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時を告げない大時計
映画やら書物やらをめぐる、つれづれなる断想など
かかる心うきわざをなん見侍りし
今更ながら、「方丈記」と「蘭学事始」を読んだ。古典文学に疎い為、少し勉強したほうがいいと思い立ったためである。
「蘭学事始」のことは後日改めて記すことにする。まず、鴨長明「方丈記」である。「行く川の流れは~」というこの書き出しは誰もが知っている筈であるが、翻訳でもまともに読んでいる人間はそうそう多くない筈である。短い書物であるにも関わらず、である。前段は火災や地震、疫病といった災害の描写が続き、後段はこのように荒廃した世の有様や打算だらけの人間社会にうんざりし、隠遁生活を送るようになったという述懐が綴られる。

「伝え聞くところによると、古代の天子の時代には民衆への憐れみの心を持って国を治めていたという。宮殿を茅で葺いても軒先を整える手間は省いた。かまどの煙が少ないのを見て租税を免除した。これは民を恵み、社会を扶助しようとしたからである。今の世の有様を昔と比べてみるとよくわかるだろう」

原文の旧仮名を転写するのが面倒な為、現代語に置き換えて引用した。おわかりの通り、中世においてさえ、民衆に恵沢を享受させることで世を統治せよ、という主張は存在したのである。さて、今日、民主主義という社会制度がより良いものとして選択され、より良い社会をつくろうという前提の下に、人類は鋭意努力している筈なのだが、統治者の意識はどうだろうか。元暦二年の震災→東日本大震災、福原遷都→東京オリンピック・築地市場移転と置き換えれば、奇妙なことに中世の社会と今日の社会が二重写しになってくる。民衆を蔑ろにすることにおいて、為政者の頭の中は何も変わっていない。
「今の世の有様、昔になぞらへて知りぬべし」

方丈記

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選挙のことなど
政治的な話を書き連ねると息苦しくなるので、本意ではないのだが、先週の参院選の話をしよう。
結果的にはこれまで程悪い印象はない。わたしの投票した先はそれなりの結果を出していた。
わたしは戦略的な投票というのが苦手だ。あまり頭が良くないので、真っ向勝負しかできない。これを非難する奴は糞でも喰らえ。お前達みたいなお利巧ばかりが世の中を担っているわけではない。
さて、そうであるとして・・・
日共という党派には一切信頼を置いていないのだが、鼻を摘んで選挙区に投票した。当選はしたのだが、微妙な気分である。比例区には山本太郎に投票。特定枠を逆用した作戦で、自動的に舩後、木村両者に票が入る仕組みである。山本は落選したが、最初から覚悟を決めていた為、あまりがっかりはしない。本人も腹を括っていた筈だろう。
重度障害者が二人も当選したというのはそれだけで世界に誇れる事柄である。普段愛国を口にするものは、須らくこの二方の政治参加を応援するべきであろう(「参加を」である。)。左派としては「当たり前のこと」をこの社会で実現するために、やはり応援する、当然である。

今回の選挙、わたしは右手首を骨折していたので、投票は不安だった(骨折の経緯はそのうち記す)。左手で名前を書く練習もした。さいわい、指先が動くようになった為、下手糞ながら右手で名前を書くことができた。本当は字が書けない状態でも、申し出をすれば代筆などの対応策が講じられる。諦める必要などない。

それにしても、「たま」の石川浩司が選挙について発言していたのは意外だった。嘗て竹中労との対談で、「棄権も政治的意思表示」として、投票を拒んでいた彼である。時代がそれどころではなくなったということか。別に石川のこれまでの姿勢を非難しようというのではない。わたし達が、余裕のない時代に差し掛かっているということだ。

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喪われた足跡
気が重いのだが、京アニ事件のことについて一言記さねばなるまい。
右腕の手術前に飛び込んできた事件の一報は、途方もない喪失感をわたしに齎した。この時点では死者は確認されておらず、アフガニスタンの仏像破壊や、ノートル・ダムの火災、メソポタミアの博物館が戦火の混乱で荒らされた時のような、取り返しのつかない文化的損壊に打ちのめされた。
その後続々と死者数が増え続け、術後、意識を回復した後にニュースを確認したときはもうこれは立ち直れないのではないかという印象を抱いた。この時点で33人という犠牲者数は津山事件に匹敵する。優れた才能を持った人々が一挙に命を落としていった。何故この人達が死ななくてはならなかったのか。文化的見地から観ても、事は一社だけに及ぶものではない。この社会の文化を担う重鎮が確実に破壊されたのだ。この負の影響力は計り知れない。
私は京アニ作品の熱心なファンではなく、好きでない作品もあるのだが、フルメタルパニックふもっふ、涼宮ハルヒの憂鬱、中二病でも恋がしたい、氷菓、甘城ブリリアントパーク、聲の形、といった作品に親しみ、笑い、感銘も受けてきた。鑑賞者としての付き合いは決して浅くはない。しかし、不思議と犯人への怒りや憎悪の感情は湧いてこない。感情がそこに向かないのだ。ただ底知れない哀しみと果てしない喪失感がここにある。
今回の件で、一足飛びに犯人を殺害しろという声が巷で湧き起こっている。だがちょっと待って欲しい。犯人をぶち殺すことで、何かわたし達に得なことがあるわけではないし、この喪失/喪失感が回復することもない。そもそも京アニ作品はそういった殺伐とした血腥い世界とは一番遠い場所にあったのではないのか。

