時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
病まない者のいずこにありや
安倍の訪米はカモネギ外交と揶揄され、惨憺たる結果に終わった模様。何をかいわんやだ。

共産党員の市議が、のぼせた反共青年に引っ掻かれたことが話題になっている。「社会の劣化が」と苦言を呈したくもなるが、よくよく考えればわたし達が学生の頃もキャンパスで情宣中に革マルの襲撃を受けたりしたので、それと比べるとどうなのかという気もしないではない。勿論、容認できない白色テロルであることはいうまでもないが。

Thomas Hauser ‘Le Spectre de la Rose’ 読了。
シリアルキラー(連続殺人犯)というと、なかなか常識的な思考では捉えづらい。通常の人間はそうそう殺人を犯せない。それが大量殺人となると尚更である。戦争においては殺人を犯すべく、精神の枷を破壊すべく訓練を行い、更に戦地という異常な緊張状態に置かれるので、また事情が異なるだろう。
松本清張の「ゼロの焦点」だったか、出自を隠すために大勢の命を奪う犯人の姿にわたしは違和感を覚えたものであるが、これがもっと記号化された探偵小説となると、ひとつの犯罪を糊塗するために大勢の人を殺したりなど、かなり無茶な展開すら存在する。
そんなわけで、大量殺人犯は通常、異常性格者として描かれるものである。これもイメージが安易に大量消費されている感が無いでもないが、きりが無いので絡むのはやめる。
本作はシリアルキラーを扱ったサスペンス小説だが、なかなか面白かった。ストーカーめいた片思いの恋人が実は無実だったというのはおおよその予想はつくだろうし、ミステリーを読みなれた読者であれば犯人も予想できるだろうが、読ませてくれる。一読すればわかると思うが、実をいうと、どの登場人物も心が壊れているのである。これが現代というものだろうか。たちが悪いのはやたら特定の人々を異常者扱いし、社会的排除を叫ぶ連中で、「健常とは最大の性格破綻」と言いたくもなってくるが、小説とは関係ないのでやめておこう。

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死体は日干しにさせておけ!
J.P.Manchette / J.P.Bastid 「Laissez bronzer les cadavres !」読了。ロマン・ノワールの大御所、マンシェットとしては初期の作品に当たる。

人里はなれた廃墟の中、女芸術家が仲間たちを招いて気ままな暮らしを続けている。仲間たちは弁護士から作家、荒くれ者まで多種多様だが、ある日その内の三人が金塊強盗を敢行する。その直後、偶然から警官が闖入したのをきっかけに仲間割れ。屯していた者たちを巻き添えにして三つ巴の殺し合いに発展する。このあたりの血で血を争う殺伐とした展開は、ハメットの「血の収穫」に通じる雰囲気がある。
女芸術家がかなり狂っていて愉快。男たちが殺し合いをしている中、花火をぶち上げたり、最後に生き残った一人を拍手で送ったり(結局この一人も死んでしまうのだが)、乾いた虚無感がなかなかいい。
しかし、エピローグはやや蛇足の感が無くもない。イカれた女芸術家以外、誰も生き残らない方が話としてはすっきりまとまったのではないか。「女達は争いに参加しない」というパターンもやや定式化され過ぎている。
尚、この小説、2017年に映画化されたという。予告編を見る限り色々改変された箇所もあるようで、興味深い。日本版のDVDも発売が予定されているらしい。

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愚者の遊戯
Morgan Folsom 「Un jeu de fous」を読む。
主人公は野生動物解放戦線なる組織の末端活動家で、ちゃきちゃきのアナーキスト。
そんな彼が組織の命により、ハイジャックの実行を企てる。妙な鸚鵡に邪魔されたり、様々なトラブルに見舞われるが、何とか彼は恋人と共にハイジャックに成功する。だが、組織は同志の解放交渉に失敗。実行犯の彼らをスケープ・ゴートにして延命を図ろうとする・・・

