時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
野望の翳り
野望の党とかいう団体が、そろそろ馬脚を現している。「自民危うし」とでも思ったのか、メディアの対応も早い。そもそも、党首は叩けばいくらでも埃の出る人物である。報道がその気にさえなれば、いくらでも追い込める筈であった。

一方で枝野幸男を筆頭に、立憲民主党なる政党が結成された。立憲民主党といえば、世界史の授業を思い起こす方も多いだろう。高校世界史のテキストを繙くと、ボルシェヴィキ、メンシェヴィキ、社会革命党(エス・エル)などの革命勢力に対し、有産階級の自由主義者によってつくられた改革政党、とある。略称はカデット。メンシェヴィキと共に二月革命後の臨時政府を担うが、国内の叛乱に耐えられず、ボルシェヴィキに破れ、弾圧を受けながら歴史から消滅していく・・・
閑話休題。別段わたしは茶化そうというのではない。この度の結党がよい結果を齎すのであれば、実に喜ばしいと思う。
だが、これだけは声を大にして言いたい。徒に一喜一憂するな。これは、わたしたちが政治運動の中で学んだ教訓である筈である。情勢がましになってきた時こそ、着実な歩みを続けることがいやましに必要とされるだろう。浮かれてはしゃぐのは厳に慎むべきである。
そもそもの敵は、横紙破りの解散を強行した安倍自民党である。支持率が落ちたとはいえ、彼等の優位は依然として変わっていないのである。

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「希望」は、戦争
民進党と希望の党をめぐる一件。怒りはあるが、左程大きな驚きはない。「ああ、やりやがったな」という程度だ。わたしの周辺で運動に携わっている人からは結構そういう反応が見受けられる。これまでの流れから十分予想できた事柄であるからだ。わたし自身でさえ、「安倍と同じ悪政を小池がやれば圧倒的な支持を受けるだろう」と記したことがある。それでも、運動圏の混乱振りは相当なものである。「希望の党に合流してトロイの木馬になろう」という意見もあるが、政治はそんな甘いものではない。大抵の人間は、一年も経たないうちにすっかり党の色に染め上げられてしまうものだ。人気のある異色のコメンテーターが、自民党に入って末端議員として終わる事例は珍しくない。
尚、今現在の報道によれば、山本太郎自身は合流はしない模様である。「トロイの木馬」発言は、合流する者達に対するせめてもの願望ということか。取り敢えず正式な表明を待ちたい。
メディアは小池劇場の演出に余念がなく、「自民vs希望」の対立軸を煽り立てている。だが、改憲、安保法制、歴史修正主義、どれを取っても安倍と小池の向いてる方向に違いなど存在しない。希望もまた自民と同様、戦争を志向する党である。希望の党が大勝したとすれば、自民と連立し、大政翼賛会の出来上がりだ。
北朝鮮祭りがどこかに吹っ飛び、毎日のように小池の莫迦面がTVの液晶画面に流れてくる。実に飯が不味い。

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イメージの黄昏
安倍内閣の支持率がダダ下がりだという。勿論、喜ばしいことには違いない。この社会をこれ程までに破壊し続けた宰相は戦後存在しなかった。だが、この男がやらかしたことについて、どれだけの人が理解しているだろうか。率直に言って、かなり疑わしいと思う。
森友、加計で何か悪いことをやったらしい、稲田が自衛隊について失言したらしい、そして何よりも、安倍を支持しないことが今の流行らしい・・・・・・支持率の低下は、そういった漠然とした認識によるものではないだろうか。
例えば、安倍政権が倒れ、新しい内閣が発足したとする。そのとき、次の総理が安倍と全く同じ政策をとったとしても、高い支持率を得るのではないだろうか。あながち杞憂であるとは思われない。例えば小池百合子のような、今勢いのある人間が総理になった場合のことを考えてみるとよい。
結局のところ、評判を落としているのは「安倍」という看板のイメージであり、彼の行ってきた数多くの悪政に対してでは「ない」と思える。この先安倍政権が倒れたとしても、決して浮かれることは出来ない。

