時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
高畑勲が亡くなった関係で何か一言あってしかるべきなのだが、目下ひどい鬱状態に襲われているため、機会を改めることにしたい。尚、彼の映画作品としては、「じゃりン子チエ」をもっと評価するべきと考えている。

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この所更新がなされていないが、私生活上でちょっとトラブルがあった。落ち着いたらまた色々報告すると思うが、かなり厳しい状態である。一体何の罰なのか。

読んだ本
・Boris Vian 「J'irai cracher sur vos tombes」
ヴィアンが別名義で書いた小説で、「ハードボイルド」と喧伝されている作品だが、どちらかというとかなりパンクなビート小説といった雰囲気だ。無軌道な青年たちが破滅を迎えるまでのストーリー。家庭に入って大人になるくらいなら、全部ぶっ壊して死んでやる。そんなメッセージが伺われるユニークな作品だった。
・George Simenon 「Le revolver de Maigret」
タイトル通り、メグレ物の一冊である。メグレがFBIから献呈された拳銃を盗まれる話。殺人事件の結末が明確にならず、モヤモヤした感じが残るのはこのシリーズの「らしさ」でもある。拳銃泥棒の青年に対して見せる、メグレの父性がなかなかいい。

観た映画
「真実ゲーム」(監督キム・ギヨン)
何故観ようと思ったのかよく覚えていない。アイドルの親衛隊の少女がふとした経緯により、当のアイドルを殺害するに至る話。世代間ギャップなどなかなか興味深い場面もあるのだが、今ひとつパッとしない作品だった。

vian tombes maigret revo

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相変わらず何も書く気がしない。
ル=グインの死についても一言あってしかるべきだろうが、この人の本は「闇の左手」と「ロカノンの世界」、「影との戦い」を読んだっきりで、あまり印象に残っていない。「闇の左手」で氷原をさまようシーンだけを鮮烈に記憶しているくらいである。一応ニュー・ウェーヴSFの旗手なのだが。

読んだ本
・笠井潔「天使は探偵」
・笠井潔「転生の魔」
・ティムール・ヴェルメシュ「帰ってきたヒトラー」上下
・Georges Simenon 「Maigret et l'affaire Nahour(メグレとナウール事件)」
・Georges Simenon 「Le fou de Bergerac(ベルジュラックの狂人)」
・Jean-Patrick Manchette 「L'affaire N'Gustro(ヌギュストロ事件)」

シムノンとマンシェットの本は長い間ほったらかしになっていたもので、今回漸く読むことが出来た。宿題に片をつけた気分である。メグレシリーズはほろ苦い作品が多いが、ナウール事件もそのひとつである。とはいえ、マンシェットの「ヌギュストロ事件」ほど救いの無い話ではない。こちらは政治活動家ヌギュストロと主人公が罠に嵌って殺される話だから。


観た映画
「ガールズアンドパンツァー最終章 第一話」 監督:水島努
「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」 監督:ライアン・ジョンソン
「青春夜話」 監督:切通理作
「ニノの空」 監督:マニュエル・ ポワリエ
「ゾンビ・サファリパーク」 監督:スティーヴ・バーカー
「パリ、カウントダウン」 監督:エドガル・マリー
「マジンガーZ infinity」 監督:志水淳児
「宇宙戦艦ヤマト2202 天命編」 監督:羽原信義
「現金に手を出すな」 監督:ジャック・ベッケル
「ヘドローバ」 監督:小林勇貴

manchette simenon

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自殺をめぐる随想
西部邁が亡くなった。自殺だという。
このひとについては知るところは多くない。「朝まで生テレビ」に出演していた保守派の論客で、早い話「転向者」というイメージしか持っていなかった。「新しい教科書をつくる会」なるいかがわしい団体とつるみ、「国民の道徳」なる書物を著すなど、いい印象は無い。本人にはまた別の思惑があったのかも知れないが。
その後、彼が虚無主義者を自認しており、わたしが目の届く範囲でのインタビュー等(例えば若松孝二や足立正生との鼎談など)を読む限り、やや違った印象があると感じた。右派論客としても、かなり屈折したものがあるなと思えた。だが、さして関心を抱くまでには至らなかった。
自殺の原因は詳らかにしない。私生活の事情か、思想的な帰結なのか。後者であれば、エトナのエンペドクレス以来の系譜に連なる思想的自殺者ということになる(その後の情報によると、どうも両方であるらしいが)。

