時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
読書碌補遺
先日の読書禄で、抜けがあったのに気が付いた。
書物の題名は「毒ガス帯」で、作者はコナン・ドイル。コカイン中毒の探偵が活躍する話で有名な作家である。
本作はチャレンジャー教授が活躍する話で、「失われた世界」の系譜に属する。地球が謎の毒ガス帯に覆われ、人類滅亡の危機に陥るというもの。死屍累々のロンドンの様子は中々迫力があり、小松左京の「復活の日」を連想させた。勿論小松はこの作品を読んでいた筈である。
シリーズ物のお約束とはいえ、最終的にハッピーエンドになってしまうのが拍子抜け。皆殺しにしてはシリーズが終ってしまうので致し方ないのではあるが。
尚、本書には併録作が二本あるが、「地球の悲鳴」は私のお気に入り。地球に鉄槌を打ち込んで悲鳴を上げさせるというバカバカしいアイディアであるが、身も蓋も無いべらぼうさが心地よい。西尾維新の「悲鳴伝」とは違い、こちらは誰も死ぬことはないので、念の為。
ドイルの創作はSFや歴史物も数多いので、もっと読まれてしかるべきである。作品が絶版になっているのが残念なところだ。

ちょっと必要があって、山海関事件のことを調べていた。1933年のこと、京奉線山海関駅付近での爆破事件を機に、支那駐屯軍山海関守備隊と国民革命軍第九旅の間に勃発した戦闘である(戦闘には関東軍、帝国海軍も続いて参加した)。今日では落合甚九郎少佐の指揮による謀略事件として大方の見解は落ち着いている。だが、日本はこれを機に熱河侵攻、そしてリットン報告書への決議を受け、国際連盟脱退へと雪崩れ込むこととなる・・・
そういえば、共謀罪に対する国連からの書簡に嚙み付いていた官房長官がいたな。
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読書録 2017.5.20
共謀罪の強行採決で胸糞が悪い。
何故国会周辺に集まるのか?みんな黙ってられないからだ。「冗談じゃない」その思いが国会、そして各地の集会に足を向けさせた。「戦略的にー」だの、「効果を期待できる方法論ガー」などという高尚な寝言を語る連中は、能書きをたれる前に、人の気持ちに対する想像力を身につけるべきである。

この間読んだ本

・笠井潔「青銅の悲劇」
正直、ミステリーとしては精彩を欠く。だが、笠井の探偵小説論、そして学生運動の総括がちりばめられていて、充分読み応えはある。

・ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」
昔、小林秀雄が江戸川乱歩との対談でゴチャゴチャ文句を言っていたが、衒学の迷宮はやはり魅力的だ。小栗蟲太郎へと至る系譜の原型がここにある。

・綾辻行人「Another episode S」
アニメ化されたAnotherの外伝。ヒロインの鳴がキャラクターとして確立しているため、魅力的な作品とはなっているが、彼女がいなかったらつまらないものになったかもしれない。
・綾辻行人「人形館の殺人」
凡作。この手の叙述トリックはもう飽きた。ミステリーの鉄則で、一人称の主人公は・・・

・ピエール・カミ「ルーフォック・オルメスの冒険」
カミである。カミュではない。シャーロック・ホームズのパロディ作。トンチンカンな探偵がシベ超の水野晴郎以上に妙ちきりんな推理を展開し、めでたく事件を解決していくというもの。バカバカしくも、実に楽しい作品。
・ピエール・カミ「機械探偵クリク・ロボット」
同じ作者によるSF探偵物。今度はロボットが事件を解決する。この人の作風はボリス・ヴィアンの作品にも通じるものがあり、もっと評価されていい。近いうちに、ツン読だった「エッフェル塔の潜水夫」を読もうと思う。

・笹本祐一「カーニバル・ナイト」
・笹本祐一「ラスト・レター」
妖精作戦シリーズの3、4巻。今もって未読のままだったので、勢いで読んだ。ほろ苦い青春SF

・山本弘「MM9」
一般読者向けの、怪獣SF小説。なかなか面白く、ドラマ化もされているらしいがそちらは未見。続編があるのだが、少し方向性が変わるので保留。

・桜庭一樹「GOSICK PINK」
アニメにもなった「GOSICK」の外伝(作者による二次創作と言ってもよい)。RED、BLUEに続く最新作である。大戦中の仲間の死をめぐるトラブルがテーマだが、あまりミステリー色は強くない。過去にシリーズ本編のイラストを担当していた武田日向が急逝したことから、暫くツン読になっていた同書に手を出してみた次第である。