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この素晴らしき新世界より
地獄の扉が開いた。まさか自分の目の黒いうちに、治安維持法が復活するとは夢にも思わなかった。共謀罪(組織犯罪処罰法改正案)は7月11日に施行されるという。明らかに、濫用することを狙って制定された同法であるが、どこから何をどのように着手していくことになるのか、現段階では予想もできない。ただ遠くない将来に、この社会に手酷い傷を残していくことはうたがいない。
わたしが共謀罪の名を初めて耳にしたのは10年以上前のことである。当初、この法律は「相談罪」と呼ばれていた。相談しただけで罪になるということからそう呼ばれることになったわけだが、この性格は共謀罪と呼ばれるようになってからも何ら変わっていない。
この国の住人がこの法律の危険性に気付く契機は、一切期待できない。仮に莫大な人間が検挙されたとしても「怖い怖い。日本にはこんなにテロリストが住んでいたんだ」、家族、友人が捕まったとしても「テロリストはこんなに身近に潜んでいたのか」と受け止められるだろう。公権力絶対の神話は揺らぐことがない。
私自身、幾度も国会近辺に足を運んだが、反応はきわめて小さく、集まる人々も限定的である。他国ではちょっとした不祥事でも膨大な人数のデモ隊が路上に溢れかえるものだが、この国ではどうだろう。マスメディアの責任は重大とはいえ、それだけで説明できるものではない。

今後、この国の言論・出版情況はどこに向かっていくのか。一例を挙げる。
クジラックスというマンガ家がいる。アダルトコミック界では一定の人気を博している作家で、わたしもその作品はよく知っている。この人物が、警察から呼び出しを受けた。理由は、「性犯罪者が、お前のマンガを読んで真似をした」ということである。
 

県警は今月7日に漫画家を訪ね、作品内容が模倣されないような配慮と、作中の行為が犯罪に当たると注意喚起を促すことなどを要請した。漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承したという。県警幹部は「表現の自由との兼ね合いもあり難しいが、社会に与える影響を考慮した。同様のケースがあれば今後も申し入れを検討する」としている。(毎日新聞)

断筆宣言めいた事柄については作家自身によって否認されているようだが、これは決して毎日新聞の「飛ばし」と捉えるべきではない。警察は断筆強要も辞さないことを意識して今回の一件をメディアに公表したと考えるべきなのだ。「こういうものはもう描かせない」という警察権力の意思がそこに込められているのである。後段に「公権力が作品の内容に介入(申し入れ)することは当然」と謳われていることからも、それは決して杞憂ではない。
今回の事態を「朝憲紊乱の惧れがあるものを取り締まる」と置き換えれば、論理構造は明白だろう。クジラックスの一件は共謀罪の成立と決して無関係ではなく、この社会が監視・治安国家化する過程において、露骨に示されたひとつの証左と捉えるべきなのである。

我々に一体何が出来るのか?偽りの希望は提示したくない。出来ることなど何もないのかもしれない。このブログもいつまで続けられるか判らない。
わたしの敬愛する石川淳の描く主人公達は、どん底の状態において、その果てしない絶望を力の湧く源泉として提示した。「黄金傳説」はその典型である。わたし達がそのような「生」を力強く選択できるかどうかはわからないが、今回の敗北を受けとめながら、まずは生きなくてはならない。
生きることである。

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ペストかコレラか
フランスの選挙はエマニュエル・マクロンの勝利に終った。取り敢えずFN代表マリーヌ・ル・ペンの勝利は免れたが、そうそう喜んでもいられない。銀行屋とレイシストの争いに、大義などあるべくもない。ペストかコレラか(peste ou choléra)の選択と言われる所以である。
ボイコットはそれ自体、意思表示のメッセージ足りえない。白紙委任として権力者にいいように扱われるのはどこの国でも同じだろう。これを機に、わが国に「選挙ボイコットの大義」を密輸しようとする間抜けが現れるだろうが、莫迦も休み休みにして欲しい。ボイコットして冷笑に走るような国とは、政治的力関係のあり方が全く違うのだ。ヨコのものをタテにすればいいという問題ではない。
意思表示のメッセージがままならない時はどうするか?街頭に出るのである。選挙ボイコットをしたとしても、それで終らせない。反マクロンを掲げた、左派による大規模なデモはその端的な表われであった。このデモにはルペンを倒すためにマクロンに投票した人も、駆けつけたという。正しい。まず第一の敵を倒し、次に残った敵を討つ。それくらいの行動力はあってしかるべきだ。
民主主義とは選挙権つきの奴隷制ではない。選挙という手段を、民主主義社会の目的であるかのように錯認する思考法は、捨てるべきだ。民衆意思を実現するために何が必要か、それが常に問われている。

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プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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