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時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
風化の中を行く
新文芸座で若松孝二「餌食」「水のないプール」を観る。前者は昨今の通り魔事件を髣髴とさせる傑作である。主人公は国外にいることで日本社会とのズレを体感する(転向の問題でもあるが、もっと幅広い)が、日本社会で市民生活を続けながら、「ズレ」に悩み、追い詰められる人間も少なくないのだ。裏切られ、挫折した主人公の怒りは日本社会そのものに向かって暴発する。
そうした時代の流れが更に進んだ先に作られたのが、後者の「水のないプール」である。
「これは政治だ」と強弁する主人公に共感する余地は無いのだが、従来の若松ピンク映画と比較して考えてみるとどうだろう。「壁の中の秘事」でも「犯された白衣」でもいい。社会的テロルの譬喩としての強姦/殺人から、個的な欲望の実践としての準強姦。脆弱と断ずるのは容易いが、80年代という風化した時代の中では、どのような大衆的抵抗があり得ただろうか。個を前面に出すことで、「ベー」と舌を出しながら体制への回帰を拒絶する。それが有効かどうかはわからないが、従来の運動に回収されない大衆の存在を掬い上げて見せたのがこの作品である。
ここからなされる抵抗の可能性がどのようなものか、結論は出ていない。だが、こうした大衆を「そんなことでは駄目だ」と弾劾し、運動に糾合しようとするのは逆行に他ならない。その先には「愚民共が!」という大衆憎悪が待ち受けているからである。その意味では「餌食」は敗北の物語である。そこから「水のないプール」に至る過程を探り続けるしかないのだ。わたし達の歩みはまだ途上にある。

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無邪気さの勝利
「ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ」
娯楽性に徹した映画で、ここまで開き直ればよくやったというしかない。テーマ性などそっちのけ。「とにかく怪獣を描きたい」という製作者の意思が明確に伝わってくる。怪獣をロボットに置き換えればアニメ作品「ナイツ&マジック」になるだろう。身も蓋もない徹底振りがいい。キングギドラの禍々しくも神々しい姿は圧巻だった。
ストーリーは単純である。環境テロリストが次々と怪獣を甦らせ、収拾つかなくなる話。最終的に宇宙怪獣キングギドラをゴジラが制し、王として君臨することで事態は沈静化する。核兵器の扱いについては色々と言いたいこともあるのだが、これでもかといわんばかりに怪獣の魅力でグイグイ押してくる。全て計算尽くだ。
監督はゴジラ映画を隅から隅まで極めつくしたようなゴジラマニア。世界設定など見ると、おそらくはアニメ版三部作も念頭にあるのだろう。もう一度観たくなる映画である。

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梅雨前の小縦走記 2019.6.1 
駅隣のトンネルを抜けると山道だった。芦ヶ久保駅からそんな地理条件にあるのが、横瀬双子山である。横瀬駅から一時間半歩く武甲山の時とは大きな違いだった。その点、お手軽感はある。

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途中までは割りと楽な山道で、のんびりと行ける。だが、山頂が近付くと途端に道が険しくなる。何だこれは。ロープを使わないとかなり厳しい。這うようにして山頂(883m)に辿り着く。標高は決して高くないものの、相当な運動量になるので、莫迦にはできない。雌岳、雄岳とあり、そこを抜けて次の焼山に向かう。尾根伝いの道を歩くが、またしても頂上(850m)付近はやたら険しい。頂上からは武甲山がよく見えた。さらに山道を行き、蔦岩山に向かう。気温は左程高くはないが、かなり汗をかく。夏になるとかなりきついだろう。

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蔦岩山の頂上(1,004m)は文字が消えかけた標識があるっきり。うかうかすると気付かずに通り過ぎてしまいそうだ。尤も登山者にとって、ここは中継点でしかない。縦走の本命は武川岳である。途中、道を間違えそうな箇所があるが、たまたま先行者がいたため何とかクリア。なかなかに険しい山道が続き、難儀する。それでも何とか頂上(1,052m)に辿り着き、食事を取った。虫が多いので、のんびりと食べていられないのが悩ましい。早食いは危険なので少量をそそくさと取る。

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この後は正丸峠に向かってもいいのだが、思い切って伊豆ヶ岳に向かう。下山ルートは結構長い。途中、森林伐採地帯を通った。改正国有林法が気になる。これからは資本の論理で無計画に伐採し、そこら中禿山だらけと化して行くのか。危機感がリアル過ぎる。
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相当山を降り、舗装道路に出る。向かい側に伊豆ヶ岳の登山口があり、登り直すような格好になった。ここまででかなり体力を消耗しており、登り始めてから「あのまま駅に向かった方が良かったかな」と少し思う。ままよ、ここまで来たらやめられない。登り続けるしかない。かなり辛くなってきたが、精神力で登る。前述したようにこの辺の山は標高こそ高くはないが、それなりに険しい。それでも物事には終わりがあるもので、851mの頂上に辿り着いた。

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下山はかなり難儀する。傾斜が急であるばかりでなく、土がやたら崩れ、滑るのだ。危うく登ってくるパーティーと衝突しそうになった。
ここからまた道が分かれるので、油断すると間違えそうになる。地図と睨めっこして慎重に道を選ぶ。足が辛くなってきた。早く舗装道路に出たい。林道を歩きながらそんなことばかり考えていた。
正丸駅に着いたのは13時45分頃。およそ予定通りの時刻である。梅雨入り前の登山もそろそろこれが最後だろう。