前半、主人公があまりにも滑稽な失敗ばかり演じているので、真面目に書いているのかギャグとして書いているのか判然としない。そのため、読む側としてはやや戸惑う。だが、読み終わった印象としてはなかなか面白かった。トリックスター的に話をかき回していた鸚鵡(名前は”チェ”)が、最後には重要な意味を持ってくるあたり、なかなか心憎い。「組織」の人間に対し、「汚ねえ犬っころ、ファシストめ!」と連呼し、主人公を援護する(ストーリー上では偶然だが)鸚鵡たちの群れは、自由を求める民衆意思の具現化とも取れるだろう。

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この醜悪なる世界
読んだ書物
村上春樹「スプートニクの恋人」
マンリー・W・ウェルマン、ウェイド・ ウェルマン「シャーロックホームズの宇宙戦争」
ベリャーエフ「ドウエル教授の首」
村上春樹「アフターダーク」
ヤン・ヴァイス「迷宮1000」

観た映画
静野孔文×瀬下寛之監督「ゴジラ 怪獣惑星」
フィリップ・リオレ監督「パリ空港の人々」
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督「神様メール」

海外ではジョニー・アリデイが世を去り、トランプがエルサレム承認で混乱を撒き散らし、国難宰相は責任逃れに汲々とし、ネット界隈では冷笑バカと自己愛性弾圧パラノイアばかりが目立つ。
吐き気がしそうなほど醜悪な情勢で、人間に対する不信感ばかりが募るが、這いつくばって生きるしかない。格好をつけた、華やかな人気者ばかりが世の中の全てではない。世界の大部分は虫けらのように扱われ、人として誰からも相手にされず、のた打ち回りながら生きる名も無き民衆によって成り立っているのだ。いい加減、舐めるな。

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読書録2017.10.11
何も書かないでいるのも何なので、最近読んだ本のことを記す。「タイタス・グローン」はかなり読むのがきつかったので後回しにレビューするつもり。

生田耕作「ダンディズム」
18~19世紀を魅了した、ボー・ブランメルなる人物の生涯を中心に、かれが残した様々な文化的爪痕を探る。だが、正直わたしはこの人物にあまり関心が持てなかった。ふぅん、といった程度である。こちらも年をくったせいだろうか。
とりあえず、時代に名を残した人物についていろいろ参考にはなったので、その点意義のある読書ではあったと思う。

ブロック「アーカム計画」
題名から窺い知れる通り、クトゥルフ物の二次創作である。「サイコ」の著者であるロバート・ブロックは実績のある作家なだけに、なかなか読ませてくれる。ナイアルラトホテップに翻弄される元夫婦の奇怪な運命を描いたものだが、ミステリアスで禍々しいクトゥルフ・ストーリーを飽きさせずに展開していく筆致は見事なものだ。
とどのつまり人類はめでたく滅亡を迎え、末尾にはとんでもないどんでん返しが待ちうけている。ラヴクラフトファンにはお奨めだが、残念ながら本書は品切れ状態になっているらしい。復刊により、多くの人の目に触れることを望む。

レム「枯草熱」
著者は「ソラリスの陽のもとに」のスタニスワフ・レム。私が読んだのは、今はなきサンリオ文庫版である。
枯草熱とは花粉症のこと。イタリアで立て続けに起きた謎の狂死事件の捜査に乗り出した元宇宙飛行士の主人公の姿を描く。舞台はイタリアからフランスにわたるが、日本人青年が空港で爆弾テロを起こす場面などがあり、時代を感じさせる。最終的に開発途中の化学薬品が原因であり、一定の条件が揃った際に狂気の発作が始まることが判明する。だが種明かしよりも、終盤に主人公が襲われる強烈な幻覚の描写が鮮烈だった。
大傑作というほどではないが、なかなかユニークな作品である。

この他、「ブラウン神父の知恵」を読み終えているのだが、こちらはもう少し色々腰を据えて考察してみたい。

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のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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