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テーマ:映画関連ネタ - ジャンル:映画

近況
利き腕を怪我した為、暫くはまともに更新ができそうにない。のみならず、ここ数日ひどい頭痛が続く。ままならないものである。

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雨降りの中を行く 6.22
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雨の日にわざわざ山を登る人間はそうそう多くはないと思う。わたしとて、朝から雨が降っているさなかに登ろうとは思わない。だが、あまりブランクが長引くと、多少の雨が予想されても山を登りたいと思うものである。
というわけで、低い簡単な山を登ることにした。正丸峠から正丸山を越え、川越(カンゼ)山、虚空蔵峠を経て丸山を登り、さらに日向山まで足を伸ばすコースである。無理だと思ったらいつでも中止できる。そんな道筋だ。
山道に入った途端に振り出した。早速ザックからヤッケを引っ張り出す。学生時代に買ったもので、取り敢えず雨具としては使えるが、もうボロボロだ。新調しなくては。

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すぐ隣に聳える伊豆が岳と違い、正丸山は山というほどの山ではない。雨も左程強くないので、淡々と歩を進める。問題は下り道である。やたら滑って歩きにくい。少し坂が急になると途端に滑り出す。岩もかなりナメている(ぬるっとしている)為、危なっかしいことこの上ない。三度ほどすっ転んだ。

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雨の日の山道は独特の味わいがある。靄の中の山林の姿は幻想的だ。ふと、後ろから足音が聞こえた。振り向くとトレイルランの男性がやって来たので挨拶をする。物好きはわたしだけではないらしい。

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相当な距離を歩いた後、丸山への道に入る。この前登った山道だ。長い階段があるが、幅が広く、登りにくい。脇を迂回したほうが登り易かったりする。人間の記憶など当てにならないもので、あれ、こんな道だったかなぁなどと思いながら進む。この錯認は雨のせいばかりではない筈である。
丸山まで来ると雨も小雨になったこともあり、登山客も多くなる。大人数のパーティーともすれ違った。荷物が多いようだったが、大丈夫か。

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頂上で少々休憩。雨降りで景色も良くない為、さっさと降りる。途中の日向山分岐がわかりやすいのはありがたい。大きな蛙を見かけた。

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一旦車道に出る。少し降りてから日向山の登山道入り口があるはずだが、わかりにくい。地図と睨めっこしながら、ここだよな、ここ以外考えられないよなと、道を選ぶ。暫く歩いた後、標識に出会った。間違ってはいない。また雨が強くなってきたがそうそう遠くない筈なので、そのまま歩く。すぐに頂上に出た。

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ここも天気のせいで見晴らしは良くない。あまり長居をせず、向こう側から降りる。あとは芦ヶ久保の駅に向かうだけだ。流石に横瀬まで歩く気力はない。だが、この下り道がやたら長い。こちらの体力の消耗もあるだろうが(足が中々前に出ない)、舗装道路に出たと思ったら、また山道に入る。気力を削られながら、何とか下まで降りた。

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終わってみるとおよそ予定通りの時間。
電車で帰宅すると、家の近くはかなり強い雨が降っていた。山の上とはやはり天気が違うようだ。

祭りは続く
「この狂乱するサーカス」(ピエール・プロ著)を読む。

未来社会を描いたディストピア小説。断っておくが、サーカスの話ではない。
主人公は売れっ子の映画俳優。だが、パターン化され、創造性を失った作品制作に疑問を抱き、外側の世界に脱出を試みる。だが、外の世界に住むのはパターン化された映画作品をひたすら貪り、消費するだけの「大衆」たちであり、その外には機械のように生産労働に従事する人間たちの世界があった。
現代社会の有様を投影したような寓意性の強い作品だった。後年の「マトリックス」に通じる世界観でもある。もっとも、本作では世界の全体像は明らかにされているとはいい難い。だが、管理者も統率者もおらず、完成されたシステムだけが延々と回り続け、人間はその中を踊り続けるしかない世界であるというのは理解できる。題名はこうした醜悪な管理社会の姿を、狂ったサーカスに見立てたものである。
地の果てに辿り着き、ただ一人本物の星々の下に佇む主人公。彼にとって、万事は快調(おそらく原文はTout va bien.)なのだろうか?