・莫言「赤い高粱」
舞台は語り部の「私」が生まれるずっと前。抗日戦と祖母の嫁入りの話が平行して語られる。汚物などの描写を露骨に行うのは中南米文学(遡ればラブレーだが)の影響だろうか。正直、この辺りの才覚はマルケスのほうがずっと優れている。
祖母の話は状況を掴むのに手間取るせいか、ややまだるっこしい。後半、祖母が自立するあたりから急に話が進み、読みやすくなるのだが。


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雑想 2017.2.10
ここ数ヶ月首の調子が悪く、いつも辛い思いをしていたのだが、昨日寝返りさえうてなくなったのをきっかけに病院に行ってきた。診断は頚椎椎間板症。決して珍しい病気ではない。頚椎の間隔が狭くなっていて、それが痛みに繋がっているわけである。色々と根を詰めすぎたか。中国訪問記の続編も発表したいのだが、取り敢えずは安静にするとしよう。
この間読んだ本
・クラーク「3001年終局への旅」
「2001年」に始まるオデッセイシリーズの最終作。今回はモノリスをぶっ潰す、神殺しがテーマである。序盤がまだるっこしい気がしたが、綺麗に完結した作品だった。ただ、個人的には「2001年」の啓示に満ちた雰囲気が好きだったので、その後の続編群でそれが失われているのは残念ではある。あれはキューブリックとの合作による産物だったのか。

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呪縛の起源
司馬遼太郎「燃えよ剣」を読了した。
何故今更司馬なのか。ひとつには、明治維新の大まかな流れをおさらいしたいと思ったこと、もうひとつは司馬遼太郎がこの時代をどう捉えていたかをより突っ込んだ形で知りたいと思ったこと、が動機である。
だが、本作でそこまで突っ込んだ考察を見出すことは難しい。基本的には土方歳三を主人公に据えた、ヒーロー小説である。激動の時代を人がどう考え、どう生きたのかを活写することは魅力的な作業に違いない。だが、司馬の筆致は充分にそこに行き届いているとは言いがたい。どこかお上品な見世物に留まってしまうのだ。とりわけ、恋愛描写などはあまりにも安っぽく、陳腐この上ない。この辺り、もう少し何とかして欲しかったと思う。
さて、明治維新についてである。司馬がこの時代を革命として捉えていることは「竜馬がゆく」と同様で、「さまざまな犠牲があったにせよ、紛れもない新時代の幕開けだったのだ」とする立場を保持している。言い換えれば、「革命には犠牲がつきものだ」ということでもある。だが、犠牲を払うことが輝かしい新時代を築くわけではない。南京大虐殺や原爆投下が新しい時代の幕開けをもたらしたわけでは、ない。明治維新は多大な犠牲を生み出したのだが、果たしてそれは革命だったのか。ここはもう少し批判的検討を加えたほうがいい。
とはいえ、明治維新にまつわる暴力が、ある意味で新しい時代を齎したということはできそうである。その時代とは何か。すなわち、帝国主義国家としての日本の誕生である。その意味で、「暴力は新世界の助産婦」として機能した。これが戊辰戦争を含めて行使された、圧倒的な暴力と大量死が齎した帰結であり、やがて八十年後に壊滅的な破産を迎えることになるのである。もっといえば、福島第一原発事故などに代表されるように、今日においてもその深刻な呪縛は残存していると考えられるが、ここはもっと突き詰めて考えてみたいと思う。

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読書のこと 2016.6.19
忙しい為、書物にじっくり目を通す余裕があまり無い。それでも、ここ最近では
パヴェーゼ「月と篝火」
ドストエフスキー「死の家の記録」
京極夏彦「豆腐小僧双六道中 おやすみ」
を読了している。
その他、短い随筆等は数多目にしているが、まとまった長いものを差し当たり挙げてみた。
感想を記してみたいのだが、「月と篝火」は、片付けの際に本がどこかに行ってしまった。ドストエフスキーは今更論じたてるのも気が引ける。「豆腐小僧」は感想を書きなぐってみたが、ちょっと今掲載する気になれない。
現在、ウンベルト・エーコ「プラハの墓地」を読んでいるところである。

出張先でスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ「戦争は女の顔をしていない」を入手した。地方都市なので、大きい書店のあるような場所ではない。そのため、通販のコンビニ受け取りサービスを利用させて貰った。長期出張ではこんな芸当が可能な時代になった。妙なものである。
所謂「大祖国戦争」に兵士として従軍した女性たちの証言記録であるが、詳細は読了した後に記したい。色々思うところはあるが、現段階で軽率なことを語るのは差し控えたいのである。

※パヴェーゼの本が見つかった。折角なので、さしあたり印象に残った箇所を引用させていただく。
「無知な人間はいつまでたっても無知だろう。なぜならば権力は、人びとが無知であることによって利益をえている連中の手に、政府の手に、黒衣の連中に、資本家たちの手に、握られているのだから・・・」(月と篝火)

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プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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