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6.2
書くべき事は色々あるが、かなり鬱状態が厳しいので詳細は後日に譲る。
昨日、双子山から伊豆ヶ岳までいくつもの山を縦走。帰宅して後、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を鑑賞した。
今日はゆっくり身体を休めようと思ったが、前述の通り鬱が圧し掛かってきている。ままならないものだ。

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5.31
新田次郎の小説を少し読む。この人は山岳登攀の描写は恐ろしく切れ味がいいのだが、それ以外の人間ドラマの描き方は陳腐だ。娯楽小説だからというのは言い訳にならない。娯楽なら尚更洗練が求められる筈だ。どうせならもっとストイックに切り詰めた描き方をして欲しかった。
読んでいるのは「劒岳」と「槍ヶ岳開山」。過去に「八甲田山~」は読了している。

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武甲山を行く
武甲山を登る。少し秩父に知識があればご存知だろう。標高1,304m、かの地を代表する山である。秩父に行けば、どこからでも武甲山の威容を目の当たりにできるのだ。

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西武線の横瀬駅から延々と歩いて一時間半、セメント工場地帯の中を抜けて、漸く登山道に入る。意外だが、山道はずっと鬱蒼とした林の中である。武甲山は石灰岩採掘工事のため、相当な部分が削り取られてしまっている。わたし達が目にするのは禿げ上がった側面であるが、登山道はその影にある。

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山頂までそれなりに急な坂が続くが、一旦ペースを摑めば登攀は厳しいものではない。カラスアゲハの姿を幾度も目にした。蜻蛉を見るのも久し振りな気がする。

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登山口から二時間弱、漸く頂上に着く。この所登山を続けているせいか、思った程難儀なものではなかった。展望台から秩父市内を一望する。浅間山の姿がうっすらと見えた。

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山を越えて秩父鉄道の浦山口駅方面に向かうが、下りがかなり険しい。登る分には楽だろうと思われるのだが、岩場と急傾斜に難儀する。腰に爆弾を抱えている身とすれば尚更である。登りよりも遥かに辛い下山だった。わたしと同年輩くらいだろうか、すれ違った男性が、軽快にひょいひょい登って行くのには驚いた。「猿(ましら)の如く」という形容が、まさにふさわしい。

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二時間ほどで浦山口駅に辿り着くが、気温もだいぶ上がっていたためぐったりする。とはいえ、先日の秩父御岳山の時ほどダメージは無い。駅の周りは何も無いので、電車が来るまで三十分ほど辛抱して待つ。

前日の飲み会があまりにも不快だったので、山を登れば嫌なことを忘れられるかと思っていた。だが、現実にはそうでもない。下山しながら昨晩のことが反芻されて、鬱が圧し掛かってくる。季節外れだが、「俺たちゃ街には住めないからに」という雪山讃歌の歌詞が実感として受け止められた。

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5.22
華やかな場所は苦手だ。子供の頃からそうだった。いつもそこから排除されているという感覚がある。招かれざるもの。おそらくその直感は間違いではない。
デモや集会でもこれは同じことである。「何でお前ここにいるの?」と、冷たい視線が突き刺さる。そんな事はない、デモや集会は万人に開かれたものである云々、ならばこれは妄想か?否、必ずしもそうではない筈だ。あつかましくそこに居続けることには根性がいる。
デモに若者が集まらない、民衆が目覚めない、と人はいう。だが、「向こうの世界で何か盛り上がっている。そこに自分の居場所はない」という思いを人々に与えてしまってはいないか。その運動は本当に開かれたものになっているのか。運動をリア充の祭典にするべきではない。

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再び低山に挑む
帰京した翌日、丸山を登る。今話題の愚か者のことではない。埼玉県秩父地方にある標高960mの山のことである。入梅前にあちこちの山を登っておきたいと思ったのだ。
早朝に芦ヶ久保駅に到着。大野峠を回る登山道に入ると急なコースが続いた為、登り始めは苦労した。それを超えるとペースが掴め、割と楽に登れるようになる。杉の木が群生する山道をひたすら歩くが、途中の標識がわかりにくい。丸山なら丸山とちゃんと書いて欲しい。後どれくらい登るのかと思っていたら、あっけなく頂上に出た。拍子抜けがする。

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頂上には不細工なデザインの展望台がある。センスの欠片もないと思ったが、登ってみると眺望は悪くない。武甲山の姿は相変わらず美しかった。

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休憩を終え、山の向こう側のルートから下山する。こちらのルートの方が人気があるようで、登って来る人が多い。休憩時間を含めて四時間程度で駅まで戻って来られた。
この日は国際モンサントデーのため、その足で抗議活動に向かった。われながら無茶をする。

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古典的なヌーヴォ・ロマン(新小説)
広島訪問中、Alain Robbe-Grillet ‘Gommes’ を読了する。とはいえ、むしろ目を通したといった方が正しい。流石に厳しかった。内容は花田清輝の書評を読んで知っている。殺人未遂の被害者を、捜索中の探偵が誤って殺してしまう話。そこに至るまで、とにかくひたすらわれらが探偵君は街中をうろうろと歩き回るのだ。

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プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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