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GO!GO!貞子!
「貞子」(監督:中田秀夫 脚本:杉原憲明)
「リング」という作品は怖くないのはまだいいとして、大して面白くもないのが難点だった(貞子襲来のシーンだけは秀逸だったが)。特に「リング2」はひどい。しかし、今回の「貞子」はそれ程悪くない。
狂信的な母親が娘を貞子の生まれ変わりと妄信し、本物の貞子を刺激して復活させてしまうというストーリー。犠牲者数こそいま一つ物足りない感があるが、割合満足できたと思う。原点回帰と称して一々大島を引っ張り出さなければ尚良かった。あのこだわりは詰まらない。

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「貞子vs伽椰子」(監督・脚本:白石晃士)
観たいと思いながらそのまま放置していた作品だったが、「貞子」をきっかけにレンタルした。貞子の呪いを解除する為、これに伽椰子の呪いをぶつけて相殺し、怨霊を二つとも消滅させようとする話。バカバカしくて面白い。設定に幾分変更があるものの、勢いでグイグイ押していく。偉そうな霊能者が結局餌食になるところも痛快だった。好き嫌いが分かれそうだが、案外この路線でいいんじゃないか。そのうちキングギドラあたりと対決しそうだが。

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風化の中を行く
新文芸座で若松孝二「餌食」「水のないプール」を観る。前者は昨今の通り魔事件を髣髴とさせる傑作である。主人公は国外にいることで日本社会とのズレを体感する(転向の問題でもあるが、もっと幅広い)が、日本社会で市民生活を続けながら、「ズレ」に悩み、追い詰められる人間も少なくないのだ。裏切られ、挫折した主人公の怒りは日本社会そのものに向かって暴発する。
そうした時代の流れが更に進んだ先に作られたのが、後者の「水のないプール」である。
「これは政治だ」と強弁する主人公に共感する余地は無いのだが、従来の若松ピンク映画と比較して考えてみるとどうだろう。「壁の中の秘事」でも「犯された白衣」でもいい。社会的テロルの譬喩としての強姦/殺人から、個的な欲望の実践としての準強姦。脆弱と断ずるのは容易いが、80年代という風化した時代の中では、どのような大衆的抵抗があり得ただろうか。個を前面に出すことで、「ベー」と舌を出しながら体制への回帰を拒絶する。それが有効かどうかはわからないが、従来の運動に回収されない大衆の存在を掬い上げて見せたのがこの作品である。
ここからなされる抵抗の可能性がどのようなものか、結論は出ていない。だが、こうした大衆を「そんなことでは駄目だ」と弾劾し、運動に糾合しようとするのは逆行に他ならない。その先には「愚民共が!」という大衆憎悪が待ち受けているからである。その意味では「餌食」は敗北の物語である。そこから「水のないプール」に至る過程を探り続けるしかないのだ。わたし達の歩みはまだ途上にある。

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無邪気さの勝利
「ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ」
娯楽性に徹した映画で、ここまで開き直ればよくやったというしかない。テーマ性などそっちのけ。「とにかく怪獣を描きたい」という製作者の意思が明確に伝わってくる。怪獣をロボットに置き換えればアニメ作品「ナイツ&マジック」になるだろう。身も蓋もない徹底振りがいい。キングギドラの禍々しくも神々しい姿は圧巻だった。
ストーリーは単純である。環境テロリストが次々と怪獣を甦らせ、収拾つかなくなる話。最終的に宇宙怪獣キングギドラをゴジラが制し、王として君臨することで事態は沈静化する。核兵器の扱いについては色々と言いたいこともあるのだが、これでもかといわんばかりに怪獣の魅力でグイグイ押してくる。全て計算尽くだ。
監督はゴジラ映画を隅から隅まで極めつくしたようなゴジラマニア。世界設定など見ると、おそらくはアニメ版三部作も念頭にあるのだろう。もう一度観たくなる映画である。

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プロフィール

のわーる

Author:のわーる
首都圏に生息する一介の映画バカ。といってもまだ映画歴は浅いため、大家の作品をあまり見ていなかったりする。
たまに衝動的におかしな絵を描いたりもする。
尚、この「のわーる」という名前は同名の素晴らしいアニメ作品とは直接関係は無く、サド侯爵の登場人物の名に由来するものである。



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