 再考 (岩波新書)『七人の侍』と現代――黒澤明 再考 (岩波新書)
(2010/06/19)
四方田 犬彦

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廣松本を一日七百ページ読める人、どなたかいらっしゃいますか
「廣松渉 マルクスと哲学を語る」を読み進める。少し前に買った本で、ほったらかしになっていたもの。尤も、我が家に所蔵する廣松本は殆どが同じような状態なのだが。
以前、サルトル学者の海老坂武が廣松への敬意を示しながらも、「フランス語のいかなる難解な文章よりも廣松の文章は難解であり、それ以上に、読む喜びのまったく感じられない文章だったのだ」と著書で告白したことがある。私はこの文章を読んで、ああ、海老坂さんはやっぱり文学の人なんだな、と何だか嬉しくなったものである。
廣松の文体は独特の味のある文体なので、悪文というのとは違う。ただ、カントやヘーゲルなどの哲学書を読み慣れていないと、その論理のうねりのようなものを掴むのが難しいと思う。かくいう私も学生時代、何ら哲学的素養がないまま廣松を読もうとしていたので、ひどい目にあったものである。まともに読み通した著作はほんの数冊を数えるのみでしかない。
現在のところ、何となく勢いで読めそうなので、卒読したら感想を書くつもり。

廣松渉マルクスと哲学を語る―単行本未収録講演集廣松渉マルクスと哲学を語る―単行本未収録講演集
(2010/04)
廣松 渉

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テーマ:本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

クレージーだよ、何とかならないか
噂をすれば影で、今月号の「創」に非実在青少年関連のレポート記事が掲載されていた。読みながら怒りに震える。闘いは決して終わった訳ではない。敵は叩き続けなければ何度でも息を吹き返す。気を抜かず、心してかからねばならない。

「コーヴ」の初日、鈴木邦男さんが殴られて流血したという。ニュースでは「混乱無く」って言っていたが、どういうことだ?ますます報道が信用出来なくなった。

そういえば今日、7月7日は盧溝橋事件の日。大学受験の際、七が三つ(193日)と覚えていたのを懐かしく思い出す。




自明の理
選挙が近いが、これだけは言っておきたい。
マンガを守らない奴らが、我々有権者を守るわけがない。
これって、意外と重要なバロメーターにならないかと考えている。



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のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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