ここからは一般論を語る。この世界が存在に値するかというのは映画「マジンガーZ infinity」のテーマであった。作中では「糞ったれでどうしようもないが、この世界を肯定する」という結論が提示されたが、これは「この世界は存在に値しないが、それでも自分は肯定する」とも受け取れる。
この世界が虚妄であり、生きるに値しないというのは左程奇矯な思考法とは思えない。「世界が空っぽであることは明らかだ」という三島由紀夫「午後の曳航」の科白は、わたしにとっても近しいものである。
虚無主義者の中には、「この世界は虚無なのだから好きなように生きればいい」というひともいるらしい。一方、「この虚飾をひっぺがし、虚無をむき出しにして、全てを滅ぼしてしまいたい」という願望を持つ立場もある。若年の頃、わたしは後者だったし、今でもどこかでそれを携えている。
世界を滅ぼすという行為は、自殺によって達成可能である。少なくとも認識論的には、世界はそこで消滅する。確か三島の「哲学」だったかの主人公は、そうした認識論的自殺を敢行した。「これが失恋自殺というやつである」という、突き放した虚無感が小説には漂っていたが、まあその話はどうでもいい。
自殺という行為にはやり切れない痛ましさがある。だいぶ以前、わたしも世話になっていた古い仲間が自殺した。随分長いこと会っていない間柄だったが、いいようのない虚脱感に襲われたのを覚えている。政治運動に絶望していたようだったが、ここではあまり憶測はしない。
わたし自身はヘタレなので、もう少し生きていようと思っている。憎まれて世に住む甲斐はなけれどもかわいがられて死ぬよりはまし。どこへ行っても虫けらのように扱われ、蔑まれ続けているが、結局はだらだらとみっともなく生き続けることになるだろう。
やり切れない。

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ひとつの死
塩見孝也が亡くなった。
今更解説するまでも無いが、共産主義者同盟赤軍派の建党者である。この人と直接会ったことは無いが、とにかく良い噂を聞かない人だった。彼に親しくなればなる程、やたら悪口ばかり言う人が多くなるのが特徴的だった。いい例が後に戦旗派を築いた荒岱介だろう。「昔は塩見さんの言ってることが全然わからなかった。今でもよくわからない。わからなくて良かったんだな!」といった具合である。
関西ブント時代に荒をオルグするため、床下に穴を掘って待ち受けていたというようなバカバカしい内輪話はまだいい。だが、妄想めいた前段階武装蜂起論、仏徳二リンチ事件などの醜悪な活動に至っては擁護しようが無い。
出獄後の連合赤軍総括論争では責任を森恒夫達に全部押し付けたり、北朝鮮をやたら称えてみせたり、その流れで民族主義団体を作ってみせたり、目に見える範囲でも珍プレーが多すぎた。あまり関わりたくないというのが、わたしを含めた大方の印象ではないだろうか。
学生の頃、塩見の家にはレーニン全集が一揃いあるきりで、他には何も無かったという。武装闘争と内ゲバに明け暮れ、獄中二十年。出獄後は駐車場の管理人として細々と暮らし、3・11後の情勢に対しては何とかしたいと思っていたようだが、そのままひっそりと亡くなっていった。荒岱介のように晩節を汚すことこそ無かったが、この人の人生は一体何だったのだろうな、と思えてならない。「「憂鬱なる党派」の岡屋敷のように生きられたら幸せなんじゃないか」と彼は語っていたというが、実際はどうだったのだろうか。

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プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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